カツオ水揚げ量日本一の街、宮城県気仙沼市。9月19日に市内で「戻りかつお祭り」が開催され、藁の火で焼かれたカツオをお目当てに、多くの人々が来場した。

刺身やたたきで食べることの多いカツオ。薬味にはショウガやニンニクを合わせるイメージが強いが、本場・気仙沼ではどんな食べ方をしているのだろうか。気仙沼で水産事業と観光事業を行う阿部長商店の代表取締役社長・阿部泰浩さんにお話を伺った。

  • 阿部長商店・阿部泰浩さん

    阿部長商店・阿部泰浩さん

初ガツオから戻りガツオまで、気仙沼では長く旬を楽しめる

「戻りかつお祭りは前年(2025年)から始めましたが、その時は無事に開催できるか危ぶまれるほどの不漁でした。今年は逆に豊漁ぶりが報道されて、人が集まってくれたのが嬉しいです」

会場には多くの来場者が詰めかけ、阿部社長も手応えを感じている様子。では、「気仙沼のカツオ」にはどんな特徴があるのだろうか。

  • 雨続きの9月中旬に少しだけ見えた気仙沼漁港の青空

    雨続きの9月中旬に少しだけ見えた気仙沼漁港の青空

気仙沼では、6月頃に北上する「初ガツオ」から、秋に南下する「戻りガツオ」まで、初夏から秋にかけて長くカツオを楽しめるという。初ガツオは身が締まり、比較的あっさりとした味わい。一方、北の海で脂を蓄えた戻りガツオは、より濃厚な風味になる。季節によって味わいの違いを楽しめるのも、気仙沼ならではだ。

また、水揚げされたばかりの生鮮カツオは、もちもちとした食感としっかりした旨味も特徴。鮮度が落ちやすい魚だからこそ、産地で味わう醍醐味は大きい。

「マグロに近い」「ショウガよりワサビが合う」気仙沼のカツオ

美味しいカツオの選び方にもポイントがある。阿部社長によると、脂の乗り具合を見るなら「背」の身、鮮度を見るなら「腹」の血合いが目安になるという。「背」の身は、脂がしっかり乗っているものほど白っぽく見えやすい。一方、「腹」は脂の乗り具合が分かりにくいため、血合いの色が鮮やかかどうかを見るとよいそうだ。

  • 「背」の身は直線的で細長い見た目

    「背」の身は直線的で細長い見た目

  • 「腹」の身は平べったく、凹みがある

    「腹」の身は平べったく、凹みがある

また、カツオを刺身で食べるなら、やや厚めに切るのがおすすめ。食べごたえが増し、カツオの旨みをしっかり感じやすくなるという。たたきや藁焼きは、表面を焼くことで香ばしさが加わり、脂ののった戻りガツオもさっぱりと食べやすくなる。濃厚な風味と、レアな身の食感を同時に楽しめるのも魅力だ。

  • 「戻りかつお祭り」で、カツオの身を藁焼きにしている様子

    「戻りかつお祭り」で、カツオの身を藁焼きにしている様子

そして薬味にも、気仙沼ならではの特徴がある。カツオにはショウガやニンニクを合わせるイメージが強いが、現地ではワサビを添えることも多いという。

  • 気仙沼の食堂で食べたカツオの刺身にはワサビが添えられていた

    気仙沼の食堂で食べたカツオの刺身にはワサビが添えられていた

「気仙沼のカツオは新鮮でくさみが少ないので、ショウガやニンニクよりワサビの方が合うんです」

加熱、お酒のお供、加工食品…さまざまなカツオの食べ方

気仙沼のカツオは、刺身やたたきだけでなく、加熱料理でも楽しめる。脂がのった身は火を入れても比較的やわらかさを保ちやすく、竜田揚げやレアの「カツオカツ」といった食べ方もあるという。

「普通のカツオは熱されるとギュッと身が固くなりますが、気仙沼のカツオは肉の繊維に脂がからんで、やわらかさを保ちます。それを利用して、竜田揚げやレアの『カツオカツ』で食べることもありますね」

  • 気仙沼では豪勢な定食のお供にもカツオが欠かせない

    気仙沼では豪勢な定食のお供にもカツオが欠かせない

市内の飲食店では、刺身やたたきのほか、寿司、カルパッチョ、丼物、定食など、さまざまな形でカツオを味わえる。また、地酒との相性も気仙沼ならでは。阿部社長によると、地元の老舗蔵元「男山」「角星」の日本酒は、日常的にカツオに親しむ土地柄もあって、カツオと合わせやすいという。

  • 気仙沼「男山本店」で購入した日本酒

    気仙沼「男山本店」で購入した日本酒

気仙沼のカツオは、土産として持ち帰ることもできる。阿部長商店では「具だくさんの炙りかつお汁」や「かつおとたけのこの柔らか煮」などの加工品を展開。汁物や煮物でも、カツオの旨みややわらかな食感を楽しめるそうだ。

  • 炙りかつお汁のパック

    炙りかつお汁のパック

  • かつおとたけのこの柔らか煮

    かつおとたけのこの柔らか煮

気仙沼のカツオを外部に広める取り組み

カツオ以外にもサメ・メカジキ・マンボウなど、南北からの海流によって、海産物に恵まれている気仙沼。最後に阿部社長へ、これからの気仙沼の水産業や産業がどこへ行くかを質問した。

  • 気仙沼の小売店で生カツオと鮮魚を発見

    気仙沼の小売店で生カツオと鮮魚を発見

「気仙沼は食を求めて多くの人が訪れる地域。水産と観光を両輪に、今後も栄えていく体勢を構築したいですね。気仙沼の魅力をどう外部発信するか模索中で、その一つが『戻りかつお祭り』。気仙沼のカツオの知名度は必ずしも高くないので、より一層、気仙沼のカツオや海の幸をアピールしていきたいですね」

「カツオのまち」として長い歴史を持ちながら、その魅力をあらためて外へ発信している気仙沼。刺身やたたきだけではない食べ方を知ると、カツオの楽しみ方もぐっと広がりそうだ。