
2025年に開催され、フューチャーやメトロ・ブーミン、セントラル・シーらを招聘して話題になったヒップホップフェス「FORCE FESTIVAL」が今年も開催された。昨年の横浜アリーナから、主催者であるYZERRの地元・川崎市の東扇島東公園に舞台を移し、国内外のラッパーらが集う熱狂の祝祭となった。
開催直前には、出演予定だったロディ・リッチやリル・ティージェイ、チェイス・Bらのキャンセルが相次いで発表されたものの、その後、クエイヴォとトゥーシーが新たにラインナップに加わった。前日には入場無料の「BLOCK PARTY」も開催され、そこには急遽アトランタのフッドリッチ・パブロ・フアン、デトロイトから来日したベイビーフェイス・レイが参加。本稿ではメインイベントとなった10月25日(日)の模様を、テキストと写真でお届けする。
雨が降り始めた東扇島東公園。川崎市の工業地帯を背景に広がる公園に設けられたステージに、YZERRが降り立った。昨年に引き続き開催されたFORCE FESTIVAL 2026。主催するのはBAD HOPの元メンバーであるYZERRだ。彼が自ら立ち上げたヒップホップフェスであり、この日、2回目の開催を迎えた。あいにく天候には恵まれなかったが、何よりもBAD HOPのメンバーの大半が生まれ育ったのが、この川崎の工業地帯だ。彼らが見慣れた景色と、その夢が交差する唯一無二のフェスでもある。会場に集まった1万人の観客を前に、この日、パフォーマンスの口火を切ったのはそのYZERR本人。すべてを背負った彼は「Foreign」に始まり、途中、川崎の後輩でもあるCandee、そして横浜出身のCarzを呼び込んでパフォーマンスを披露。「俺はこの工場の景色を見て育ってきた、川崎サウスサイドの男だ」と前置きをして「South Side」で自分のセットを締めた。夢を叶えることは不可能ではない、と歌うこの曲。〈今、ドームに仲間と立って〉というリリックを〈今、FORCEに一人で立って〉と変えながら歌い上げた。
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©FORCE FESTIVAL
続いて、アトランタと東京を股に掛けて活動するR&BシンガーのRASHELが瑞々しくも堂々とした歌声を披露し、eydenへバトンタッチ。途中で自身のクルー、98JamsのメンバーでもあるTomeも加わり、バウンシーなビートでぐいぐいと客席を引っ張っていく。今夏リリースされた新曲「AF1」では、再びYZERRもステージに登場した。
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短いインターバルの後、ステージにはDJドラマが登場。ストリートのヒップホップ・シーンを牽引してきた立役者が、久しぶりに日本のオーディエンスを盛り上げる。UGK feat. OutKast「Int'l Players Anthem (I Choose You)」、T.I.「What You Know」、リル・ウェイン「A Milli」と立て続けにサウスのアンセムをプレイし、その随所に彼のシグネチャーである「Gangsta Grillz」のタグが差し込まれる! リル・ウージー・ヴァートやXXXテンタシオンらの曲も挟み、最後はなんと日本のラッパー、YTGの「Dis Side」と「Batman」の2曲をかけてステージを降りた。
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そして、Benjazzy、Tiji JojoとBAD HOPの元メンバーによるソロステージが続く。Benjazzyは「日本で一番ヤバい街、川崎Southside!」と前置きし、JJJとの「Cyberpunk」を披露。コラボアルバム『B2B』に続き、10月21日に新曲「B2B2」をリリースしたばかりのBonberoも加わって、迫力あるスピットを聴かせる。Tiji Jojoも、安定感のあるボーカルを響かせる。「Do It Right Now」、続く「Aura」ではMIKADOも加わり、雨が降るなか、さらに会場を沸かせた。
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Photo by Daiki Miura: @daiki_miura
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雨の川崎を揺らす、日米ラッパーたちの熱演
そして15時台には、この日一番ともいえる激しい雨のなか次世代のヒットメイカーとして注目されるトゥーシー(Toosii)が登場した。アルバム『Platinum Heart2』は公演のわずか2日前にリリースされたばかりだ。ステージに現れたトゥーシーは本降りの雨もお構いなしに花道を駆け、アルバム収録の「BootUp」を披露。その力強い姿に、雨のなか疲労の色が見え始めた観客たちのボルテージも徐々に上がっていく。続く「I'm Hot」ではステージから降りて観客と同じ目線に立ち、曲名の通りホットなパフォーマンスを披露した。終盤の「Sapiosexual」では観客のなかから女性を、そして日常の愛と別れを歌う代表曲「Favorite Song」では子どもの観客をステージに招き入れるサプライズもあり、客席からは「ありがToosii!」の声も響いた。観客の反応や会場のコンディションに合わせたステージング、そして一貫して人々への愛が感じられる約25分間のステージだった。
Photo by @Uran_sakaguchi
その後には大阪からの刺客、Eric.B.Jrが見参。勢いよく新曲をカマし、あっという間にオーディエンスはEric.B.Jrのペースに。「POPSTAR」「AMIRI」をまくし立て、「McLaren」で自身のステージを終えた。余韻に浸る間もなく、客席はポロ・Gを迎える準備で忙しい。クラウドはステージに向かって動き出し、これまでよりも一層の熱気が会場を包んだ。FORCEには2年続けての出演となるポロ・G。とにかくクールな表情で「Flex」「21」と歌い、途中、イヤモニの不具合を訴えつつも「次の曲はみんなでバウンスしてほしい」と呼びかけて「3 Headed Goat」を披露し、「RAPSTAR」へ。その後は「”Gang”チャントをしてくれ!」と「Gang Gang」をラップし、最後は「Pop Out」で盛り上げてステージを後にした。厳かに「Intro ”Soul Quake”」が流れ、Watsonがマイクに叩きつけるようにラップする。「Fashion Week」ではBenjazzyも登場し、新曲も交えながら息もつかせぬアグレッシブ・フロウでオーディエンスを魅了する。「スーパーレア」や「RANDO」と新旧の人気曲を織り交えて充実のパフォーマンスで楽しませた。
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太陽が傾き、雨足はまた強くなる。DJ BULLSETがブースに現れ、キー・グロックの登場までフロアを完全にロックした。Jin Doggや「チーム友達 (Dirty Kansai Remix)」など、BULLSETのホームである大阪のヴァイブスを濃く反映したセットで、チーフ・キーフやケン・カーソンの楽曲も交えながら、夜に向けてさらに会場の熱気を高める。そしていよいよ、キー・グロックの登場だ。彼がオープニングに選んだのは、ソウルフルなサンプリング・ビートに彩られた「3AM in ToKEYo」! 背後のスクリーンには実際に東京で撮影された同曲のMVが流れ、思わず「おかえり!」と叫びたくなるような演出だ。その後、スクリーンには赤いPRE(Paper Route Empire)のロゴが映し出される。メンフィスの雄、亡きヤング・ドルフが設立したレーベルで、キー・グロックはその後継者でもある。メンフィスの硬派なムードを漂わせながら「Word on the Streets」「No Sweat」など人気曲を惜しげもなくラップしていく。
Photo by @pby_twlst
今年6月に29歳で亡くなった名プロデューサー、テイ・キースのタグが響く「Ambition For Cash」では涙腺も緩む。ヒット曲「Lets Go」ではイントロが流れるとともにオーディエンスからどよめきが起こり、会場は大きな盛り上がりに。赤や青のレーザーライトが放たれ、重低音が効いたビートとドラマティックな語り口のキー・グロックのラップが川崎の夜を飾る。信じられない光景だ。「Mr. Glock」「Russian Cream」と続け、終盤は「ライトを青に変えてくれ」と指示し、ヤング・ドルフが遺した名曲「100 Shots」へ。濃密かつドープな雰囲気たっぷりに約30分のショーを終えた。
Photo by @pby_twlst
完全に日が暮れ、フェスも最終パートに突入だ。DJ TY-KOHの前口上で現れたのは、T-Pablow。全身を黒い衣装に包み、鋭くフロウを刻んでいく。これまで幾度かリリースが延期されてきたニューアルバムの収録予定曲を中心に披露し、「つい最近、作った曲やっていいですか?」と前置きすると、イントロとともにAwichが登場。バチバチのフロウでステージを盛り上げると、続いてKohjiyaも堂々と自分のパートをカマし、最後にT-Pablowが自身のヴァースをキックする。披露されたのは、Kohjiyaの日本武道館公演でも披露された未発表曲「Bigger Than Big」だ。その後、Watsonとともにエモーショナルな「今日という日は」をラップする。地元・川崎の街の光景をバックに歌う姿からはOGとしての貫禄が漂う。そのまま「Dassai」へ。未発表曲ながらも、これまでに何度かステージ上で披露されてきたファン待望の一曲だ。Watson、YZERRに加え、この日はさらにEric.B.Jr、そして¥ellow Bucksもゲストとして参加し、T-Pablowを含む総勢5人のマイクリレーを聴かせた。「IKEGAMI BOYZ」ではBarkとTiji Jojoも加わり、MCではYZERRへリスペクトを示しながら「ここで(ライブを)やることは、超スペシャルなこと。自分がかつてどんなことを夢見ていたか、最後に一曲歌いたい」と添えて「Bayside Dream」へと繋いだ。BAD HOPの夢とFORCE FESTIVALのストーリーが合致する場面でもあり、会場のオーディエンスの多くがその思いを共有した瞬間でもあった。
Photo by waki
Photo by Daiki Miura: @daiki_miura
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クエイヴォ、リル・ベイビーへ──川崎で交差した夢
いよいよ、FORCE FESTIVALもクライマックスへと向かう。DJデュレルがフューチャーの「Konnichiwa」をかけながら客席を煽る。そして、最新アルバム『QRÖMELIFE』収録の「Baby Breath」のビートをバックに、ハンチョことクエイヴォの登場だ。「Hit-A-Lik」や「BA」といった新作を次々に披露し、メトロ・ブーミン「Take Me Thru Dere」やタイ・ダラー・サイン「Dont Kill The Party」を挟んで「ミーゴスを初期の頃から応援しているファンはいるか?」とシャウトすると、ドレイクらの「Ran To Atlanta」でモリー・サンタナのヴァースを挟み、「Hannah Montana」や「Fight Night」など初期のミーゴスのヒット曲を繰り出す。そして「プルルルル……」と電話の呼び出し音を模した声を出してからトラヴィス・スコット「pick up the phone」を、人差し指を掲げて「指を1本上げてくれ!」と呼びかけて「I'm the One」を、「『ママ!』と言ってくれ!」と叫んでから「T-Shirt」を……と、とにかく熟練の盛り上げ方を披露する。クエイヴォとして、もしくはミーゴスとして、世界中のステージを沸かせてきた彼ならではの圧巻のパフォーマンスだ。2022年に亡くなったメンバーのテイクオフへ捧げる追悼メッセージの後に「HOTEL LOBBY」をパフォームし、「Bad and Boujee」、そして最後は苦境を乗り越えて成功を手にしたと歌い上げる、自身も参加したポスト・マローンの「Congratulations」で締めくくり、去り際には「トーキョー、ジャパン! サンキュー・マザーファッキン・マッチ!」と日本の観客にメッセージを残した。ミーゴスの活動休止やテイクオフの死を乗り越え、パワーアップしたクエイヴォが、いま一番脂が乗っているソロアーティストだという説得力に満ちたライブ。空にはドローンが輝き、ダイヤのマーク、そして「FORCE」の文字がまばゆく光る。
Photo by zen_suzuki11
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©FORCE FESTIVAL
20時過ぎ、闇を切り裂くようにフューチャー「Same Damn Time」の豪奢なイントロがかかる。DJが数曲かけたあと、「Sum 2 Prove」のイントロが流れ、いよいよヘッドライナーのリル・ベイビーの出番がやってきた。彼が登場するや否や会場は大歓声に包まれ、その熱気は一段と高まっていく。まず目を奪われるのは、そのカリスマティックなオーラ! 首元、そして腕元には遠目からでも分かるジュエリーが幾重にも輝き、オーディエンスとコンタクトを取るようにパフォーマンスを続ける。顔には満面の笑みを浮かべ、想像よりもはるかに表情豊かにラップをする姿にも痺れた。42ダグとの「We Paid」「Pure Cocaine」などを立て続けに披露して序盤からモードは全開。「On Me」「Low Down」と畳みかけると、ヒットを記録している新曲「Dead Fresh」へ。さらに「Yes Indeed」「My Dawg」「Drip Too Hard」へと続き、ヒット曲とオーディエンスの合唱の嵐が会場の空気をかっさらう。
Photo by ud_yudai
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途中、ステージを感慨深そうに見つめるYZERRの表情がスクリーンに映し出されたことも忘れがたい。リル・ベイビーがデビューアルバム『Harder Than Ever』をリリースしたのは2018年。同じ年にBAD HOPは初の単独武道館公演を成功させた。アトランタのラップ・シーンから大きな影響を受けたYZERRにとって、同時代に飛躍したリル・ベイビーのキャリアは、自身が歩んできた道とも重なるのではないか。憧れてきたスターたちが、自分が誇る地元・川崎のステージを踏む。これ以上の感慨があるだろうか。「Life Goes On」「Stuff」を挟んでセントラル・シー「BAND4BAND」、ドレイク「Wants and Needs」といった特大コラボ曲でさらに客席を盛り上げるリル・ベイビー。「Close Friends」や「Emotionally Scarred」はしっかりと最後まで歌いきり、切なくエモーショナルな空気へと一変させた。再びドレイクとの「Girls Want Girls」を歌い、最後は堂々の「Freestyle」でステージを締めくくった。「Freestyle」を歌いながら自身の子どもたちも呼び込んで日本の国旗を掲げるシーンもあり、終始、パフォーマンスそのものを楽しんでいるようにも見えた。アトランタのストリートから駆け上がってきたリル・ベイビーが、次世代のヒップホップ・スターとして世界規模で大きな支持を集めていることを証明したパフォーマンスでもあった。
Photo by ud_yudai
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会場は終始雨に見舞われていたが、オーディエンスの熱は冷めやらず。この日、会場に集まった若者の多くが、かつて川崎の工業地帯でヒップホップ・ドリームを信じていたYZERRと同じように、ライブに触発されて新たな夢を見つけることができたのかもしれない、とすら感じた。多くのナラティブが交差し、FORCE FESTIVALが単なる音楽フェスティバル以上の意味を持つことを証明した夜となった。
©FORCE FESTIVAL
Photo by Daiki Miura: @daiki_miura
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©FORCE FESTIVAL




























