
miletの新曲「My Voice, My Life」のミュージックビデオが公開された。テレビ朝日系ドラマ『アナログナース〜デジタルってなんなんだよ!?〜』の主題歌でもある同曲は、ONE OK ROCKのToruと約4年ぶりにタッグを組んだロックナンバー。これに伴い、二人の共作曲を集めた配信限定EP『milet × Toru』もリリースされた。2019年のデビュー曲「inside you」から7年。両者の共作歴を振り返りながら、新曲に込められたメッセージを紐解いていく。
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「milet 2.0」が鳴らす剥き出しのロック
miletは今、アーティストとして文字どおり生まれ変わりつつある。今年8月にリリースされた『Made of Glass』は、休養期間を経た彼女が、自身の弱さや葛藤と真正面から向き合った作品だ。Rolling Stone Japanのインタビューでも「壊れたからこそ強くなれた」と語っていたように、脆さも自分の一部として受け入れることで、表現者としてさらなる逞しさを手に入れた。彼女は自身の最新モードを「milet 2.0」と表現している。
音楽面でもルーツに立ち返り、ギターを前面に押し出したバンドサウンドを追求。敢行中の全国ホールツアー「milet live tour ”Made of Glass”」でも、剥き出しのエネルギーを解き放つような、凄みを増したパフォーマンスを披露している。
とりわけ10月17日の東京ガーデンシアター公演は、milet自身も「過去一だったかもしれない」と振り返るほど、何もかもが神がかっていた。ハイライトの一つが、この日初披露された「My Voice, My Life」だ。初めて耳にする楽曲にもかかわらず、フロアが一斉に手を掲げた光景は忘れがたい。聴く者を興奮へと駆り立てる、圧倒的な強度がこの曲にはある。
自分の声で人生を切り開き、自らの意志で未来を選び取る──「My Voice, My Life」に込められた決意を形にするうえで、大きな役割を果たしたのが盟友のToruだった。
「My Voice, My Life」東京ガーデンシアター公演でのライブ映像を使用したスペシャルMV
Toruと歩んできた軌跡
二人の関係はメジャーデビュー以前に遡る。別の楽曲を制作していた際の休憩中、Toruが何気なく弾き始めたギターにmiletが鼻歌でメロディを重ねたことから、「inside you」の原型が偶然生まれたという。
その歩みを一望できるのが、配信リリースされたばかりのEP『milet × Toru』。新曲をはじめ、「inside you」「Who I Am」「The Love We've Made」「One Reason」「Final Call」の全6曲が収められた。『eyes』収録の「The Love We've Made」は、Toruの友人に子供が生まれたことをきっかけに制作された慈愛に満ちたバラード。2022年発表の「One Reason」では壮大なバラードを、「Final Call」では疾走感あふれるロックナンバーを物にしており、二人が追求してきた音楽性の幅広さがうかがえる。
注目したいのは、EPのアートワークだ。頭上から差す光がmiletを照らし、足元から影が伸びる構図は、デビュー作『inside you EP』のセルフオマージュ。「milet 2.0」へと進化した彼女が、7年前の「生まれたてのmilet」と向き合う姿を描いている。その意味を読み解くためにも「inside you」と、もう一つの重要曲「Who I Am」を改めて振り返りたい。

左から『milet × Toru』、『inside you EP』のアートワーク
「inside you」と「Who I Am」が残したもの
2019年3月リリースの「inside you」は、他者との間に横たわる孤独や埋められない距離を描いた楽曲だ。ダークでミステリアスなサウンド、ハスキーで奥行きのある歌声、英語と日本語を行き来する言語感覚。それらすべてが音楽シーンに衝撃を与えた。
一方、筆者が2024年に行ったキャリア総括インタビュー(ツアーパンフレット『Brochure of GREEN LIGHTS』掲載)で、本人は「『inside you』を歌いだした初期の頃は、あの歌い方しかできなかったんです。(今聴くと)すごくのっぺりしてるんですよ」と振り返っている。アーティストとしての自覚すらなかった時期に生まれたこの曲を、彼女は「miletを作ってくれた曲。miletが産んだっていうより、miletを産んでくれた」と表現している。
その後、2019年の「us」でポップな新境地を開拓すると、2020年の「Who I Am」では本格的なロックサウンドに初挑戦。筆者が当時インタビューした際、miletは「ここまでドラムが響いて、ギターが前に出てくる曲は歌ったことがなかった」と明かしている。自分自身の存在を問い直し、前へ進む意志を歌った楽曲であり、アートワークの鮮烈な赤も、そのアグレッシブなモードを象徴している。
しかし、当初は歌いこなすのに苦労し、テレビ収録でうまく歌えず、泣きながら実家に帰ったこともあったという。そのとき母親から「泣いてる暇はないよ。あんたが泣いてるあいだに、上手い人はどんどん練習してるんだから」と言われた経験も、彼女にとって転機となった。milet自身、「本当の意味での”Who I Am”、私というものを見つけさせてくれた」と振り返っている。こういった経験を通じて成長を遂げる一方、Toruとの共作は今思えば、彼女の内に眠っていたロックの衝動を解き放つきっかけにもなったのだろう。
「My Voice, My Life」に刻まれたロックの衝動
そんな二人が久々のタッグで生み出した「My Voice, My Life」は、クラシカルな響きで幕を開け、やがて歪んだギターと重厚なリズムが押し寄せる。静と動のコントラスト──milet自身も「闇の中から光が見え、最後は荒波が荒れ狂う」ようだと語る構成が、アリーナ・ロックを思わせる壮大なダイナミズムを生み出している。
編曲にはToruとともに、『Made of Glass』の「Hurricane」「Golden Ember」でもロックサウンドに貢献したMEG(MEGMETAL)が参加。ストリングス・アレンジはAkkin、ベースは山本修也、ピアノはGakushiが脇を固めている。
個人的に驚かされたのが、Hiroki Oonoのドラミングだ。メタルコア・バンドC-GATEの一員で、YOASOBIのライブサポートも務める彼が、前半はドラマ性を引き立て、後半は縦横無尽に高速ビートを叩き込む。スリップノットやKornなどラウド系を愛聴してきたmiletも、この突き抜けたプレイを待ち望んでいたのではないだろうか。
歌と歌詞のコンビネーションも見事だ。「正々堂々」「延々降参」「戦々恐々」と畳語的なフレーズをリズミカルに連ね、言葉の響きが躍動感を生み出す。歌そのものにグルーヴがあり、アンサンブルと呼応するように声を重ねることで、サビでの開放感がいっそう際立つ。
堂々と立ち向かう意志と、諦めや恐怖に揺れる心。相反する感情が共存するこの曲について、miletはこう語っている。
「今までだったら勢いだけで突っ走って歌っていたであろう曲だけど、こんなにロックな曲なのに、すごく静かな瞬間もあって、自分と向き合いながら歌うことができた。何より、そういう歌詞を書けるようになったことに、自分の成長を感じています」
「inside you」が他者の内面を探りながら根源的な孤独を歌い、「Who I Am」が自分の存在意義を見つめ直し、がむしゃらに前進しようとする曲だったとすれば、「My Voice, My Life」は、弱さも含めた自分自身を受け入れ、自らの意志で人生を選び取ろうとする歌だ。この境地に至るまでの歩みを肯定するように、彼女は歌う──〈It all had a meaning〉(すべてに意味があった)。
MVの「赤と黒」が象徴するもの
成長の軌跡は、『My Voice, My Life』のMVでも視覚的に表現されている。監督を務めたのは、『Made of Glass』収録曲「Christmas Eve」のMVも手がけた映像作家のマザーファッ子。ここで核となるのが、赤と黒の衣装をまとった二人のmiletだ。
赤いドレスは、デビュー初期のmiletを象徴する衣装。「Who I Am」の鮮烈なアートワークを思い浮かべたファンも多いのではないか。一方、シンプルで洗練された黒い衣装は、逞しく生まれ変わった「milet 2.0」を体現しているという。
撮影では、miletが過去のMVに登場するポーズを監督に説明しながら、即興的にアイデアを重ねていった。上体を前に倒してカメラを見つめるポーズや、腕を大きく広げる仕草は、「inside you」「us」といった初期のMVを彷彿とさせる。複数の鏡を使った演出も効果的で、鏡に映る自分自身に向かって叫ぶ姿も強烈なインパクトを放っている。
miletはやがて赤い衣装を脱ぎ捨て、アクセサリーを外し、メイクを落としながら、新しい自分へと変化していく。ただし、過去を脱ぎ捨てることは、過去を否定することとイコールではない。ラストに映し出される、赤い衣装を抱きしめる場面が象徴的だ。撮影当日にmiletが提案して追加されたこのシーンには、「これまでの私も大切な私」という想いが込められており、本人も「自分とこんなに向き合ったMVは初めて」と語っている。

翼がなくても、飛ぶことはできる
miletの楽曲には、以前から「翼」「羽」「飛ぶ」というモチーフが繰り返し登場してきた。「Fly High」ではまだ見ぬ景色へ飛ぶことを願う一方、「Wings」では壊れた翼でなお飛ぼうとする意思が描かれている。2024年のデビュー5周年公演「GREEN LIGHTS」では、古代ギリシャの彫像「サモトラケのニケ」を象徴的なモチーフに採用。頭部や両腕を失い、羽が生えていても飛ぶことができず、それでも自分の足でしっかりと立つニケの姿に、miletは自分自身を重ね合わせていた。
そして今、「My Voice, My Life」で彼女は〈だからもう飛べるよ 翼はいらないんだよ〉と歌っている。「壊れたからこそ強くなれた」という『Made of Glass』を経て、さらにその先へと踏み出そうとしているmiletの現在地が、この一節に凝縮されているように思う。
10月17日の東京ガーデンシアター公演で、miletはアンコールにレディオヘッドの「Creep」を披露した。「自分はここにいるべき人間ではない」という疎外感や自己嫌悪を歌ったUKロックアンセムだ。彼女はこの曲を「芋虫」の歌だと解釈し、「這いつくばって生きていこう、最強の芋虫になろう」とMCで伝えていた。
地を這う者に翼はいらない。不完全な自分を受け入れ、それでも生きていこうと腹を括った人間の強さと優しさが、今のmiletと「My Voice, My Life」に特別な力をもたらしている。誰かと比べる必要も、誰かのようになろうとする必要もない。ただ自分らしい声で、自分のために歌い、胸を張って自分の人生を生きればいいのだ。
それにこの曲は、miletのためだけの歌ではない。リスナーやオーディエンス一人ひとり、miletの言葉を借りれば「あなた」が歌い、口ずさみ、心の中で歌詞を反芻し、自分の物語として受け取ることのできる歌でもある。初披露のステージで無数の手が掲げられた光景も、そのことを雄弁に物語っている。
【関連記事】miletが語る、壊れたからこそ見つけた光──『Made of Glass』に刻んだ脆さと強さ

配信限定EP
『milet × Toru』
再生・購入:https://milet.lnk.to/miletToru
「My Voice, My Life」
テレビ朝日系・木曜ドラマ「アナログナース
〜デジタルってなんなんだよ!?〜」主題歌
配信:https://milet.lnk.to/MyVoiceMyLife_DG
CD:2026年12月16日(水)リリース
初回生産限定CD+Blu-ray:価格:3,000円(税込)
通常盤CD:価格:1,500円(税込)
予約:https://milet.lnk.to/My_Voice_My_Life_CD
[CD]
01. My Voice, My Life
02. 未定
03. 未定
[Blu-ray]
01.「My Voice, My Life」MUSIC VIDEO
02.「Christmas Eve」MUSIC VIDEO
03.「hanare banare」MUSIC VIDEO
04.「海原」MUSIC VIDEO -Live Recording ver.-
05.「My Voice, My Life」MUSIC VIDEO Behind The Scenes

左から配信版、通常盤、初回生産限定盤アートワーク
配信限定EP「milet × Toru」リリース記念『Stationhead』リスニングパーティ
2026年11月6日(金)19:00~開催
https://share.stationhead.com/e16beqp53foe
milet live tour ”Made of Glass”
2026年11月8日(日)愛知 Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2026年11月13日(金)北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
2026年11月21日(土)福岡 福岡サンパレスホテル& ホール
2026年11月22日(日)大分 iichiko グランシアタ
milet オフィシャルサイト:https://www.milet.jp/