10回目となる今回は、アイドルマスター シャイニーカラーズ、スタァライト九九組(以上五十音順・敬称略)をご紹介。コンテンツ発の2ユニットがいま放つ”輝き”を強く感じられる楽曲をピックアップし、この夏の”予習”としたい。

【アイドルマスター シャイニーカラーズ】はばたきはじめたアイドルたちの原点

2018年に誕生した、283プロダクション(つばさぷろだくしょん)を舞台とする『アイドルマスター』シリーズの新ブランド『アイドルマスター シャイニーカラーズ』。当初はイルミネーションスターズ・アンティーカ・放課後クライマックスガールズ・アルストロメリアの4ユニット・16人でスタートした本作は、2019年4月にストレイライト、2020年4月にはノクチルと徐々に新しいユニットも登場。

現在は総勢6ユニット・23人が所属している。全ユニットのコンセプトがはっきりと分かれているうえに、それぞれのアイドルも色とりどりの個性をもっており、ブランド名・ユニット名だけではなく内面的にも”COLORS”という今回のテーマにドンピシャな存在だ。

☆この曲を聴け!……「Spread the Wings!!」

言わずと知れた『シャイニーカラーズ』はじまりの曲。冒頭や大サビ直後に用いられる、ピアノを主とするフレーズが楽曲に、その立ち位置にふさわしいはじまり感を付加する。その途中にシンセストリングスがインサートされるとワクワクを溜めて溜めて、シンセサイザーが響くのとともに扉が開いていざアイドルの世界へ――といった光景が、歌い出しまでのサウンドの流れだけでも目に浮かぶようだ。

そのシンセストリングスは、この曲における注目すべきポイント。楽曲冒頭で爽やかな風のように登場するその音色は、アイドルたちが翼を広げて夢に向かって飛び立っていく姿――まさしくタイトル通り、「Spread the Wings!!」な姿を音の面から描くもの。”283プロ”のアイドルのはじまりに、これ以上うってつけなものはないだろう。

曲中この音がせり出す部分は多くはないものの、冒頭でそういった印象をリスナーに強く刻み込むことで楽曲全体に飛翔感をまとわせることができる、極めて大事な要素なのだ。また、打ち込みをメインとしたサウンドは、きらめきも感じさせつつもあれこれ詰め込みすぎずに重くされ過ぎていない。この匙加減も絶妙で、前述の飛翔感を大事にするために腐心されたポイントのように感じられた。

もちろんBメロやサビ明け間奏前には、客席からのコールを意識した作りがなされていたりと『アイマス』シリーズにおける全員曲らしさもしっかり踏襲。そのうえで、間違いなく283プロのアイドルのみにあてて作られたのがこの曲だ。大事な場面でアイドルたちが揃って歌うたびに、この曲はアイドル自身もファンもプロデューサーも、絶対にみんなを一緒にさらなる高みへと連れて行ってくれることだろう。

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【スタァライト九九組】聴覚面にもより注目すべし! もうすぐ3周年を迎える9人の生み出すハーモニー

ミュージカルを原作とし、主要キャストがアニメ版でもそのまま声優を担当するメディアミックスプロジェクト『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』の、メインキャスト9人によるユニット。作品としては現在再生産総集編『少女☆歌劇 レヴュー・スタァライト ロンド・ロンド・ロンド』も劇場公開中で、2021年には完全新作劇場版も公開予定。

舞台・アニメなどまだまだ拡大し続けている。そんな作品発のユニットである彼女たちは、アニサマにはこれまで2018・2019年の2回出場。歌や華麗なダンスに加えて、その中に殺陣も織り込んだパフォーマンスでアニソンファンを視覚的にも魅了してくれた。三度目の出場となる今年、さらなる進化を楽しみにしていたアニソンファンも多かったのではないだろうか。

☆この曲を聴け!……「再生讃美曲」(再生産劇場版『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』主題歌)

デビューシングル収録の「Star Divine」を筆頭に、前述した殺陣の映えるようなシリアスなナンバーもたくさん有する彼女たち。だが今回ご紹介するのは、まるで本物のミュージカルのラストを飾るかのような大団円感の強いナンバー。それを選択したのは、重厚さと美しさを増したこの曲での彼女たちのコーラスワークを、ファン以外にも広く知っていただきたいからである。

これまでも2018年には「星のダイアローグ」、2019年には「約束タワー」といったミドルナンバーをアニサマでも披露してきた彼女たち。だがいずれも、そこまでことさらにコーラスワークを前面に打ち出したものではなかったように思う。しかし今作は、楽曲自体の雰囲気も手伝ってか、そのコーラスワークの重厚さが段違い。しかもソロパートでは各々の個性も感じることができ、歌声としての満足度が非常に高い楽曲になっている。

楽曲自体の壮大さもいい。序盤から醸し出し続ける大団円感に加え、2サビ明け以降にはもうひとまわり大きく楽曲が再展開。次々とスポットライトを浴びながら高らかにソロを歌う姿を想像させられつつそのスケール感にさらに圧倒されると、最後まで美しく声を重ねたコーラスに魅了されたまま楽曲は幕を下ろしていく。

そこに乗る、TVシリーズにて劇中歌の作詞や戯曲脚本も出掛けた中村彼方の手掛けた歌詞には作品を追っていれば「おっ」となる……少なくとも、再生産総集編を観た後であれば確実に刺さるフレーズも多々盛り込まれ、作品の余韻に深く浸らせてくれること請け合い。さらにその世界を広げた九九組の楽曲を堪能したうえで、完全新作劇場版も楽しみに待ちたいものだ。

そして来年の夏、研ぎ澄まされたコーラスワークによる美しいハーモニーが、SSAに響き渡ることを心から願って……。

――――――――――――――――――――――――――――――――――― アイドルとミュージカルという異なる”輝き”を放つ2ユニット。楽曲自体のもつ魅力もさることながら、コンテンツにさらに触れることでその魅力が何倍にも何十倍にも膨れ上がる点については両者に通ずるポイントである。楽曲を通じて少しでも興味を持った方は、ぜひコンテンツ自体にも触れていただきたい。それがきっと、あなたの中でのこれらの曲の輝きを、さらに倍増させてくれるはずだから。

さて、次回は井口裕香、東山奈央、TrySail(五十音順・敬称略)をピックアップ。DAY2に顔を揃えるはずだった声優アーティスト3組それぞれの魅せ方にも着目しつつ、いま聴いてほしい曲をご紹介していきたい。どうぞ、お楽しみに!

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken

記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12