Westside Cowboy「ロックンロールが死んだとは思わない」──UK新鋭バンドが語る「生身の音楽」への情熱

ギースとのヨーロッパツアーやグラストンベリー出演を経て、急速に注目を集めるイギリス・マンチェスター出身の4人組、ウエストサイド・カウボーイ(Westside Cowboy)。今年8月にデビューアルバム『It Goes On』を発表し、2027年3月4日に開催される東京・WWW Xでの初来日公演は完売必至。生身の演奏、人とのつながりを大切にする彼らが語る音楽の原点、そしてロックンロールの未来。

Photographs By Samantha Corcoran

数カ月ぶりに地元で過ごす、たった1日の休日。そんな貴重な時間に、ウエストサイド・カウボーイのメンバーたちは、何より苦手なことをしている。画面を見つめることだ。英国マンチェスターを拠点とするこのバンドでは、スマートフォンを所有しているのは4人のうちたった1人。ボーカル/ギターのルーベン・ヘイコックスは以前、折りたたみ式の携帯電話を持っていたが、しばらく前になくしてしまった。しかも、急いで探すつもりはないらしい。

「僕らは基本的に、あまり”phone-y(フォーニー)”な人間じゃないんだ」とルーベンは話す。Zoomの画面には、ボーカル/ギターのジミー・ブラッドベリー、ボーカル/ベースのイーファ・アンソン・オコネル、ドラムのパディ・マーフィーも一緒に映っている。「英国流の意味というか、僕らが勝手に作った言葉としての”phone-y”ってことね。要するに、電話にべったりな人間じゃないってこと。もっとも、アメリカ英語の”phony”=”インチキくさい”という意味なら、僕らもそうかもしれない。それは、みんなが僕らをどれくらい気に入ってくれるか次第だね」

急速に注目を集めるこの4人組は、その答えを近いうちに知ることになるだろう。昨年デビューEPをリリースして以来、彼らはグラストンベリー・フェスティバルの新人発掘コンテストで優勝し、同フェスティバルへの出演を果たした。ギースのヨーロッパツアーではオープニングアクトを務め、英国の老舗音楽テレビ番組『Later... with Jools Holland』にも出演した。今年8月には、アイランド・レコードからデビューアルバム『It Goes On』をリリース。収録されているのは、無駄を削ぎ落とした、勢いあふれるロックナンバーの数々。かつて夢中になったバンドの面影を、どこかに感じるかもしれない。だが、彼らはそんなことを気にしない。むしろ、それこそが狙いなのだ。大好きだった音楽を思い出してもらうこと。あるいは、音楽を愛するという感覚そのものを呼び覚ますこと。それが生身の人間によって奏でられる音楽なら、なおさらだ。

とはいえ、今日のウエストサイド・カウボーイのメンバーたちが取り組んでいるのは、何人かでシェアしているアパートで、洗濯物を干すという「大仕事」だ。ジミーはZoomでの取材前にプールで何往復か泳いできたという。本人いわく、ツアー中に食べ続けたベジタリアンバーガーのカロリーを消費するためらしい(ライブ会場のケータリング担当者の皆さん、ベジタリアン向けのメニューをもっと充実させてほしい)。Tシャツにジーンズという彼らの姿は、ステージに登場するときとほとんど変わらない。できる限りシンプルに、そしてオフラインで過ごす。それが彼らの好みなのだ。

「僕らは、わがままなスターにならないようにしているんだ」とルーベンは言う。「でも、ライブの最初から最後まで、客席にスマホが1台も見えなかったら最高だろうね。それが僕らの夢なんだ」

こうした姿勢は、若い世代を「人とのつながりを失い、社会に無関心で、延々と画面をスクロールすることに取りつかれた世代」と決めつけ、ChatGPTに頼らなければ文章ひとつ書けないと嘆く年配の人々を驚かせるかもしれない。実際のところ、全員が20代前半から半ばのウエストサイド・カウボーイも、そうした状況をほかの人々と同じように懸念している。わずか3年前、大学で出会ってバンドを結成して以来、彼らはデジタル時代へのアンチテーゼとなる4人組ロックバンドを目指してきた。ライブは荒削りで、切迫感に満ちたものにしたい。演奏の不完全さも隠さず、音楽は複雑にしすぎない。ギターはギターらしい音を鳴らし、ドラムは実際に人間が叩いているとわかる音であること。シンセサイザーも、フィルインも、クリックトラックも使わない。そして、AIは絶対に使わない。

「みんなが聴きたいのは、美しい声で素晴らしい歌詞を歌っている人が、途中で一節を思いきり間違えてしまうような瞬間なんだと思う」とイーファは言う。「もっと手触りのあるものを求めているんだよ。園芸クラブでも、みんなで歌うことでも、サッカーでも、個人経営のお店でもいい。誰かと実際に交流して、本物のつながりを築ける場所なら、何だっていいんだ」

2026年7月、マンチェスターで撮影されたウエストサイド・カウボーイ

そうした人と人との交流、そして若さゆえの無邪気な楽しさこそが、ウエストサイド・カウボーイの物語の核心にある。イーファ、パディ、ルーベンの3人は、王立ノーザン音楽大学で友人になった。一方、ジミーとパディは、かつて「3人組のサーフパンクバンド」で一緒にライブをしていた。全員がマンチェスター周辺で育ち、街にはエレクトロニックミュージックがあふれていたものの、彼らが聴いていたのはザ・ストロークスやアークティック・モンキーズだった。やがて地元のDIYシーンに魅了されていった。

ただし、イーファだけは少し違った。

「10代の頃は、主に弦楽四重奏とトップ40のヒット曲を聴いていたんだ。あまりクールな趣味とは言えなかったけどね」と彼女は話す。イーファはチェロを学ぶために音楽学校に進学したが、13歳のときに教会で歌ったのを最後に、人前で歌ったことはなかった。そんな彼女が新たな音楽にのめり込むきっかけとなったのが、ベル・アンド・セバスチャンやスフィアン・スティーヴンスだった。ほかのメンバーと出会った頃は、みんなで集まって楽しく過ごし、ロニー・ドネガン(1950年代の英国スキッフルにおける第一人者)のカバーを演奏するのが主な活動だった。まるで放課後のクラブ活動のようなものだ。周囲のあらゆるものが、あまりにも深刻ぶっていて、音楽を必要以上に特別視しているように感じられた。

彼らが取り戻したかったのは、子供の頃に音楽を好きになった、あの感覚だった。「例えば、センスのいい誰かに薦められた変わったアルバムを見つけて、『これこそ自分のすべてだ!』って夢中になるような瞬間だよ」とパディは説明する。「音楽に対して心からワクワクする、あの感覚をもう一度味わいたかったんだ」。そして、ロックンロールは死んだ、あるいは絶滅の危機に瀕しているといった議論は、徹底的に無視することにした。

「オリジナリティなんてなくてもいい」──4人が貫く音楽哲学

最初のオリジナル曲が生まれたのは、まったくの偶然だった。その後、次々と曲ができるようになると、彼らはいくつかの基本ルールを設けた。シンプルに、気負わず、いつまでも若々しい感覚を忘れないこと。ほぼすべての曲は、2本のギター、ベース、ドラムで構成されている。シェイカーをひとつ加えたいだけでも、誰かが自分の楽器を演奏しながら鳴らす方法を考えなくてはならない。たとえ足の指の間に挟んで振ることになったとしてもだ(「今のところは、そういう考えなんだ」とルーベンは付け加える。「将来、みんな関節炎になったら、考えが変わるかもしれないけどね」)。メンバー全員が曲を書き、リードボーカルも交代で担当する。

彼らが目指したのは、人間らしさを大切にし、無理に新しいことをしようとしない音楽だった。もっとも、英国ロックの伝統と、自分たちが親しんできたアメリカのポップカルチャーを土台とするサウンドに、当初は「ブリタニカーナ(Britainicana)」という名前をつけようとしていたが、今ではその呼び名に少し気恥ずかしさを感じているようだ。

「当時、マンチェスターのバンドはみんなポストパンクをやっていたんだ」とパディは言う。「僕らはそうじゃないってことを、面白おかしく伝えるための言葉だった。そもそもイギリスのバンドは昔からアメリカの音楽が大好きで、アメリカのバンドもイギリスの音楽が大好きだった。僕らがやっているのも、そういう流れの延長線上にあるってことだね」

地元でライブを重ねるうちに、彼らはローレン・ハンフリーの目に留まった。ギースなどを手がけてきたことで知られるプロデューサーだ。ローレンはウエストサイド・カウボーイの2作目のEPをプロデュースし、その後、デビューアルバムにも参加することになった。

「最初にこのバンドに惹かれたのは、そのエネルギーだった」とローレンはRolling Stoneに語る。「ひとつの曲を、普通なら許容範囲をはるかに超えるようなところまで突き進めてしまう。それなのに、どういうわけか最後にはちゃんと着地できるんだ。すべてが制御不能になって、谷底へ真っ逆さまに転落する、そのほんの一瞬前にクレッシェンドの頂点へ到達する。そこに、ものすごく若々しいものを感じた。文化や年齢という意味ではなく、そのスピード感にね」

スタジオでも、彼らは結成当初の信念を貫いた。「オリジナリティなんてなくてもいい。何か特別なものである必要もないんだ」とルーベンは言う。「自分たちが別の誰かになったつもりで曲を書いて、考えられる限りシンプルで、最高に楽しいものを作ればいい」

シングル「Kick Stones (The Boys)」は、その方法がいかにうまく機能したかを示す好例だ。お手本にしたのはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「What Goes On」だが、演奏のルーズさが曲に新鮮さを与えている。ルーベンは時に砂時計の砂が落ち切る前に歌い終えようとするかのように性急に歌い、またある時には、一つひとつの音節をゆっくりと引き延ばしながら、気ままに歌う。その歌声がイーファの声と重なり、ハーモニーを生み出していく。「Dobro」や「Big Wheels」といった曲では、ジミーの内なるジュリアン・カサブランカスが顔をのぞかせる。リードボーカルが次々と入れ替わることで、バンド全体が家族みんなで音楽を作り上げているように感じられる。単細胞生物のように一体となって動くのではなく、何本もの触手が自由に伸びているようなイメージだ。ほぼすべての曲が、聴き手を満足させるクレッシェンドへと爆発的に盛り上がっていく。一方で、そうした大きな盛り上がりを見せずとも、同じくらい魅力的なバラードを書くことができる。「Take My Leaving As I Love You」がその一例で、録音には部屋のかすかなざわめきまで収められている。

ウエストサイド・カウボーイが大切にしているもうひとつの要素が、コミュニティだ。ギースとのツアー中に目の当たりにした、観客同士のつながり。そして、バンドの内側にも外側にも、自分たちで築くことのできるコミュニティだ。最近、ルーベンは「ブルーゾーン」についての本を読んでいるという。世界でも特に長寿の人々が多い地域に着目した考え方だ。そこで彼が知ったのは、長生きする人々に共通する特徴のひとつが、日常的に多くの人と交流していることだというものだった。「ほかの人たちと一緒に何かをすることには、魔法のような力がある。統計的に見ても、文字どおり寿命を延ばしてくれるんだ」と彼は話す。そして、ミック・ジャガーの長寿の秘密も「友達がめちゃくちゃ多いこと」なのかもしれないと冗談を飛ばす。

バンドは活動初期に、「No Band Is An Island」という団体の共同設立にも携わった。音楽コミュニティが、より大きな善のために連帯する集団の一員となることを目指す取り組みだ。世界各地で起きている問題に目を向け、ツアーを通じて意識を高めることも目的としている。例えば、バリアフリー対応の会場でのみ演奏することを目指し、チケット価格を低く抑え、ライブ会場でジェンダーニュートラルなトイレを利用できるようにすることなどだ。そして何より、彼らが望んでいるのは、観客がスマホを置き、その場で鳴り響くロックンロールを、ただ全身で味わってくれることなのだ。

「ロックンロールが死んだとは、僕は思わない」とジミーは笑顔で語る。「ただ、イギリスに移っただけさ」

Westside Cowboy 初来日公演

2027年3月4日(木)東京・WWW X

OPEN 18:00 / START 19:00

チケット:前売7,500円(税込/スタンディング/ドリンク代別)

オフィシャル先行受付:2026年10月21日(水)12:00〜11月1日(日)23:59

一般発売:2026年11月7日(土)10:00〜

公演詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4795

It Goes On ‑「アルバム」by Westside Cowboy | Spotify

ウエストサイド・カウボーイ

『It Goes On』

発売中

再生・購入:https://umj.lnk.to/WSCB_IGO