緊急事態宣言が解除されても、閉店、倒産、リストラの声は加速する一方、40代はリストラの陰に怯えているでしょう。

ご安心ください。これからの時代の「40男に求める要件」をつかめば大丈夫。今まで培ってきた強み、経験、スキルの売りを捨て、新たに組み立て方をガラリと変え、今の時代に合わせれば簡単です。

この連載では、40男が「いつまでも転職できる武器」を手に入れ、不測の事態に備えるコツを解説します。

  • 仕事の「やりがい」を失っていますか?

優秀だから「保守的な求人」しかこない

40男は即戦力。ゆえに、同業界や同職種の求人が紹介される確度が高いが、活躍しにくいことは前回「同業界同職種に移籍すると逆転は難しい」で解説しました。

では、40男がなぜ転職をするのか。より良い条件で他社に引き抜かれるレアケース以外の理由は3つ。

(1)会社が潰れる、リストラにあった
(2)あまり評価されず、転職せざるを得ない状況に追い込まれた
(3)今の仕事にやりがいや価値を見いだせなくなった

のどれかで、9割が前向きなものではありません。

リストラや評価されてないケースは分かりやすいですが、意外と多いのは、優秀だったのにある日突然今の仕事にやりがいを見いだせなくなる(3)のパターン。ある意味、燃え尽き症候群に近いとも言えますが、メンタルや体調という表面的な問題でなく、「働く」という根っこに関わるケースです。

そして、別の業界で仕事を探しても、「未経験・即戦力ではない」ことを理由に弾かれてしまい、優秀であるので、同業界・同職種では今と同じか今以上の求人を転職エージェントから提示されてしまいます。この場合、転職エージェントが「一番の敵」になり、どんなに優秀でも40男は未経験で年収が下がる求人は落ちる可能性も高くなります。

未経験の場合、転職エージェントも紹介に伴う報酬が安くなるので、彼らは同業界・同職種でより(自分への)報酬が高い求人を紹介します。エージェントに罪はありません、「紹介」ビジネスなのでより儲かることを選ぶことは自然なのです。

今の仕事で逆からみることで働く意味を取り返す

打ち手は意外と簡単。今の仕事を3つのステップで見直すのです。

(1)今の仕事で嫌になったことを書く
(2)やりたいこと・生きがいを感じたいことを書く
(3)嫌になったことを逆からみて、やりたいこと・生きがいを感じたい事につなげる

ことを、今の仕事に働く意味とやりがいを見いだせるようになるのです。やってみましょう。

Aさんは、22年間も内部監査の仕事をしてきたベテランです。社内外での評価も高く監査部長にまで昇りつめ、役員候補でしたが、ある日突然、今の仕事で働く意味を見い出せなくなりました。

すべてを疑い、見落としがないか細かくチェックをして駄目出しをすることに疲れ切ったAさん。ルール・手続きに沿って細かくチェックすることが嫌ではなく、ダメ出しをすればするほど、周りから嫌われることに耐え切れなくなったのです。

本当は、「ありがとう!」とみんなに喜んでもらえるために仕事がしたかった。嫌われるためにダメ出しをしているのではない。皆を守るために心を鬼にしてきたが心底疲れ果てたのだそう。

ヘッドハンターや転職エージェントからは内部監査のオファーばかりという状況で私に相談し、「内部監査はもうやりたくないけど、やりたい求人は回ってこない。スキル的にはできるはずなのに」と嘆くAさん。そこで早速上記の「見直し」をやってもらいました。

今の仕事で嫌になったことを書く

粗探し、駄目出しをして嫌われることがつらい

やりたいこと・生きがいを感じたいことを書く

自分の指摘やアドバイスを通して「ありがとう」と感謝されたい

嫌になったことを逆からみて、やりたいこと・生きがいを感じたい事につなげる

そうか! 駄目出しではなく、「こうすれば良いですよ」という視点で指摘やアドバイスをすれば、感謝されるかも!

と気付き、まずは今の職場で実践してみることになりました。

最初こそ長年の癖で駄目出しから入ってしまうようでしたが、すぐに「同業界同職種に移籍すると逆転は難しい」で「こうすれば良いですよ」という視点で発想できるようになると、周りから感謝されるだけでなく、相談もされるようになり、仕事にやりがいを見い出せました。

「重箱の隅をつつき、ダメ出しして経営に報告する番犬」と思われていたが、「困った時はもちろん、困る前に先回りして課題と打ち手を教えてくれる私達の頼もしい味方」となったそうです。

Aさんが活躍することで社風も「まずいことは隠す、やり過ごす」から「まずいことこそオープンにして早く手を打つ」ことに変わりました。

その後、Aさんは、乗り越えかたを提示した事例・実績を積み、取締役に出世。その実績を持って、より大きな外資系企業のCxOに転職し、イキイキと活躍されています。

やりたかったことで実績を積むことで次のチャンスを掴む

転職を考えてなくても、仕事で働く意味を見失った人は、それを取り戻すことから始めましょう。今の仕事でやりがいを見出し、その実績を積み上げることで初めて、キャリアの選択肢が増えるからです。

そのまま今の会社で出世してもいいでしょう。転職するにしても、実績が溜まれば、やりがいを感じる方向の求人がくる確度が高まります。同業・同業種であれば同じ強みの人ばかりになり、そこで頭一つ突き抜けることができることは、「自分の強みを『掛け算』で考えると失敗する」で解説したので、参考にしてください。