
ボブ・ディランとのツアー、ドリー・パートンとの親交、そして2023年のロックの殿堂入り。グラミー賞9冠を誇るシェリル・クロウ自身も、これほどのキャリアを歩んできたことが信じられないという。米Rolling Stoneのポッドキャスト番組『Nashville Now』の最新エピソードに出演したクロウは、これまでの人生経験や、未来に対する不安と希望が、いかにニューアルバム『Pick You Up』に反映されているかを語った。同作には、ジェシー・ウェルズとのコラボレーション曲「Freedom Bus」も収録されている。
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10月9日にリリースされた『Pick You Up』は、長年のコラボレーターであるジェフ・トロットと共同で作詞・作曲、プロデュースを手がけた、全7曲入りの通算12作目のスタジオ・アルバム。90年代の彼女を象徴するロックやアメリカーナのサウンドに立ち返りながら、政治的分断や気候変動の否定、人と人とのつながりといったテーマを掘り下げている。アルバム発表時、クロウは「どの曲も、人としてのあり方、人との繋がりを求める気持ちについての考察」と説明し、混沌とした時代に孤独を感じている人々へ、希望を届けたいという思いを明かしていた。
そうした思いの背景には、これまでの人生経験もある。2006年に乳がんと診断されたクロウは、過去のインタビューで、それまで周囲の期待に応えることを優先し、自分自身を後回しにしてきたと振り返っている。病気をきっかけに、必要なときには「ノー」と言い、自分を大切にすることを学んだという。現在は2人の息子を育てる母親でもあり、次の世代にどんな世界を残せるのかという問いが、彼女の創作に大きな影響を与えている。
64歳になったクロウは、音楽との向き合い方にも変化を感じている。最近の米NPRのインタビューでは、ラジオで流れるかどうか、過去のヒット曲と同じ成功を収められるかを気にせず、自由に曲を書けるようになったことに、大きな解放感があると語った。商業的な成功を追い求めるプレッシャーから離れ、今の自分が本当に伝えたいことを歌う。その姿勢は、新作に込められたメッセージとも重なっている。
では、クロウにとって「自由」とは何を意味するのだろうか。
「自由とは、誰もがありのままの自分でいられるようにすること。その人らしさを称え、その人にとって最善のことを願えることだと思います」と、クロウはRolling Stoneに語る。「ドリー(・パートン)を見るたびに思うんです。ただ人々の暮らしをより良くしたいと願ってきた、本当に素晴らしいお手本だなって」
クロウが敬愛するドリー・パートンは、今年8月25日に80歳で亡くなった。音楽活動のみならず、慈善活動を通じても多くの人々を支えてきた彼女の生き方は、クロウにとって「自由」のあり方を体現するものなのだろう。
一方でクロウは、「自由」をはじめとするさまざまな言葉が、人々の分断をあおる目的で利用されるようになったことも指摘する。そうした言葉は人々の感情を刺激するものとなり、カントリーミュージックの世界にも入り込んでいるという。
「私たちは『フェイク(偽物)』『ウォーク(社会問題への意識が高いこと)』『パトリオット(愛国者)』といった言葉を、互いを攻撃し、敵と味方に分けるために使っています。『愛国的』や『愛国者』という言葉の使われ方には、本当に腹が立ちます。私自身、自分の国を強く愛しているけれど、保守派ではありません。私は中道的な現実主義者です。それなのに『愛国的』という言葉は、特定の人々だけを指すものとして使われ、ほかの人々を攻撃するためにも利用されている。そこに強い憤りを感じるんです」
「いつか私たち全員が、もっと政治を読み解く力を身につけられたらと願っています。ある言葉が誰かを攻撃するために使われたとき、その言葉には別の意味が込められているのではないか、二重の意味で使われているのではないかと、立ち止まって考えられるようになってほしいんです」
クロウは2027年、ケニー・チェズニーのスタジアムツアー『The Original Vibe Room Tour 2027』にエリック・チャーチらとともに参加し、新作の楽曲に加えて、これまでの代表曲も披露する予定だ。
『Nashville Now』では、カントリーミュージックのメインストリームを支持する観客に、どのような姿勢で向き合うのかについても語っている。さらに、オリヴィア・ロドリゴとの友情についても明かした。ロドリゴは最近、ナッシュビルで開催された授賞式の晩餐会で、クロウに向けて歌を披露したという。
これは9月14日に開催されたBMIトルバドゥール賞の授賞式での出来事だ。クロウの功績を讃えるため、ロドリゴがサプライズで登場し、代表曲「Strong Enough」を披露した。当日はジェイソン・イズベルが「Run Baby Run」、メリッサ・エスリッジが「If It Makes You Happy」、クリス・ステイプルトンが「I Shall Believe」をカバー。クロウとロドリゴは2023年のロックの殿堂入りセレモニーでも共演しており、世代を超えた交流を深めてきた。
インタビューの全編は以下の動画で視聴できる。
※米Rolling Stoneのポッドキャスト番組『Nashville Now』は、同誌のカントリー部門責任者を兼任する副編集長、ジョセフ・ヒューダックがホストを務める。毎週水曜日に新エピソードが配信され、Apple PodcastsやSpotifyなどで聴くことができる。これまでにシャナイア・トゥエイン、シャブージー、ヴィンス・ギル、レイニー・ウィルソン、キングス・オブ・レオンなど、多彩なアーティストや著名人が出演している。

Sheryl Crow(シェリル・クロウ)
ニュー・アルバム 『Pick You Up』
配信中
Old Green Barn Productions Inc
配信リンク:https://sherylcrow.ffm.to/pickyouup
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