
3ボーカル&3コーラスを主軸に、2019年に結成された3人組・Dannie May。今年1月にドロップした「未完成婚姻論」がSpotifyの韓国バイラルチャートで1位のヒットを記録し、さらには10月に悲願となるZepp DiverCityでのワンマンを控えた彼らから、EP『YOKAI』が届けられた。
そのタイトルが示す通り、天狗やぬらりひょんといった妖怪たちからインスパイアされたという今作には、人の醜さや歪んだ世界と向き合いながらそれでも踊らんとする姿勢が、全4曲を通じて刻みこまれている。多様なソングライティングを武器にしてきた3人が、今定義する「Dannie May」とは。その多面性ゆえ、どこかぼやけていた彼らの表情に迫る。
ーまず、Dannie Mayはバンドなのか、グループなのか、はたまたユニットなのか、からお伺いしたくて。というのも、2020年のインタビューでこの質問に対して「ユニットです」と回答されていたんですけれど、7年間の活動を通じて、当時とは違う回答になるんじゃないかなと。いかがですか?
Yuno(Vo,Kantoku):難しいね。……でも、最近はもう、そういう括り自体がないかなと思っていて。バンドでもないし、ユニットでもない。そもそも僕らは「こういう音楽がやりたいよね」「俺はこのパートができるよ」で集まったメンバーではなく、信用できる人たちを集めたところから始まっているんで。Dannie MayはDannie Mayでしかない、と思っている気がしますね。
マサ(Vo,Gt):分かる。バンドでは絶対にないよね。ただ、ライブはバンド然としているから、クリエイターチーム的なイメージなのかもしれません。完全分業で制作も進めていますし。
ー即答で「バンドではない」と断言できることに驚いているんですけど、ボーカルとギター、ベース、ドラムというバンドらしい編成ではないからこそ、そう言い切れるんですか。
マサ:どちらかというと、バンドという括り自体に執着していないんですよ。自分がどう見られたいかに拘りがないというか、各々で定義してもらえたら良いと思っている。とはいえ、「コイツらはバンドじゃねぇよ」って言われたら腹は立ちますけど(笑)。
マサ
ー「どう捉えてもらっても良いよ」という懐の大きさを備えている中で、反対に動かしたくない絶対的な軸はどこにあるのでしょう。
マサ:バンドをやっていく中で1番大事なのは、続けることだと思っていて。それさえ成立していれば良いんじゃないかなと。ただ、続けていくにも色んな要素があるというか、単に現状維持をしているだけじゃ下落しているのと同じじゃないですか。なので、会場のキャパシティも含め、ちょっとずつでも右肩上がりに進んでいくことは欠かしたくないです。
田中タリラ(Vo,Key):3人の声が重なった時の声色は、きちんと考えなくてはいけないと思っています。数多の曲調がある中で、ファンの人が「この曲も、この歌もDannie Mayっぽいね」と言ってくれるのは、僕ら3人のハーモニーがあるからだろうし。そこがブレなければ、僕たちは変幻自在にどこまでも挑戦できるんじゃないかなって。
Yuno:僕はあまり周囲に関心がないというか、「他人は他人」と割り切れるタイプなんですよね。確かに、世の中のトレンドやセールスは分析対象ではあるけれど、Dannie Mayの活動には関係ないとも思うんです。極端な話、この3人がいれば何でも良い。3人で始めたものだから、3人でやってさえいれば、それはDannie Mayと定義できる気がしています。
ー極論、音楽ではなくとも3人で取り組む活動は全てDannie Mayになりますか。それとも、この3人で作り出す音楽がDannie May?
Yuno:音楽で出会っているから、基本的には後者だと思います。でも、音楽から飛躍させたとしても面白い気がしていて。極端に言えば、3人で畑を所有して「僕はコメで、マサは花、タリラは野菜」みたいな形でも成り立つ気がする。
マサ:めちゃくちゃ面白いな。でも、Yunoが言ってくれたことも分かりますね。このメンバーで一緒にいて、同じ方向に向かっていく。その感覚が重要なんです。
ーDannie May農家も気になるところですが、先ほどタリラさんからお話いただいた通り、皆さんは楽曲ごとに全く異なる表情を見せるレンジの広い音楽集団なわけで。改めて、Dannie Mayをどういう音楽を鳴らしているグループだと捉えているのか、を教えてください。
Yuno:最初の話とも通ずるんですけど、やっぱり僕らは記号に縛られたくないんですよね。「ロックは自由だ」と言っているのに「これはロックだ」「それはロックじゃない」と枠を定義するのは格好良くないし、音楽が自由だからこそ、80億人それぞれに好きなジャンルがあるじゃないですか。で、Dannie Mayはその全員に刺せる音楽を作っていける気がするんですよ。これまで作ってきた70曲くらいの中に、1行でも1音でも刺さる作品があると思っていて。その意味では歩んでいくうちに、誰にでも気になってもらえる音楽性を築いてこれたんです。
ーどんな趣味の人でも「この曲良いな」と思ってもらえる集団になってきた、というか。
マサ:そうですね。実際、コアなお客さんでも好きな曲がバラバラなんですよ。1月にリリースした「未完成婚姻論」で僕らを知ってくれた人も沢山いますけれど、「アストロビート」みたいな軽やかな曲だったり、「異形」のようなダークな楽曲が好きな人もいる。それぞれが全く異なるムードの作品を好きなのにもかかわらず、全員が同じ熱量を持ってDannie Mayに向き合ってくれているんです。
ーその熱源になっているのは何だと思います?
マサ:7年間Dannie Mayの活動を続けてきた中で、その時々で抱いてきた僕らの悩みをファンの方が理解しようとしてくれたというか。「この曲が好き!」みたいな音楽的な共感で集まっているだけじゃなくて、僕らのストーリー性についてきてくれている。なので、友達がフラッと遊びにきてくれた、みたいな感覚もあるんですよ。当然辞めていくバンドもいる中で、さっき話したように「続けること」を大切にしながらここまでこれた。そこに共感してくれているのかなと。
ーよく分かりました。では、ここからは9月23日(水)にリリースされたEP『YOKAI』のお話を。今作は、リリックの随所に社会に対する批判的でアイロニカルな視線を反映しながらも、五つ打ちや和風な音階を駆使した興味深いサウンドメイキングによって、説教臭くないエンターテインメントに昇華していく1枚だと受け止めています。皆さんは『YOKAI』をどのようなEPになったと捉えていらっしゃいますか。
マサ:運動的なEPになったと思っています。そもそもの話になるんですが、僕らは今年に入ってからDannie Mayの雰囲気を維持しながら、最大限に面白い作品を生み出そうとしていて。というのも、僕らの強みである色んな作品を作り出せる器用さは、逆に弱みにもなっているんじゃないかと思ったんですよね。で、そういう一定の枠組みを設けながら作った歌が「未完成婚姻論」だったんですけれど、あの曲にはこれまでとは違う部分でのスパークがあって。
ー「スパーク」というと?
マサ:リファレンスを設けたり、作品の並びを考えた上でピースをハメていくのではなく、短時間でビートを入れ込み、そのビートに対して「こんなこと言えたら、おもろいな」というリリックを足していった結果、純粋に凄く楽しかったんです。納期もギリギリで「明日までに書き終えなきゃ死ぬぞ!」みたいな状況下だったこともあって、とにかく直感的に制作を進めていった。今作はそういう経験を発展させていったという。
ーロジックよりも本能を重視して制作したということですが、仕上がった4曲を並べてみると、結果的にはコンセプチュアルな1枚に見えます。
マサ:楽曲を作る前から、4曲入りのコンセプチュアルなEPにすることや妖怪のテーマ、各楽曲にどんな妖怪のモチーフを割り振るかまでは決まっていたんですよ。むしろ、そのコンセプトがあるからこそ、どれだけ直感的に曲を作っても作品全体の整合性が取れるし、制作の判断軸になってくれたというか。ある縛りを設けた上で、どんなビートを打つか、どんなキックを決めるか、その上にどんなメロディーを乗せるかを模索していく。そこにクリエイティブのやりしろがあるのかなと。
ーここまでの話を踏まえると、妖怪という枠組みの中で音楽を模索していく際の自由度が高かった、という理解になりますかね?
マサ:そうですね。自由度を高くしつつ、困った時にはコンセプトに立ち返り、ロジック的に考える、みたいな方法でした。……一方で、これまではコンセプトに引っ張られて、音楽的にも定まらないし、決定したビートやメロディーにワクワクしないこともあったんです。でも、作曲者が楽しめないとダメなんですよ。やっぱり作り手のトキメキが、聴いてくれた人のドキドキの量を決めると思うので。今作はその縛りを楽しめたことが良かったと思いますね。
ーなるほど。そもそも今作のコンセプトとして、妖怪を掲げたのはなぜだったんですか。
Yuno:まず、このEPはDannie Mayにとって、スタートの1枚にしたかったんですよね。というのも、結成当初から目標にしてきたZepp公演が決まった中で、僕らはここをゴールにしたくなかったので。それこそ、さっきマサが言ってくれたみたいに、より大きな場所を目指さなくてはならないから、ここまで一緒に走ってきたお客さんの想像を、良い意味で超えていきたかったというか。僕ら自身にも発破をかけたかったんです。で、そういうDannie Mayの新しい始まりを示すために、改めて僕らの強みを伝えたくて。妖怪というコンセプトであれば、多様な音楽性をかけ合わせつつ、言葉遊びや皮肉の効いた音楽を鳴らしているDannie Mayを体現してくれると考えたんです。

Yuno
ーDannie Mayの変幻自在っぷりやどこか不気味な音像、掴めなさを、このコンセプトが象徴している?
Yuno:おっしゃっていただいた通り、僕らはあえてなかなか実体を見せないようにしてきたんです。バンドの見解としてイエスもノーも言わず、大々的にスタンスを提示してこなかった。それは3人が3人の世界で好き勝手にやってきたからでもあるんですけど。でも、ここからはその内省的な目線を外に向けて、Dannie Mayの形を発信していく必要があるんですよね。妖怪というコンセプトも『YOKAI』も、そういうキーポイントを担ってくれました。
ーよく理解できました。タリラさんは『YOKAI』を振り返って、いかがですか。
タリラ:正直、僕は2人が話してくれたような深い内容を考えられてなかったんですけど、一方で、アレンジャーとして最終的なサウンドの決定を担っているわけで。今作でも、2人がやっていきたい方向性を伸ばせる音にしなきゃいけないなと。昔は2人が作ってきたものを壊して自由に作り直すようなイメージだったんですが、最近は作曲者の意図を保ちながら、どうすれば人に届きやすいかを考えるようになって。「俺はこうしてみたい!」ではなく、田中タリラのやりそうなアプローチを1つの選択肢として客観視した上で、スピーカーで鳴らした時の帯域やサウンド、グルーヴを選択している。それは大きな変化かもしれません。
ー先ほど、Yunoさんから「Dannie Mayの音楽性や性格を示すために、妖怪というコンセプトを設けた」というお話もありましたが、〈人形だって骨だって なんだったってあなたが 誰かのモノにならなけりゃいい〉と歌う「DAME DAME」をはじめ、今作のリリックはいずれもフラストレーションだらけじゃないですか。鬱憤をぶつけていく歌詞を妖怪と紐づけていくアプローチは、示し合わせたものなんです?
Yuno:いや、お任せしていましたね。
マサ:そうね。でも、示し合わさずに妖怪で4曲を書いて、ことごとく全員が文句を言ってるわけで(笑)。妖怪を可愛らしく昇華したり、いたずらっぽく描いたりすることもできるにもかかわらず、それぞれが怒りに満ちた放出をしている。それは凄く面白いなと。
Yuno:決して自分ができた人間だとは思わないですけど、やっぱり日々ムカつくことも多いから。そういう苛立ちにぶつかっていくことで、消化しようとしているんだと思いますね。とはいえ、歌詞を眺めた時に、結局諦めていないのも面白くて。例えば「どうなったっていい」もその言葉だけ取れば投げ出しているみたいに見えるけれど、実際は何とか戦おうとしているんですよ。
ーその意思の強さは何に由来するものなのでしょう。
Yuno:……なんか、僕らはフランクに活動していますけれど、実は脳筋なんじゃないかなと考えていて。周囲の話を聞いた時に「それは許されないでしょ」みたいに思うことがあるというか、実は共通で抱いているハードルが高いのかもしれない。どこか頑固で諦めてない僕たちのパーソナリティが、自然と歌詞にまとまったんだと思います。
ー「鴉と狐」の〈朝が来るまで もう一回!もう一回!〉なんて、まさしくネバーギブアップの精神が表れていますよね。しかも、その不屈の精神と結びつく形で〈Donʼ t stop the music!〉(「鴉と狐」)、〈マジ音楽ハッピー超☆感謝〉(「どうなったっていい」)と音楽が登場してくるのも興味深いです。
Yuno、マサ、タリラ:あー! 確かに!
マサ:やっぱり僕たちは、音楽的には何でもできるんですけど、社会的には音楽以外何もできない3人なんで。Yunoは仕事が続けられないだろうし、タリラに関してはきっと成立もしないよね?
タリラ:いやー……苦手ですね。
マサ:ね(笑)。言っていただいた通り、確かに音楽が好きなんだと思います。……言い方が難しいんですけど、それこそ音楽に対するリスペクトが見えにくい人もいるじゃないですか。もちろん、周囲への影響や発信を考えることは大切だけど、あくまでも大事なのは音楽だと思うから。やっぱり僕たちはこの3人で音楽がやりたくて結成しているし、どこまでも作品に拘りたいんです。

田中タリラ
Yuno:そうだね。音楽をずっとやっていたいし、僕らの音楽に救われる人が1人でもいてくれたらと思っています。だからこそ、説教がましいことはしたくないし、お客さんを不安な気持ちにさせたくない。悲しい思いにさせないという意味でも、絶対にDannie Mayを辞めちゃいけないんですよ。
ー納得です。EP自体がツアーと連動しているという話もありましたが、10月3日(土)に東名阪ツアー<YOKAI>が開幕し、10月9日(金)には東京・Zepp DiverCityでのワンマンを迎えます。最後に、このツアーにかけている思いを聞かせてください(※本取材はツアー開催前に実施)。
マサ:音楽的な側面で言うと、運動的になった作品がライブにどのようなエッセンスを加えてくれるのかを楽しみにしています。あと、さっきYunoが「ここをゴールにしたくなかった」とも言っていましたけれど、やっぱり区切りにしすぎたくはないので。自分たちなりに次の武器を見つけるような、挑戦の場所にできたらなと。
Yuno:これまでの軌跡を辿って感傷に浸るのではなく、ここを通過点に、本物のDannie Mayを誕生させられるような3本にできればと思っています。やっぱり、僕らはここで立ち止まっているようなバンドではないと確信しているので。
タリラ:これまではファンの方たちと一緒に走ってきたというか、ある種友達みたいな距離感で歩んできたと思っていて。でも、ここから何千人単位で規模を上げていくことを考えると、友達だけじゃなくて、憧れにならなきゃいけないと考えているんです。それは決して遠い存在になるわけではなく、「このバンドを好きでよかった」と思ってもらえるくらいに信頼されるバンドになることだと思う。Zeppが似合うことはもちろん、その先の大きなステージも想像してもらえるライブにしたいです。
<リリース情報>

Dannie May
配信EP『YOKAI』
2026年9月23日(水)リリース
=収録曲=
1. DAME DAME
2. どうなったっていい
3. ぬらり
4. 鴉と狐
<ライブ情報>
Dannie May TOUR 2026「YOKAI」
10月3日(土)愛知:NAGOYA CLUB QUATTRO
10月4日(日)大阪:BIGCAT
10月9日(金)東京:Zepp DiverCity
※全公演SOLD OUT
公式サイト:https://danniemay.com/
