日本という社会は、海外から来た多くの労働者に支えられている。UTグループのグループ企業で、ブラジルなど南米の日系人を中心とする製造アウトソーシング事業と国内企業への人材派遣事業を展開するUTスリーエムでは、従業員サービスの一環としてバーベキュー大会を開催している。

福利厚生はもちろんのこと、日本での慣れない暮らしにおける悩みを同じ立場の人たちとの交流で解決し、人材の定着に結びつけること、さらには地域の活性化も大きな目的だ。

2026年10月3日、日系ブラジル人が多く暮らす群馬県大泉町でバーベキュー大会が開かれた。9月から長雨が続いていた関東地方に明るく強烈な陽射しが戻ってきたこの日、500人を超える日系人従業員やその家族、本社側管理担当者、派遣先企業関係者らが集まった大会の模様をレポートしよう。

  • BBQの様子

    BBQの様子

参加者550人、用意した肉は380kg! BBQ大会の狙いとは

バーベキュー大会の会場になったのは、大泉町の小泉城跡に整備された城之内公園内のバーベキュー広場。春には桜の名所としても知られる場所だ。この日は朝から雨続きだった日々が信じられないほどの好天で、直射日光は盛夏の暑さを感じさせるほどだった。

バーベキュー大会は午前11時にスタート。筆者が到着したのは11時半ごろで、すでに大量の肉が焼き上がり、開始時間から集まったスタートの早い参加者たちがアルコールやソフトドリンク片手に盛り上がっていた。

こうした大会を開催する目的について、同社群馬オフィスの室長として群馬県だけでなく東京都や福島県、宮城県など広い範囲で人材派遣事業の全体管理を担当する小野寺俊輔さんに話を聞いた。

「第一にはやはり福利厚生ですが、同じ立場の日系人従業員が集まれるこのような場を設けることで、従業員のモチベーションとやる気の増進に役立てたいという想いが強くあります」(小野寺さん)

加えて、管理側の本社社員と日系人従業員との交流、慣れない環境で働く日系人同士の交流や地域になじむための生活サポートにつなげることも大会開催の目的だという。

群馬でのバーベキュー大会は2年前に始まり、2026年が3回目になる。小野寺さんは2回目の昨年から担当している。大会には、製造業の現場に派遣され活躍している日系人従業員を中心に、その家族、UTスリーエム本社側社員、派遣先企業の関係者などが参加する。 2026年の参加者は前年の1.5倍の550人。うち460人が肉が好きな南米出身の従業員とその家族ということで、なんと380kgもの肉を用意したという。

「お肉をはじめ食べ物が切れることのないくらい用意していますので、どんどんと食べて、喜んでほしいですね。昨年の参加者からも、とにかく参加して楽しかったという声を聞き、うれしく思っています」と開始直後に話した小野寺さんだが、実はこれほどの量を用意しても想定よりはるかに多く消費され、会の途中で肉を追加購入したとのこと。ただ、その想定外も本社側からするとうれしい悲鳴だったようだ。

  • 400kg近い肉が用意され、次々に焼かれていく

    400kg近い肉が用意され、次々に焼かれていく

小野寺さんに今年の大会の“推しポイント"を尋ねた。

「本社や岡崎本部(愛知県)のメンバーもまじえてこの1カ月、週に1度のミーティングを開催し、大会の役割や企画について昨年よりもさらに入念に打ち合わせを行ったので、前回に増して喜んでもらえると思っています」(小野寺さん)

同社では事業展開する地域とのつながりも重視しており、「来年以降は地域の方もまじえたプログラムを企画できればと考えています」と小野寺さんは話した。

外国人材の仕事や生活の悩みを把握、定着を支える交流の場に

群馬オフィスの社員で、派遣先の各工場で日系人従業員の管理を担う吉田テツハルさん、紙谷ナタンさんの2人に、バーベキュー大会に参加する思いを聞いた。

紙谷さんは「日頃がんばっている従業員のみなさんに感謝の思いを込めて開催しています。みなさんとにかく気持ちを楽にして楽しんでいただき、また明日からのがんばりにつなげてほしいですね」、ヨシダさんは「多くの日系従業員が在籍しているので、お互いの顔をもっとよく知り、触れ合い、理解し合うための場とすることが最も重要だと思います」と語った。

  • 右から、吉田さん、小野寺さん、紙谷さん

    右から、吉田さん、小野寺さん、紙谷さん

肉を食べ、ビールやブラジルの国民的カクテル・カイピリーニャをたしなみながら日系人従業員たちと交流を深め、「日常生活や仕事の困りごとを聞き、問題を随時吸い上げて可能な限り早く対応するため、いろいろと会話しています」と吉田さん。

また紙谷さんは「遊びの気持ちで来てくれるので、心を開いて話してもらい、楽しいことはもちろん悩みがあればどんどん話してほしいと思います」と話す。

大会を開催する上で大変なことについて2人は「朝4時に起きて準備すること」や「1週間前から大量の食材を用意して準備するところ」を挙げたが、それもやりがいにつながっているように見えた。

「他の工場で働く人とも話せる」参加者から喜びの声

日系人従業員の方にも色々と質問してみた。日本に来てもう22年経つという松村エドゥアールドさんは、バーベキュー大会には初参加とのこと。UTスリーエムで働くことについて「派遣の対応がよく、安心して仕事できるところがいいですね。みんなが集まり知り合えるこういった会を開いてくれるなど、気軽に暮らせる環境をつくってくれている実感があります。今日も本当に楽しいです」と話した。

  • 松村エドゥアールドさん

    松村エドゥアールドさん

3回目の参加というジョナタンさんは「職場外での出会いができ、みんなと気楽に話ができるのがいいと思います」、2回目のヴィクトルさんは「昨年より参加者が増えていますね。みんなと仲良くできるので楽しいです」と話す。

また初参加のウィリアムさんは「他の工場で働いている人たちと会話し、どういった感じか聞いて理解できるのがいいと思います」、ガブリエルさんは「気楽に参加できますし、来年もぜひ開いてほしいです」、来日10カ月というギレルメさんは「普段の週末は家にいるだけですが、こういう場があるといろいろな人とコネクションをつくり、接触できます。いい機会ですね」と感想を教えてくれた。

最後に、パイナップルを焼いていた村上さん、松川さん、片岡さんにも話を聞いた。3人とも日系ブラジル人で、すでに来日から数十年クラスのベテランのみなさんだ。3人は口々に、「会社が親のように私たちを育ててくれてありがたい」「こういったイベントを開いてくれてうれしい」と語った。

  • パイナップルを焼いていたマツカワフラビオさん、片岡クラウジオさん、村上一也さん

    パイナップルを焼いていたマツカワフラビオさん、片岡クラウジオさん、村上一也さん

UTスリーエムでは、この大泉だけでなく愛知の岡崎でも同様のバーベキュー大会を開催し、交流に役立てている。2027年以降、またどういった展開を見せてくれるのか楽しみだ。