9回目となる今回は、GRANRODEO、Argonavis from BanG Dream!、GYROAXIA (以上敬称略)をご紹介。コンテンツ発のものも含めて、DAY2に出場する”バンド”3組の魅力にそれぞれ迫り、この夏の”予習”としていきたい。

【GRANRODEO】曲全体を使ってリスナーをK.O.! 最新曲の魅力とは?

声優・谷山紀章としても活躍するKISHOW(Vo.)と、栗林みな実などへの楽曲提供でも知られるe-ZUKA(Gt.)こと飯塚昌明による音楽ユニット。『黒子のバスケ』や『文豪ストレイドッグス』をはじめ様々なアニメ作品の主題歌を担当する一方で、”イナズマロックフェス”などのロックフェスにも出演。自身主催のフェスやワンマンツアーなども精力的に行ない、今年の11月にはついにデビュー15周年を迎える。

「アニサマ」へは2008年に初出場を果たして以降、2018年まで11回連続出場。記念すべき15周年イヤーを自ら祝すワンマンライブや主催フェスなどの開催を経た勢いそのままに、ヤンチャでかっこいい姿を2年ぶりに「アニサマ」の舞台でも見せてくれることが期待されていたのだ。

☆この曲を聴け!……「情熱は覚えている」(TVアニメ『バキ』大擂台賽編 OPテーマ)

民族調のパーカッションに乗せて奏でられるシタール。そのメロディがそのままAメロの旋律へと発展していくオリエンタルな始まりをみせるこの曲は、GRANRODEOのシングル表題曲としては新しさを感じる人も多いはず。しかも、以前彼らが手掛けた『バキ』第1期OPテーマ「BEASTFUL」は、バトルモノの主題歌らしく畳み掛けてくるような熱さや強さを有したロックナンバー。

そういった点も含めて、二重に驚いたアニソンファンもいたかもしれない。だが曲を聴き込むうちに、こんな考えが頭をもたげてきた。それは、「この変化球なアプローチは、リスナーに”勝つ”ためのものではないか?」というものだ。

まず前述のAメロだが、そこに乗る言葉もやや飄々としたもの(これはその他の曲での作風とも通ずる、らしさでもあるのだが)。2コーラス目ではさらに8分の7拍子へとリズムが変わり、リスナーをより翻弄させてくる。

そうやってスーッと自分のペースに乗せたところで、Bメロに入ると言葉の面でファイティングポーズ。サウンドにも重みを乗せてくる。そしてそこからサビに至るまでKISHOWは歌声を、一発ずつ的確なパンチを繰り出すかのように叩きつけてくれるのだ。

また、2サビ明けのe-ZUKAによるギターソロも、リスナーの高揚感を煽る。比較的サウンド構成が混み合っていないこの曲だからこそよりギターの音が立ち、長いフレーズを担うなかでより効果的にリスナーを戦いの場の雰囲気へといざないさらにハートを煽ると、大サビでさらに奔放になり力強さを増したKISHOWの歌声がおみまいされて――もう、K.O.間違いなし!

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【Argonavis from BanG Dream!】歌うたびに重みを増す、はじまりのゴールライン

2018年5月に立ち上げが発表された、ボーイズバンドプロジェクト『ARGONAVIS from BanG Dream!』。そのなかで、プロジェクト立ち上げと同時に結成が発表されたのが、Argonavisだ。

彼らはガールズバンドプロジェクトの『BanG Dream!』同様に、声優全員が演奏も担当するリアルバンド。タイトルにも冠されているプロジェクトの主軸となるバンドであり、七星蓮役・伊藤昌弘(Vo.)の声質にマッチする”正統派ボーイズバンド”と呼ぶにふさわしいような爽やかなポップロックを中心としている。

この春放送のTVアニメ『アルゴナビス from BanG Dream!』にて、13話をかけてじっくりと描かれてきた5人の絆。1年先延ばしにはなってしまったが、現実においてもその絆とともに、大規模フェスへと作中同様に鮮烈に登場してくれることだろう。

☆この曲を聴け!……「ゴールライン」(TVアニメ『アルゴナビス from BanG Dream!』挿入歌)

約1年半前に、彼らの1stシングルとしてリリースされた作品の表題曲。デビュー曲でありながら「ゴールライン」という言葉のチョイスに違和感を覚える方もいるかもしれないが、曲に込められた想いを受け取ればこれ以上のタイトルはないことがわかる。

中身を紐解いてみるとこの曲は、デビュー作らしく希望に満ちあふれた、自身の航海の出発を飾るのにふさわしい曲だ。では、それがなぜこのタイトルと結びつくのか。それを強く納得させてくれるのが、楽曲の冒頭をはじめ幾度となく登場する「いつか見た希望には辿り着いたかい?」というキーフレーズ。そして、それを受ける「今がゴールじゃないんだよ」というフレーズだ。

デビューを渇望していたものにとって、シングルリリースはひとつのゴールとも言える瞬間かもしれない。だがそれは、夢をすべて叶えた瞬間ではない。同時に、Argonavisにとっては次の目標へ向けてのスタートでもある――この曲にはデビュー作にして、そんな意志が込められている。そして、彼らが一つひとつステップを上がるなかで、いつ歌っても初心に帰ることのできる曲。だからこの曲は、”デビュー作”というかけがえのない存在であるうえに、歳月を重ねるほどにより大事さを増していく曲でもあるのだ。

はじまりを告げるゴールラインは、果たして来年のさいたまスーパーアリーナと、そこに集うオーディエンスにはどう響くのだろうか。

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【GYROAXIA】”らしさ”をいきなり明確に打ち出した、圧倒的な初作品

GYROAXIAも『ARGONAVIS from BanG Dream!』発のバンドだが、こちらはArgonavisとは打って変わって、ハードなサウンドによって構成されたミクスチャーロックが特徴のバンド。作中では天才・旭 那由多(CV.小笠原 仁)を中心とし、彼の音楽を十二分に表現できるメンバーの揃った人気・実力ともに兼ね備えたバンドとして描かれたGYROAXIA。

そんな彼らが、1stシングルのリリースから2ヶ月あまりで「アニサマ」のステージへと殴り込み、堂々たるステージングでオーディエンスを巻き込む姿、本当に目にし体感したかった。

☆この曲を聴け!……「MANIFESTO」(TVアニメ『アルゴナビス from BanG Dream!』挿入歌)

Argonavisとのスプリットシングルで両A面を飾った、彼らが最初に世に放った曲。それだけあってバンド自体のカラーをはっきりと示し、同時にその後の方向性の根幹をその歌と音をもって決定づけているような印象を受ける。

前述の通りハードなサウンドが持ち味のバンドだけあって、ゴリッゴリに重低音が響きまくるイントロだけでもArgonavisとは全くカラーが違うことがわかる。歌唱が始まると、とにかく那由多の歌声は攻撃的。ラップ部分での言葉の立たせ方は非常に鋭く、サウンドにもマッチするフロウだ。それ以降も、歌詞と結びついた刺々しさや力強さが前面に出た歌声で、聴く者を圧倒していく。

また、メインボーカル以外のメンバーがユニゾンで主線を執る『BanG Dream!』らしさをあえて排したのも、非常にGYROAXIAらしいポイントと言えるだろう。

だが那由多のワンマンさはただのワガママではなく、トップを獲るという確固たる意志を抱いているがゆえのもの。その想いをも反映した、”モノが違う感”までも漂わせる歌声はまさしく旭 那由多そのものだ。アニメの収録を経てキャラクターとより接近し、それが歌唱にも反映され進化していくケースは数あれど、1stからここまでキャラ像にハマった歌声は本当に見事なものだ。

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……そしてここからはただの妄想。

せっかくの同日出演なのだ。願わくば、アニメの名シーンの再現も観たいものだ。ファンには感動を、初見の者には衝撃を与えるであろう、1クールアツい物語を描ききったあとだからこそ観られるステージ。来年にお預けになってしまったが、実現を心の底から期待したい。

それぞれカラーは異なるが、どのバンドも各々のステージを通してSSAを熱狂の渦に巻き込んでくれるであろう、魅力あふれる楽曲を数多くもつバンド。来年こそはそのパワーを全身で浴び、ただただ心を高ぶらせる瞬間が到来してほしいものだ。

さて、次回はDAY2より、アイドルマスター シャイニーカラーズ、スタァライト九九組(五十音順・敬称略)をピックアップ。コンテンツ発の”輝き”放つユニット2組、それぞれの注目ポイントをご紹介していきたい。どうぞ、お楽しみに!

●著者プロフィール
須永兼次(すながけんじ)。群馬県出身。中学生の頃からアニメソングにハマり、会社員として働く傍らアニソンレビューブログを開設。2013年フリーライターとして独立し、主に声優アーティストやアニソンシンガー関係のインタビューやレポート記事を手がける
Twitter:@sunaken

記事内イラスト担当:jimao
まいにち勉強中。イラストのお仕事随時募集しております。Twitter→@jimaojisan12