藤本渚七段と永井大三段の間で争われる第57期新人王戦(主催:しんぶん赤旗)決勝三番勝負は、両者1勝で迎えた最終第3局が11月5日(木)に東京・将棋会館で行われました。相入玉にもつれ込んだ対局は249手で永井三段が勝利。点数勝負の死闘を制して2013年の都成竜馬三段(当時)以来2人目となる奨励会員としての新人王戴冠を果たしています。
明暗分かれた両者の角
永井三段が先勝して藤本七段が意地を見せるというここまでの星取り。泣いても笑っても最終局となった本局は、振り駒で先手番を得た永井三段が主導権を握る展開となりました。先手の速攻棒銀を警戒した藤本七段は得意の雁木(△4三銀型)を封じられた格好で、コンパクトな△4三金型の守備陣を敷きつつ角交換による局面打開に踏みきるよりありません。
早い段階で力勝負となって中盤の押し引きが続く中、永井三段が一歩抜け出します。打ったばかりの角を切り飛ばして銀と刺し違えたのが意表の好手。駒損しながら遊び駒の銀をさばかせるだけに勇気がいりますが、続く桂頭攻めが厳しいという大局観が本局の勝因となりました。対照的に、藤本七段が敵陣に作った馬は働きに乏しい遊び駒となっています。
藤本七段の意地、しかし……
終盤に入っても形勢は先手優勢で、永井三段は自玉が堅いままで攻めに専念できる形とあって終局間近の雰囲気。投げきれない藤本七段も執念を見せて何とか入玉に成功したものの、現実的な駒損は大きく、さすがに刀折れ矢尽きた感は否めません。一分将棋に入ってから60手ほど指し継ぎ、あわや先手の竜を捕獲かという場面を作ったのが最後の意地でした。
終局時刻は17時25分、最後は持将棋の見込みがなくなり、249手の熱戦に終止符が打たれました。「投げ場を失った」と振り返った藤本七段ですが、観戦したファンは「意志ある指し手に心打たれた」「まさに死闘だった」とエールを惜しみませんでした。勝って奨励会員として13年ぶりの優勝を決めた永井三段は「人生で一番うれしい」と笑顔を見せました。
水留啓(将棋情報局)
