帝国データバンクは2026年9月3日、「TDB景気動向調査」の2026年8月調査結果を発表した。本調査は2026年8月18日から8月31日、全国2万2,060社(有効回答企業1万560社)を対象に、インターネット調査にて実施された。
国内景気は4カ月連続で改善、AI・半導体需要と夏の消費が追い風
2026年8月の景気動向指数(以下、景気DI ※)は44.6となり、前月から1.0ポイント上昇した。売り上げの持ち直しやAI・半導体関連の需要拡大を軸に、製造から小売まで幅広い業種で景況感が上向いた。
お盆休みにともなう帰省や旅行、外食などの季節需要が個人消費を下支えしたほか、AI関連需要が機械や電気機械、情報サービスなどに波及した。また、円安の一服や夏場の電気・ガス料金支援も家計や企業の負担を和らげ、企業規模を問わず幅広い地域で景況感が改善した。一方、各地の豪雨など自然災害による生産・物流、観光への影響に対する懸念や、仕入単価の高止まり、人手不足は景況感の重荷となった。
今後の景気は緩やかな改善を見込む
今後は、責任ある積極財政や令和8年熊本地震からの復旧・復興、最低賃金の引き上げが企業活動と家計の実質購買力を下支えするとみられる。また、AI関連需要が設備投資を後押しすることも期待される。
一方、中東情勢にともなう原油高は物価や物流費を押し上げるほか、長期金利の上昇は設備投資や住宅投資の重荷となる可能性がある。こうした下振れリスクを抱えながらも、今後の景気は緩やかな改善が見込まれる。
10業界中8業界が改善、製造業の半導体関連需要が好調
業界別では、10業界中8業界が改善し、2業界が悪化した。製造業の生産・受注の増加や公共工事、設備関連需要、帰省・観光などの季節需要が幅広い業種に波及した。一方、原材料費や人件費の上昇、節約志向などが引き続き重荷となった。
『製造』は前月比1.3ポイント増の45.6となり、4カ月連続で改善した。「電気機械製造」は同1.2ポイント増、「機械製造」は同0.6ポイント増、「輸送用機械・器具製造」は同3.8ポイント増となり、それぞれ4カ月連続で上向いて50台に上昇した。特に半導体、AI・データセンター、自動車関連などの受注増が好材料となった。
「パルプ・紙・紙加工品製造」は同1.7ポイント増となり、段ボール箱製造などの復調を背景に10カ月ぶりに40台を回復した。
『運輸・倉庫』は同1.9ポイント増の43.8となり、4カ月連続で改善した。タクシー利用などの旅客需要は、暑さやお盆の帰省客による利用増を背景に堅調に推移。トラック輸送も製造業や卸売業の荷動きに支えられた。安定した取扱量を背景に、倉庫関連も堅調との声が聞かれた。
一方、住宅関連や米穀類の荷動きの弱さ、長期休暇による稼働日数の減少などは下押し要因となった。
『小売』は同1.4ポイント増の38.7となり、3カ月ぶりに改善した。エアコンなどの季節需要が押し上げた「家電・情報機器小売」は同2.6ポイント増となり、2カ月ぶりに上向いた。「繊維・繊維製品・服飾品小売」も同2.4ポイント増となり、厳しい環境ながら夏物需要に支えられて3カ月ぶりに復調した。「飲食料品小売」は同0.2ポイント増となり、帰省客や観光客による土産品などの購入が景況感を押し上げた。
ただし、物価高にともなう節約志向や買い控え、仕入価格や人件費の上昇などの影響は引き続きみられた。
『サービス』は同0.8ポイント増の47.5となり、3カ月連続で改善した。「飲食店」は同2.5ポイント増となり、夏季休暇やインバウンドによる需要増を背景に2カ月連続で改善。「リース・賃貸」もレンタカー需要などに支えられ上向いた。
「旅館・ホテル」は自然災害による予約の取り消しなどが響いたものの、国内の宿泊需要や客単価の上昇を背景に改善した。「情報サービス」は50台を維持し、AI・DX関連需要やシステム開発案件の増加が下支えした。
一方、『農・林・水産』では米価の下落や飼料・燃料・資材価格の高止まりなどが響いた。
企業規模別では3カ月連続で全規模が改善
企業規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」のすべてが3カ月連続で改善した。半導体関連の受注増により『製造』が全規模で好調さを維持したほか、中小企業では夏季商材を背景とした『運輸・倉庫』の改善が目立った。
「大企業」は前月比0.9ポイント増の48.7となり、4カ月連続で改善した。半導体関連需要や電気機械の受注増を背景に『製造』が大きく上昇した。『金融』は資金流入の継続を指摘する声が聞かれるなど、50台を維持した。
「中小企業」は同1.0ポイント増の43.9となり、4カ月連続で改善した。夏季商材などの荷動きが活発化したことで『運輸・倉庫』が大幅に上向いた。『小売』では「自動車・同部品小売」をはじめ、9業種中6業種が改善した。
「小規模企業」は同0.8ポイント増の41.9となり、3カ月連続で改善した。『製造』では、AI・半導体関連需要の恩恵を受けた「鉄鋼・非鉄・鉱業」や「機械製造」など、12業種中8業種が上向いた。堅調な『建設』も全体を押し上げた。
地域別では9地域が改善、九州は熊本地震の影響で悪化
地域別では10地域中9地域が改善し、『九州』のみ悪化した。都道府県別では、改善が36、横ばいが2、悪化が9となった。半導体関連需要の拡大や堅調な輸出が好材料となった一方、熊本地震の影響が『九州』の景況感を下押しした。
『南関東』は前月比1.3ポイント増の47.5となり、3カ月連続で改善した。半導体関連需要を背景に好調な『製造』がけん引したほか、『建設』も「大きな案件が増えている」といった声を背景に5カ月ぶりに50台を回復した。
『四国』は同2.9ポイント増の43.1となり、3カ月連続で改善した。「飲食料品卸売」や「機械・器具卸売」などを含む『卸売』は8カ月ぶりに40台を回復。「公共工事需要が堅調に推移」との声があった『建設』も好調だった。
一方、『九州』は同0.4ポイント減の43.5となり、3カ月ぶりに悪化した。10地域中の順位も2位から5位に低下した。熊本地震による来客・生産・物流の停滞が幅広い業種に響いたほか、「熊本」のDIは同4.9ポイント減の39.1となり、4年6カ月ぶりに40を下回った。
半導体関連は旺盛な需要、コスト高には課題も
2026年8月の『製造』の景気DIは、「電気機械製造」など3業種が50を上回ったほか、精密機械や化学品関連も50近くとなるなど高水準で推移した。在庫需給ギャップは0.1ポイントとプラスに転じ、需給バランスの改善がみられた。
好調な半導体関連の業種では旺盛な需要を示す声が多く聞かれた一方、一部業種ではコスト高を受けた価格転嫁に苦戦する状況もみられた。
※DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。





