
1976年、ロンドンの小さなレコード店から始まり、設立50周年を迎えた〈Rough Trade〉。その半世紀の歩みを間近で見つめてきた二人にとって、このインディ・レーベルを象徴する名盤とは何なのか。創設者ジェフ・トラヴィスと共同経営者ジャネット・リーに、それぞれ10枚ずつ選んでもらった。ここでは、そのうち5枚ずつを本人たちのコメントとともに紹介する(残る5枚ずつは、以下のイベント東京会場にて紹介予定)。
9月30日には大阪・Yogibo META VALLEY、10月1日には東京・Spotify O-EASTで、50周年記念イベント「ROUGH TRADE 50TH ANNIVERSARY」が開催される。レーベルの現在を担うcarolineとMy New Band Believeが出演し、ジェフとジャネットもスペシャルゲストとしてDJセットを披露する。ぜひ会場で、二人の選曲に耳を傾けてほしい。
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ジェフ・トラヴィスが選ぶ〈Rough Trade〉の名盤

ジェフ・トラヴィス(Geoff Travis)
1952年、ロンドン生まれ。〈Rough Trade〉創設者。ケンブリッジ大学で英文学を学び、教師を経て、1976年にロンドン西部でレコードショップ「Rough Trade」を開店。その後レーベルを立ち上げ、ザ・スミスをはじめ数々の重要アーティストを世に送り出した。
ザ・レインコーツ『The Raincoats』(1979年)

「女性は空の半分を支えている」と言うように、女性は、男性と平等に扱われるのが当然だと思っていました。彼女たちはザ・スリッツに刺激を受けて楽器を手にし、自分たちの音を鳴らし始めたんです。ラフ・トレードのショップの近くを拠点にしていて、アナ・ダ・シルバやマネージャーのシャーリー・オロクリンが店のカウンターに立つこともありました。僕とメイヨ・トンプソンは、ケンブリッジのSpaceward Studiosで彼女たちをプロデュースする機会に恵まれました。中でも僕が好きだったのは、パルモリヴがまるで冥界から解き放たれたばかりの精霊のように、ドラムを激しく鳴らしているのを聴くことでした。
スクリッティ・ポリッティ『Songs to Remember』(1982年)

マーク・E・スミス(ザ・フォール)が以前、「スクリッティにはロックンロール最高のリズム・セクションがいる」と僕に言ったことがあります。その意味はよく分かりました。ドラムのトム・モーリーとベースのナイアル・ジンクスは、本当に強力なコンビでした。テクニックをひけらかすタイプではなく、とにかくグルーヴが素晴らしかったんです。グリーン・ガートサイドは、曲作りにもギターにも言葉にも、そして理論的なアイデアにも魔法をかけるような人でした。そして、あの甘く柔らかな歌声。彼の音楽がさらに完成された形になるのはもう少し先のことですが、この時点ですでに、ウェールズはまたしてもシーンの先頭を走っていました。
ザ・スミス『The Queen Is Dead』(1986年)

作家のイアン・レスリーがポール・マッカートニーについて語ったように、ザ・スミスも何より音楽そのものが本当に優れたバンドでした。彼らはバンド活動をきちんと仕事として捉えていて、必要な時には必ず期待に応えていました。ジョン・ピールのセッション用に新曲が必要なら、その数日前に書き上げてしまう。ジョニー・マーが新しい曲を録音したカセットをモリッシーに送り、モリッシーが歌詞を書く。そうして、またひとつ名曲が生まれるんです。
アーサー・ラッセル『World of Echo』(1986年)

僕の大好きな音楽メディアFACTは、この作品を80年代最高のアルバムに選んでいます。僕はニューヨークでアーサーに会い、アメリカでこのアルバムをリリースしていた〈Upside〉からライセンスを受けることができました。今も彼が生きていて、その唯一無二の音楽が、これほど多くの音楽通から愛され、敬意を集めていることを知ることができたらと思います。きっと一瞬は喜んだでしょう。でもすぐに、次のプロジェクトや、まだ完璧じゃないミックスのことで頭がいっぱいになっていたでしょうね!
マジー・スター『She Hangs Brightly』(1990年)

デヴィッド・ロバックとホープ・サンドヴァルの組み合わせから生まれた、魔法のようなアルバムです。その後、多くのバンドが受け継いでいくことになるドリーム・ポップのひとつの型を作り上げました。彼らを代表する曲のひとつ「Halah」に加え、スラップ・ハッピーのカバーも収録されていて、その選曲のセンスも素晴らしい。初めて彼らに会ったのは、ロサンゼルスのRoosevelt Hotelにある、デヴィッド・ホックニーが手がけたプールのそばでした。二人はとてもシャイで、それと同じくらい魅力的な人たちでした。
ジャネット・リーが選ぶ〈Rough Trade〉の名盤

ジャネット・リー(Jeannette Lee)
ロンドン出身。70年代にパンク・シーンの拠点Acme Attractionsで働いたのち、ジョン・ライドンに誘われパブリック・イメージ・リミテッド(PiL)に参加。マネジメントや映像面にも関わり、1981年のアルバム『The Flowers of Romance』では自身のポートレートがジャケットを飾った。80年代後半にジェフ・トラヴィスと合流し、現在まで〈Rough Trade〉を共同で率いている。
ザ・ストロークス『Is This It』(2001年)

私たちが初めて彼らのライヴを観たのは、ニューヨークから北へ1時間ほどのニュージャージーにある小さなバーでした。客は20人ほどしかいなかったと思います。小さなステージで演奏する彼らに興味を示していたのは、私たち2人だけでした。目の前で起きていることが信じられませんでした。ここ何年も観たことがないほど、完成されたロックンロール・バンドだったのです。その後、私たちが彼らをUKに連れて行き、初めてのライヴを行う頃には、「ロックンロールの新たな始まり」と称賛されていました。ロックンロールの新しい時代が始まる瞬間でした。そして、その言葉どおりになりました。
ザ・リバティーンズ『Up the Bracket』(2002年)

ザ・ストロークスが、1年にも及ぶリハーサルの成果なのか、最初から完璧に出来上がっていたバンドだとすれば、対照的にザ・リバティーンズは、混沌と興奮をまとって登場しました。曲は素晴らしく、演奏はとにかく最高。耳に焼きつくメロディと、磁石のように人を惹きつけるピートとカールの愉快な掛け合い。その勢いは一瞬たりとも途切れず、実際に観なければ分からないほど強烈なバンドでした。
キャロライン『caroline』(2022年)

ロックンロールであり、フォークの旋律でもあり、クラシックでもあり、そして深い青を思わせる音楽。キャロラインの中心メンバーであるキャスパー、ジャスパー、マイクの3人と、ロンドンのRoyal Festival Hallのロビーに座り、〈Rough Trade〉からアルバムを作るというアイデアについて話した日のことは、今でもよく覚えています。本当に素晴らしい一日でした。彼らが、分散や矛盾、断絶を大切にしているところに惹かれます。現代の音楽シーンで活動するバンドの中でも、最も興味深く、刺激的な存在のひとつです。
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マイ・ニュー・バンド・ビリーヴ『My New Band Believe』(2026年)

かつてブラック・ミディで活動していたキャメロン・ピクトンが、この名義で発表した最初のアルバム。その想像力の広がりには本当に驚かされました。楽曲の素晴らしさはもちろん、驚異的な技巧を感じさせるアコースティックの演奏、美しいストリングス・アレンジ、そしてプロジェクト全体から伝わってくる大きな野心。そのすべてが大好きです。音楽学校を出たばかりの18歳だったキャメロンが、今のような成熟したアーティストへと成長していく姿を見てこられたことは、大きな喜びでした。その場その場で自分自身のルールを作りながら進んでいく、彼の発明する力、大胆さ、創造性は、今もまったく失われていません。
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ギラ・バンド『Pugnello』(2026年)

これまでで最も刺激的で、頭の切れるアイルランドのバンド。彼らの音楽には、圧倒されるようなスリルと力強さがあります。ダニエル・フォックスは、私が最も好きなベーシストのひとりです。マーク・E・スミス以来、ダラ・キーリーほど独創的で、ユーモアにあふれ、辛辣で、しかも自分自身をさらけ出すように正直な歌詞を書く人はいなかったと思います。世界でもっと広く評価されてしかるべきバンドです。
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ROUGH TRADE 50TH ANNIVERSARY
2025年の初来日公演も各地ソールドアウトとなったロンドンの8人組carolineと、元black midiのキャメロン・ピクトンによる新バンドMy New Band Believeが、それぞれフルセットで出演。さらにRough Trade創設者のジェフ・トラヴィスと、共同経営者で元PiLのジャネット・リーがDJとして来日。
2026年9月30日(水)大阪・Yogibo META VALLEY
2026年10月1日(木)東京・Spotify O-EAST
OPEN / START:18:00
チケット:前売:10,000円(税込/別途ドリンク代)
※未就学児童入場不可
公演詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15803