つまりラストの感動と涙は約束された作品であり、そこに向けて「多くの視聴者が一緒に盛り上がっていける」ということ。しかも、その盛り上がりは“物語を追う”ことだけではない。むしろ“若手俳優たちの成長と団結を見る”ことが最大の醍醐味という感すらある。
結末のわかっている作品のためネタバレするが、特に『ウォーターボーイズ2』は最終第12話のカタルシスがシリーズ屈指だった。若手俳優たちは放送を重ねるごとにシンクロの技術を上げていき、最終話では「これほどやれるようになっていたのか」と驚かされる。
さらに元気いっぱいのダンスで笑顔を誘うなど、アッという間に時間が過ぎていく。そして視聴者に「もっと見ていたい」と思わせながら最後に挑む“やぐら”はシリーズを通してクライマックスとなるシーンだった。
しかも『ウォーターボーイズ2』では“四段やぐら”の予定から急きょ“五段やぐら”に挑戦。危険度の高い種目であり、失敗シーンも映されるなど「無理だ」という張り詰めた空気の中、泳吉が頂上で右手を高々と掲げ、歓喜をもたらした。このドラマ史に残る名シーンは姫乃高の男子というより、若手俳優たちのドキュメントと言っていいだろう。
ちなみに“五段やぐら”は「ラスト1回」だった9回目の挑戦で成功させたという。そして制作サイドはこの最終第12話を「2時間拡大版」として放送した。その選択に至ったことこそが制作サイドの手応えを物語っている。このようなドラマとドキュメントが融合した若手俳優たちの奮闘は「時代が令和に変わっても見たい」と思えるものではないか。
来夏放送の『ウォーターボーイズ2027』でも約1年の「WATER BOYSプロジェクト」が始動する。制作サイドと若手俳優たちがオーディション、シンクロのトレーニング、本番の撮影に挑む流れはこれまで同様であり、ここさえブレなければ他の続編やリメイク以上に期待できるのかもしれない。
夏ドラマとして最高のロケーション
続編・リメイク向きである理由としてもう1つ忘れてはいけないのは“夏ドラマ”としてこれ以上ない物語と舞台であること。
高校生たちの友情、ひと夏の奮闘、プール、水着などのテーマやモチーフは、夏休み期間の夏ドラマにピッタリであり、水と空の青をベースにしたさわやかな映像を散りばめられる。
また、映画『ウォーターボーイズ』は主に静岡県中部、『ウォーターボーイズ』は主に山梨県、『ウォーターボーイズ2』は主に静岡県西部で撮影が行われたが、日本の夏を感じやすい自然あふれるロケーションも魅力の1つ。古き良き日本の風景に素朴な高校生の奮闘がフィットしていた。
四季ごとに新作ドラマが制作される日本は本来、季節性の高い作品を放送しやすいはずであり、なかでも夏は最大のチャンス。しかし、近年ではほとんどなくなってしまっただけに来夏のシリーズ復活にかかる期待は大きい。
ドラマが放送された03~05年は「『ウォーターボーイズ』が終わると夏の終わりを感じ、ちょっと切ない気持ちにさせられる」というムードがあった。来夏はひさしぶりにそんな感覚が味わえるのではないか。
最後に5人以外の登場人物を紹介しておくと生徒では、進路と恋に揺れるヒロインに矢沢栞(石原さとみ)、最も恋愛絡みのシーンが多かった北川梢(鈴木えみ)、目の敵にされている男子から「バカ代」と言われる生徒会長の大場加代(浅見れいな)。
教師では、映画版からの続投でボーイズたちの味方となる早乙女聖(金子貴俊)、シンクロ部の活動を反対する大原夏子(山口紗弥加)、男性の裸が苦手な越野晴香(井上和香)。
家族では、栞の父・矢沢明(小日向文世)と母・薫(森下愛子)。それ以外ではミステリアスな喫茶店主でコーチ役の粕谷耕造(佐野史郎)。そして校長の樫山礼子は『VIVANT』で別班・司令役で話題のキムラ緑子が務めた。
福山雅治の主題歌「虹 ~もうひとつの夏~」が流れるだけで気持ちが高まるような作品はなかなかないだろう。各局が大人向けのドラマばかり作って若年層が見やすい作品が少ない中、最後の夏に懸ける高校3年生の姿を描いた『WATER BOYS』の希少性はますます上がっているのではないか。その意味で20年代後半に再びシリーズ化されても驚きはない。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。