
クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ(Queens Of The Stone Age)が9作目のアルバム『Perfecth』をリリースする。愛や喪失、痛み、そして人生の中で刻まれていく傷跡を、不完全さごと受け入れるように鳴らした本作は、パリの地下納骨堂で撮影された映像作品、Catacombsプロジェクトとそのツアーを経て、バンドが新たな境地へと踏み出した一枚でもある。人間味にあふれ、ヘヴィで、奇妙で、ユーモアもありながら、その奥にはこれまで以上に生々しい感情が息づいている。
今回、共同プロデュースを務めるベーシストのマイケル・シューマンにインタビューを行った。『Perfecth』に込められた思い、Catacombsプロジェクトがもたらした変化、ジョシュ・ホーミとの関係、そしてアルバム・タイトルにも象徴される”不完全だからこそ完璧” なサウンドについて話を聞いた。
※2025年11月に東名阪ジャパンツアーを開催、詳細は記事末尾にて
ジョシュ・ホーミとの絆が生んだ変化
―パリの地下納骨堂で撮影された映像作品『Alive in the Catacombs』は、音楽も映像も素晴らしいプロジェクトでした。それが今回のアルバム『Perfecth』になると、血まみれになるティーザー・トレーラー、「Easy Street」のMV、ビッグ・チョンガスという奇妙な犬の里親募集を描いた『Big Chongus Finds a Perfecth Home』と、次々に公開される映像がぶっ飛んでいて、一体、何が起こっているんだ?って思わされましたよ。あまりにも、Catacombsプロジェクトとはギャップがありすぎたので。
マイケル:確かに、「何が起こっているんだ?!」って感じだよね(笑)。ビッグ・チョンガスは、僕たちにとってかなりキャラクター的な存在になってきているよ。今やみんながこの犬に愛着を持ってくれているんだ。僕たちは、キャンペーンをどう展開していくかということ自体を、とにかく楽しみたい。『Era Vulgaris』(2007年の5作目)にも、ヴォルビというキャラクターがいたよね。僕たちはただ楽しみたいし、自分たちのことをあまり深刻にとらえたくはない。というのも、このアルバム自体はシリアスな作品だから。愛についての作品だし、いろんな波乱についての作品でもある。Catacombsの時、僕たちは本当にクソみたいなことをたくさん経験した。だからこそ、ちょっとユーモラスにすることで、少しだけ軽くしておきたいというか。ヘヴィなものとのバランスを取りたいんだ。
―非常に大きなギャップがありながらも、今回のアルバムにはCatacombsプロジェクトで得られたインスピレーションが、さらに新たな形で生かされていますよね。
マイケル:Catacombsは、今回僕たちが進みたかった方向性を見つける上で、ものスゴく大きな影響を与えたと思う。それに、僕たちはずっとCatacombsのツアーをやってきて、ツアーからスタジオへ、スタジオからツアーへ、行ったり来たりしていた。僕たちとしては、違う楽器編成で、違うマインドセットでやるというモードに、すでに入っていたんだよ。
パリの地下納骨堂で収録された約30分のライブ映像『Alive in the Catacombs』
―実際、アルバム収録曲の「Easy Street」はCatacombsのツアーのセットリストに入っていたし、「Insignificant Other」は『Alive in the Catacombs』の最後でジョシュがラインを歌っていますよね。
マイケル:そこに気づいてくれてうれしいよ。今回のアルバムを作る上で、Catacombsをやり終えたこと、ジョシュが身体的な問題を抱えていたこと、その二つは大きかったと僕は思っている。本当にヘヴィな状況だったからね。今でも、あのCatacombsでの日々を覚えているよ。「僕たちはまた一緒に音楽をやるのだろうか? もしかしたら、これが一緒に音楽をやる最後の機会になるのかもしれない」って、本当に感じていたんだ。 だから、こうしてもう一度、一緒にアルバムを作ることができたのは、まるで贈り物みたいな感じがする。それにあのツアーでは、僕たち全員が普段とは違う楽器や役割を担っていた。僕もベースだけでなく、アコースティック・ギターやパーカッションを演奏し、リード・ボーカルも担当した。ジョシュもギターを持たず、歌だけに専念する場面が多かった。そういう普段ならあり得ないような状況に自分たちを置いてみることで、スタジオでも同じことをやってみようと考えられるようになったんだ。「この曲にはドラムは要らないんじゃないか」「ベースも要らないんじゃないか」「ギターも必要ないんじゃないか」ってね。
―それって、今まで以上に、音楽をやる自由を楽しんでいるということにもなりますよね。
マイケル:完全にそうだね。あと、自分たちのバンドに対してみんなが抱いていた、あらゆる期待を取り払ったというのも大きい。実を言うと、僕たちは昔からメロウな音楽をやってきたし、どのアルバムにもメロウな曲は入っている。『Lullabies to Paralyze』(2005年の4作目)だってそうだよ。あのアルバムは、マーク・ラネガンの歌とアコースティック・ギターだけの「This Lullaby」で始まるんだ。しかも今回は、アルバムをヘヴィにするために、ディストーションや激しいドラムに頼るのはやめようと考えたタイミングでもあった。今回のアルバムはかなりヘヴィだけど、そのヘヴィさはもっと歌詞の部分から来ている。それに今回、ジョシュと僕はボーカルを録る中でかなり話し合いをしたんだ。「もう言いたいことはそのまま言おう」という感じで。「仮面をかぶるな」「隠そうとするな」「自分が感じていることをそのまま言うんだ」って。ジョシュにとっては、それをやるのが本当に怖かったというのもわかっていたよ。でも結果的には、これまでのどのアルバムよりもリアルで、人間味のある、ありのままの作品になったんじゃないかな。
―今回のクレジットを見ると、プロデューサーとして、ジョシュとあなたの二人の名前があります。マーク・ロンソンと制作した『Villains』(2017年の7作目)は別として、バンドは長い間セルフ・プロデュースで制作をしてきました。これまでのセルフ・プロデュースと今回の二人のプロデュースとでは、特に何か大きな違いはありましたか?
マイケル:元々、僕たちがセルフ・プロデュースをやるのは、5人のメンバーそれぞれに強い意見やアイデアがあるからなんだ。それにジョシュがリーダーだから、そもそも外部のプロデューサーが必要だと感じたこともなかった。今回のアルバムについては、たぶん『In Times New Roman...』(2023年の8作目)の終わりが始まりだったと思う。音を録り終えてからボーカル録りとミックスまで、9カ月ほどのブランクがあったんだ。その間、みんなそれぞれ別のことをしていたけど、結局、ボーカル録りとミックスは僕とジョシュの二人だけで、35日間ぶっ通しでやることになった。その時、二人の間には、何ていうか、それまでにはなかった違う絆が生まれたんだ。元々親友だったけど、また違う種類の友情ができたというか。それが今回のアルバム制作にも影響していると思う。僕とジョシュで、どうやって作るのか、どこで作るのか、曲順をどうするか、どの曲に取り組むべきか、かなり長い時間をかけて話し合ったんだ。もちろん、メンバー全員が重要な役割を担っているし、プロダクション上の判断にも関わっている。ただ今回は、たまたま僕とジョシュが舵を取ったという感じになったんだ。
―このアルバムで、最初に取り組んだのはどの曲になりますか?
マイケル:うーん、それはちょっと一言では答えられない質問だね。だから、こっちもちょっとひねった答えをするよ(笑)。最初の曲は、「Insignificant Other」になるかな。あれは『In Times New Roman...』のレコーディング最終日、夜9時くらいだったと思う。ジョシュが、「俺にはもう一つアイデアがある」って言いだしてね。僕たちはいろいろパートを確認し、アレンジを組み立てて、2回だけ演奏してみた。アルバムで聴けるのは、その2テイク目になるよ。でも、それだけで良かったんだ。それにこの曲は、お互いの音を聴き、音と音の隙間を聴き、お互いに反応して演奏する曲なんだ。セッションを終えた時点で、僕たちは「これはかなりいいものができたぞ」ってわかっていた。それがある意味、このアルバムを作り始めるきっかけにもなった。でも、厳密に言えば……ここからがちょっとひねった答えになるんだけど、実は最初に録った曲は別にあってね。「Run Away From the Mob」なんだ。これは『…Like Clockwork』(2013年の6作目)のセッションで録音したものなんだよ。
―確かに、「Run Away From the Mob」のクレジットには、ドラムにデイヴ・グロールの名前がありますね。
マイケル:その通り。デイヴが参加している。『…Like Clockwork』の時に、音の部分はすべて録音している。ただ、この曲は、他のアルバムでも何度か試してみたけれど、どうやっても上手くハマらなかった。それが今回、音楽的にもこの曲をやるのに完璧なタイミングだと思ったし、ジョシュが書いた歌詞にとってもそうだった。だから、僕たちが実際に取り組んだ最初の曲は、この曲だと言える。10年以上もやりたいと思っていた曲だけど、今回が完璧なタイミングになったんだ。
サウンドに宿る人間らしさ
―プレスリリースによると、「Easy Street」はデモを録るような感覚で作った曲で、クリック・トラックは使わず、ミスもそのまま残しているとのことです。このようなアプローチは、アルバム全体についても言えることですか? 実際、このアルバムの音は非常に人間味にあふれ、生々しく、温かみがあるとともに、脆さもさらけ出しているように感じます。ある意味、今の時代のコンピューターで作るような音楽とは全然違う、ルーツに戻るようなアプローチですよね。
マイケル:全くその通りだよ。今の時代は、音楽で使えるツールが本当にたくさんある。それに、みんながボーカルをチューニングして完璧にして、すべてをきっちり揃えようとするよね。でもそうすると、人間らしさがなくなってしまうし、僕からすると、すべてが同じフィルターを通っているようにも感じる。それって、僕たちがこれまでやってきたこととは全く違うんだ。だから今回は、それとは正反対のものを目指したかった。だって、世界は完璧じゃないし、僕たちの誰一人として完璧じゃない。だったら、完璧であるかのように取り繕う必要なんてないんだよ。自分たちの傷跡も、過ちも、すべてを隠さずにさらけ出せばいい。歌詞についても同じで、今回はようやく感情に対して、本当に、本当に、正直になることができた。だからこそ、このアルバムではサウンド・プロダクションと歌詞が、素晴らしい形で結びついたんだと思っている。
―それで、このアルバムのタイトルは『Perfecth』なんですね。「Perfecth」は「Perfect(完璧)」みたいに聞こえるけれど、完璧ではないから。「Perfect」に対する居心地の悪さというか、不信感みたいなものも感じますね。
マイケル:僕たちはみんな、何かが完璧になり得ると思っているからね。人間関係だって、家族だって、アルバムだって完璧になると思っている。でも、そんなものは存在しないし、そこがスゴく面白いところでもある。何も完璧じゃないのに、僕たちは気軽に、「ああ、完璧だね」なんて言う。でも、それって実際には、文字通り、正しくないんだよ。
―あなたにとっての「Perfecth」の例を、一つ挙げてもらえますか?
マイケル:例えば、キャプテン・ビーフハート・アンド・ザ・マジック・バンドの「Her Eyes Are A Blue Million Miles」という曲があるんだけど、スゴく生々しいんだよね。あのバンドはかなりアブストラクトな音楽をやっていたけれど、この曲は比較的しっかりとプロデュースされていて、僕にとっては最も「Perfecth」な曲の一つになる。彼の声はめちゃくちゃだし、全然まともじゃない。でも、僕にとってはそれが「Perfecth」なんだ。人生のある時期……大きく成長した時期や、何かを失った時期、愛を経験した時期と結びついた曲は、自分にとって完璧に感じられることがあるからね。
―それこそ、1曲目「It's Only Love」を聴き始めた時から、そういうことを感じましたよ。低音とキックが歪んでいるので、あれ?!っと思ったのですが、逆にそれが良い空気感を生んでいて。
マイケル:あれは意図的にやっている。ドラムについても、完全に左にパンしたりを何度もやっている。それって、今の音楽を聴き慣れた人からすると、かなり変に聴こえるよね。でも、ビートルズだって『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』でやっていたし、昔はどのバンドもやっていたことだ。ああいう空間を作ったり、楽器やボーカルを自由に呼吸させたりするテクニックが、今ではもう使われなくなっている。今の人たちには変に聴こえるかもしれないけれど、僕たちもああいう昔のスタジオのテクニックを使いたいと思ったんだ。
―「Mono」という曲にしても、最初はモノラルなのが、突然ステレオ・サウンドに変わって、ワイドスクリーンのオーケストラになるので、圧倒されましたよ。この曲でもそういうテクニックを使っていますよね。
マイケル:あれももちろん、意図的にやっている。あの曲は本当にヘヴィだからね。元々はデモとして録音されたもので、『In Times New Roman...』のセッション中に、ジョシュが自宅で一人で録ったものだ。そこにディーン(・ファーティタ)が加わって、キーボードを入れた。この曲はアルバムに入れるべきだと思ったから、最終的に僕たちはSound City Studiosに入った。そこで僕は、この曲のドラムだけは録り直す必要があると思っていた。曲の他の部分は、めちゃくちゃで録音状態もひどいんだけど、それ自体がこの曲の世界観の一部になっているからだ。しかも、その瞬間に感じた本当の傷みというのは、再現することができないしね。それは彼の声の至るところから聴こえるし、壊れたシンセの音からも聴こえてくる。あれは、このアルバムの中で最もリアルな瞬間なんじゃないかな。曲の最後では、彼は文字通り泣きながら叫んでいるよ。あれは本物なんだ。今ではもう慣れたけど、あれを聴くのは本当に、本当に、本当につらかった。自分の友達が苦しんでいる声を、録音された状態で聴くわけだから。
―イギー・ポップとのコラボ曲を再録した「Sunday」は、ニューオーリンズでのセッションから生まれたんですよね。ニューオーリンズを選んだ理由は何かあったのですか?
マイケル:ニューオーリンズが好きなんだよ。僕にとっては、アメリカで唯一、アメリカにいる感じがしない場所なんだ。まるで別の場所にいるみたいだから。ものスゴく素晴らしいコミュニティがあるのもいいし、いつだって周りには純粋で抑制の効かないカオスがある。今回の僕たちは、完全に自由になれる場所に行きたかった。全員が一つの場所にどっぷり浸かるような状態が欲しかったんだ。あそこで録音したものは全部使ったわけじゃないけど、あの場所に行くことで、このアルバムを作るためのメンタリティというか、マインドセットに入ることができた。しかも、スタジオの向かいにはFriendly Barというバーがあって、ドアを出ればすぐに行けるような場所だった。だから、完全に肩の力を抜いた自由とカオスの中で制作できたんだ。最高だったよ。ただ、ちょっと近すぎたかもしれないけれどね(笑)。

―話を聞いていて気になったのですが、このアルバムの曲はライブでどうやって演奏するのですか?
マイケル:まだ決めてないんだ。もちろん、多少は考えるよ。でも、アルバム制作で最優先なのは、とにかく最高の作品を作ることなんだ。自分たちが作りたい曲を作って、ライブでどうするかは後で考えればいい。ライブで再現できないからといって、ストリングスを諦める必要とかもないしね。またCatacombsの話になるけれど、あれも僕たちにとっては、ライブでアコースティック・ギターだけを弾いてもいいんだって理解するための、一つの方法でもあったんだ。
―そうなると、11月の来日ツアーも楽しみですね。ちなみに、日本での最高の思い出があれば、一つ教えてもらえますか?
マイケル:12年くらい前かな。当時付き合っていた彼女がいて、その時が僕にとって初めての日本だった。彼女にプロポーズをしたくて、親友のカトマンがやっているBeat Cafeでやることにしたんだ。当時、僕はKXLUというラジオ局で働いていて、カトマンが「にせんねんもんだい」のツアーでロサンゼルスに来た時に知り合った。それ以来ずっと連絡を取り合っていてね。それで実際に、僕はBeat Cafeで彼女にプロポーズをしたんだよ。店に入ると、カトマンがバー全体にキャンドルを灯して、シェフの格好をしていた(笑)。その一部始終も撮影してくれてね。あれは最高だったな。残念ながら、その彼女とはもう一緒にいないんだけど。
―そう言えば、今日はこの後、自身のプロジェクト、GLUのライブがあるんですよね。GLUでは、ヒップホップの要素といろんなスタイルの音楽を組み合わせた、カッコいい音楽をやっていますね。
マイケル:僕自身はウェストコースト・ヒップホップを聴いて育ったんだ。これまでパンク・バンドにもロック・バンドにもいたけど、自分にとって新しいものを作りたかった。それで、自分にとって一番パンクなことは、ヒップホップやポップ・ミュージックをやることだと思ったんだ。もちろん、そこには自分なりのひねりを加えているけどね。僕は自分自身に挑戦するのが好きだし、本気で自分自身を怖がらせたいんだ。

クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ
『Perfecth』
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国内盤CD:歌詞対訳・解説書付き
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「You'll see Queens of the Stone Age World Tour」
2026年11月25日(水)東京・Zepp Haneda (TOKYO) ※SOLD OUT
2026年11月26日(木)愛知・Zepp Nagoya
2026年11月28日(土)大阪・Zepp Namba (OSAKA)
チケット料金(全公演共通):
1Fスタンディング:11,000円(税込・別途1ドリンク代)
2F指定席:13,000円(税込・別途1ドリンク代)
公演詳細:https://www.creativeman.co.jp/event/queens-of-the-stone-age_2026/
