職場環境や人間関係など、ライフスタイルに大きな変化が起こる春は、メンタルの不調に悩む人が増えやすい季節と言える。今回は、この時期によく見るメンタル不調の特徴や意外な要因、メンタルを復活させる方法などを医療法人社団ウェルエイジング メンズヘルスクリニック東京の小林一広医師にうかがった。

  • 春はメンタル面の不調を訴える人が多い理由とは

環境の変化と激しい寒暖差に注意

暖かな陽気と環境の変化に「春が来たなあ」とウキウキする人は多いもの。しかし近年は、春になると途端に気分が落ち込んでしてしまう人も増えているという。

「昔の精神科医の間では『桜の花と蕎麦の花が咲く頃は精神科が忙しくなる』とよく言われておりましたが、実際に私のクリニックでも、春になると心の不調を訴える患者さんが多くなります。進学やクラス替え、昇進、引っ越しなど、春は他の季節に比べて環境が変わりやすいことが影響しているのでしょう。また、自律神経の乱れもメンタル不調のトリガーになるので、この時期特有の激しい寒暖差や花粉症なども要因として考えられます」

春の環境変化は進学や就職、昇進など、人から祝福されるようなことが多い。ただ、本人にとってはその期待がプレッシャーやストレスとなり、メンタル不調につながってしまうことも。

「環境の変化にうまく適応することができずにいろいろなトラブルが生じてしまい、心身のバランスを崩してしまう病のことを適応障害と言います。新しい環境が強いストレスとなってしまうため、そのストレス要因=環境を調整しないと、症状改善は難しくなります」と小林医師は解説する。

この適応障害が外因性の心の病であるのに対し、うつ病は内因性の病となる。

「うつ病の場合は、環境の変化が引き金になって発症するケースもありますが、病因とされている脳の中の問題も解決しないと心を安定させることはできないため、環境調整はもちろんのこと、投薬治療も併せて行っていくことが必要です」

心の負担となる習慣は見直しを

春に心のバランスを崩しやすい人とそうでない人がいるのは、生まれ育った環境や持って生まれた性質の違いなども影響している。だが、結婚や出産、昇進、退職といった人生の大きな節目は、多かれ少なかれストレスを感じやすいもの。

そのため、小林医師は「何がトリガーになるかわかりませんから、常にメンタルを健やかに保てるよう、心の負担となるような習慣や思考は、できる限り見直しておきましょう」とアドバイスを送る。