
ビーチ・ボーイズが約3カ月ぶりにライブ活動を再開した。しかし、ステージに現れた85歳のマイク・ラヴは見るからに衰弱しており、その姿を捉えた動画がSNSで拡散。「高齢者虐待ではないか」と疑問の声が上がるなど、波紋を呼んでいる。一方、本人はステージに立つことを強く望んでいるという。長年の友人であるジョン・ステイモスが明かした健康状態と、切実な思いとは。
マイク・ラヴの健康状態をめぐる曖昧な説明と、直前になっての公演中止が数カ月にわたって続くなか、ザ・ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)が現地時間10月11日の夜、シンシナティのPNCパビリオンでステージに復帰した。一般観客を前にしたライブは7月以来、約3カ月ぶりとなる。演奏が始まる前、長年にわたってバンドにゲスト参加してきたジョン・ステイモスがステージに登場し、観客に語りかけた。
「マイクは今夜、ここに来ています。彼は健康上の問題を抱えていて、いくつかの公演をキャンセルせざるを得ませんでした。でも、今夜だけは絶対に欠席したくないと言ったんです。僕らは『家で休んでいたらどうだ』と伝えたんですが、彼は『いや、シンシナティに行く』と言って譲りませんでした。……これこそ、彼が何よりも愛していることなんです。彼は観客を愛し、音楽を愛しています。そして、それが皆さんにとってどれほど大切なものかもわかっています。僕らはみんな、彼を支え、できる限りの愛を届けるためにここにいます。それでは皆さん、ビーチ・ボーイズをお迎えください」。そう語るとステイモスは、見るからに衰弱したラヴに付き添ってステージへと導き、椅子に座らせた。ラヴはその夜、最後まで椅子に座ったままだった。
長年の恒例に従い、オープニングを飾ったのは「Do It Again」。通常はラヴがリードボーカルを担当する曲だが、この日はギタリストのブライアン・アイケンバーガーが代わりに歌った。続く「Surfin' Safari」も、普段はラヴが歌う曲だが、今回は息子であり、長年バンドの一員として活動してきたクリスチャン・ラヴがリードを務めた。その後もメンバーたちが交代でリードボーカルを担当し、マイク・ラヴは時折バックコーラスに加わった。本人が言葉を発することはほとんどなかったが、オープニング曲を終えたあとには、何とか声を振り絞って「来てくれてありがとう」と観客に伝えた。
ラヴが現在抱えている「健康上の問題」の具体的な内容は明かされていない。ただし、6月のヨーロッパツアー中には、やせ細った自身の姿についてファンに説明していた。「いとこのブライアンが亡くなって1年になる日に、姉のモーリーンを亡くしました。その悲しみに加え、気管支炎を患い、その後に新型コロナウイルスにも感染して、今も回復の途上にあります。こうした出来事が重なり、精神的にも肉体的にも大きな負担となっています」とラヴはファンに向けて綴った。「体力的には日に日に回復していると感じていますが、心は深い悲しみに打ちひしがれています」
ラヴはその後も数週間にわたって公演を続け、ロサンゼルスのハリウッド・ボウルでの3夜連続公演も乗り切った。しかし、その後は9月末までに予定されていた残りの公演がすべて中止となった。「これまでのツアーは本当に楽しいものでした。この素晴らしいバイブレーションを持続させるためにも、9月に再びツアーに出る前に、少しだけ休んでエネルギーを充電することにしました」とバンドは声明で説明した。「皆さんの愛に感謝します。9月にまたお会いできるのを楽しみにしています」
ところが9月に入ると、公演を予定していた各会場が「不可抗力による事情」を理由に中止をファンに告知する一方、バンド側からは何の説明もなかった。それでもビーチ・ボーイズは10月3日、カリフォルニア州デイナポイントの高級ホテル、ウォルドーフ・アストリア・モナーク・ビーチでプライベート公演を実施。その際に撮影された写真や動画には、椅子に座ったままパフォーマンスするマイク・ラヴの姿が収められていた。
ビーチ・ボーイズは当初、10月9日にイリノイ州ブルーミントンのグロッシンガー・モーターズ・アリーナで、7月以来初となる一般公演を開催する予定だった。しかし、その3日前に「不測の事態」を理由として中止が発表された。さらに、10月19日に予定されていたカルガリー公演も取りやめとなっている。
「僕らには今夜がある」ジョン・ステイモスが綴った思い
バンドは現地時間10月12日の夜、ナッシュビルのライマン・オーディトリアムでコンサートを行う予定だ。その開演予定時刻の数時間前、ステイモスはInstagramでファンに向けたメッセージを投稿した。「ビーチ・ボーイズと一緒にライマン・オーディトリアムのステージに立つため、これからナッシュビル行きの飛行機に乗るところです。でも、今の気持ちをどう言葉にすればいいのか、わかりません」と彼は綴った。「大切な友人であり、父親のような存在であり、音楽のヒーローであり、恩師でもあるマイク・ラヴが、今、深刻な健康上の問題に直面しています。これからも何年にもわたって、彼が大好きなことを続けられるよう願っていますが、未来がどうなるかは誰にもわかりません。それでも、僕らには今夜があります。マイクは闘う人です。医師や家族、友人たちが健康を最優先するよう勧めても、彼はステージに立つと言って譲りません。バンドの仲間や観客、友人たち、そしてドラマーに囲まれていることが、自分に力を与えてくれるのだと話しています」
「今夜、僕らが目にするマイク・ラヴは、これまで知っていた彼とは少し違うかもしれません。それでも、僕らが愛するマイクであることに何ひとつ変わりはありません」とステイモスは続けた。「今夜、ライマンでマイクと同じステージに立つとき、僕はその瞬間を全身で感じていたい。ハーモニーの一つひとつに耳を澄まし、おなじみのジョークや歓声を聞き逃さずにいたい。最初のコードが鳴り響く瞬間を感じ、年齢も病気も時間も消え去っていくのを見届けたい。ただ仲間たちが集まって、一緒に音楽を奏でている。それだけのことです。誰かを愛するうえで、おそらく一番難しいのは、その人がそばにいてくれるという奇跡があまりにも当たり前になって、それが奇跡であることさえ忘れてしまうことなのかもしれません。今夜、僕はそれを忘れません。一秒一秒が過ぎ去っていくことを意識するのではなく、その瞬間のすべてを大切にしたい。それが僕から彼に贈りたいものです。明日何が起こるかはわかりません。でも、僕らには今夜があるんです」
ビーチ・ボーイズの次の公演予定は、11月13日にフロリダ州オーランドのディズニーワールドで開催されるライブで、それまではスケジュールが入っていない。その2日後には、バージニア州ブリストルのハードロック・ホテル&カジノで年内最後の公演を行う予定だが、いずれも予定どおり開催されるかは不透明だ。2027年に予定されているコンサートは、5月8日にカナダ・アルバータ州エノックのリバー・クリー・リゾート&カジノで行われる振替公演のみとなっている。
そして今夜、マイク・ラヴがライマンのステージに立つ一方で、かつてのバンド仲間であり、ラヴとともにオリジナルメンバー最後の存命者となったアル・ジャーディンは、約2000マイル離れたカリフォルニア州セリトスのセリトス・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツで公演を行う予定だ。ヴァレリー・シマディス(Valerie Simadis)による最近のインタビューによれば、ジャーディンの公演には、ビーチ・ボーイズで長年活動してきたブロンディ・チャップリン、デヴィッド・マークス、ブルース・ジョンストンも参加するという。さらに、ブライアン・ウィルソンの最初の妻、マリリン・ウィルソンも招待している。おそらく彼女は今回も、ビーチ・ボーイズのアルバム『Love You』に収録された隠れた名曲「Let's Put Our Hearts Together」で、かつて自身が担当したボーカルパートを再び披露するのだろう。
ジャーディンの公演にブルース・ジョンストンが参加するという話が事実なら、特に注目に値する。というのも、ジョンストンは約60年にわたって在籍したバンドを今年2月に離れ、マイク・ラヴ率いるビーチ・ボーイズから脱退したばかりだからだ。また、ラヴとジャーディンの関係も、長年にわたってかなり険悪な状態が続いてきた。「きっとすごいショーになるよ!」とジャーディンは最近のインタビューで語っている。「みんなにそれぞれゲストとして登場してもらいたいんだ」
From Rolling Stone US.