「僕の中の“なんとかフィルター”がバキッと壊れた」――TBS系ドラマ『Tシャツが乾くまで』(毎週金曜22:00~)の第8話が、きょう28日に放送。1年間失踪した主人公の夫・充を演じる松山ケンイチが、物語の終盤で自身にも起きた“衝撃”を告白し、「自分の世界だけが正解じゃない」という作品から受け取ったメッセージや、蒼井優ら共演者への思いを語った。
同作は、脚本家・生方美久氏による完全オリジナルストーリー。ある事故をきっかけに、当たり前に続くと思っていた幸せな日常が突然崩れ去った2組の夫婦を通して、“愛”と“秘密”を描く。
松山が演じるのは、主人公・瀬尾咲子(蒼井優)の夫で、喫茶店「ひこうき」のオーナー・瀬尾充。咲子と仲睦まじく暮らしていたが、近所に住む主婦・園田あずさ(夏帆)とバスに乗った後に失踪し、1年間帰ってこなかった。
第7話では、突然帰宅した充の口から、失踪した理由やあずさとバスに乗った理由、第3金曜日にコインランドリーで彼女と会っていた理由が明かされた。これまでつかみどころのなかった充という人物を、松山自身はどのように捉えていたのか。
「充ってかっこ悪くていいんじゃないかな」
生方氏の脚本について松山が感じたのは、一つの言葉が見る人によって異なる意味を持つ面白さだった。
「一つ一つのセリフにいろいろな意味が込められていて、充から見たセリフとさっちゃん(咲子)から見たセリフで違う意味になっている」といい、充が明確な意味を持って発した言葉であっても、そのまま咲子に伝わることは少ないという。視聴者だけでなく、演じる側も「このキャラクターはこういうつもりで話しているんじゃないか?」と考え続けながら撮影しているそうだ。
そんな充について、松山は「どんな人とも仲良くなれる社交性を持ったキャラクター」と分析する一方、社交性の高さは自分自身を隠すことにもつながっていると捉えた。「優しさのようなもので自分の中にある“違う部分”を隠しているキャラクターだとも思いました」と語る。
物語が進むにつれ、充はその“違う部分”と向き合い、「細胞から人間が変わっていくような」変化を見せる。どう表現するべきか悩んでいた松山に、演出の土井裕泰氏がかけたのが「充ってかっこ悪くていいんじゃないかな」という言葉だった。
これが後半の充を演じる大きなヒントになったという。
松山は、大人も「大人」というテンプレートに乗っているだけで、寂しさや傷ついた気持ち、悲しみを感じるのは子どもと変わらないと考える。充も“大人”や“夫”という枠組みの中で、それらしく振る舞っていた部分があった。
だからこそ、後半ではその枠を取っ払う。「充は泣くし、話さなくてもいいことまで話してしまう。“こうあるべき”みたいなものを全部取っ払って、子どものまま大人になってしまった部分を表現したいと思いました」と明かした。
なぜ咲子に“失踪癖”を隠していたのか
充が咲子に自身の失踪癖を明かしていなかったことについて、松山は、第1話から第4話までの充が「夫婦を成り立たせるために必要な“自分の立ち位置”」を強く意識していたのではないかと考えている。
大切な咲子を傷つけず、嫌われないために、自分の本心を隠しておく。松山はそれを充だけの特殊な行動とは捉えておらず、「どんな人でも隠していることってあるような気がするんですよ。コミュニケーションってそういうものだと思うし、言わなくていいことは言わないほうがいいと思っていたと思います」と話す。
その充が、1年の失踪を経て突然咲子のもとへ戻ってきた。
松山は「きちんと自分の話をするために戻ってきたのだと思います」と解釈する。充は失踪癖を明かさなかったことで、結果的にいなくなるという選択をしてしまった。家に戻るまでの1年間は、咲子を大事にする方法を考え続けていたのではないかという。
そして第7話では、嫌われる怖さを抱えながらも、すべてをさらけ出した。それは夫婦生活を終わらせるためでも、続けるためでもない。「自分はこういう人間だ」と話さなければ、2人の関係が“止まったまま”になってしまうことを感じていたのではないかと松山は考えている。
蒼井優に20年来の安心感 中島歩は「初めて見た生き物」
共演者について聞くと、それぞれに印象的な言葉が飛び出した。
咲子役の蒼井とは約20年前から知る間柄。すでにコミュニケーションの土台があるため、「さっちゃんってこうだよね」「充ってこうだよね」と役についてしっかり話し合えることに安心感があるという。「初めましての方だったらこうはいかないので、さっちゃんが蒼井さんで本当によかったです」と信頼を寄せ、「昔から蒼井さんが持つ世界観には引き込まれていましたが、今回もやはりすごい俳優だと思いました」と称賛する。
一方、樹生役の中島歩とは初共演。存在感、声、芝居のすべてに強い個性を感じたそうで、松山は「“初めて見た生き物”みたいな感じだったんです」と独特の表現で振り返る。
宮内役のリリー・フランキーとも中島について話したそうで、長く俳優を続けてきたリリーも、中島のようなタイプには会ったことがないと語っていたという。松山も「誰かと似ていることがないってすごい。それくらい唯一無二のものを持っている方だと思います」と評した。
あずさについては、充にとって「嫌われてもいいし、全部話せる」という安心感を与えてくれる存在。演じる夏帆自身にも、いつも笑顔で「この人だったら何でも話せる、話していいんじゃないか」と感じさせる“何か”があり、「全部を受け止めてくれそうです」と印象を語る。
直人役の高橋文哉については「とても器用」といい、芝居だけでなく、バラエティ番組や普段の会話でもオールマイティーだと感心。ただ、自身が充という人物をなかなかつかみきれなかったこともあり、2人の芝居でもっと“遊び”を入れられなかったことには心残りもあるという。「文哉くんとなら絶対にできるし、面白く返してくれたと思います」と話した。
「自分の世界だけが正解じゃない」
今後、物語はさらに大きく動いていく。充と咲子は結婚するとき、「言いたくないことは言わなくていい」と決めていた。そのため充はさまざまなことを隠してきたが、ここに来て自らそれを話した。その意味も今後明らかになっていく。
松山がこの作品から受け取っているのは、「自分の世界だけが正解じゃない」というメッセージだという。
「リブートもしないし、別班にも行かないし、大事件もありません」としながら、描かれているのは“結婚”や“誰かと一緒に生活する”とはどういうことなのか、そして“相手を大事に思う”とは何なのかという問い。さまざまな考え方があり、どれも否定することはできず、唯一の正解もない。だからこそ松山は、一生懸命に人と向き合い、生きようとする登場人物たちを温かく見守ってほしいと呼びかける。
さらに、「最後まで見たら、見ている人たちの世界も変わるような気がしますし、それこそいろいろなフィルターが壊れるかもしれない」と予告する松山自身にも、撮影を通じて大きな衝撃があった。
「僕もあるタイミングで自分の中の“なんとかフィルター”がバキッと壊れた瞬間があったんです。本当に衝撃でした。それを視聴者の方にも感じてもらえるんじゃないかと思います」
「変わることってちょっと怖いですよね」としながら、「もしかしたら変化や考えが気持ち悪く感じる人がいるかも」とも語った松山。第7話まで咲子が見ていた世界と、充が見ていた世界はこの先どう変わっていくのか。
【編集部MEMO】
松山ケンイチは、1985年3月5日生まれ、青森県出身。俳優。2002年にドラマ『ごくせん』に出演し、その後、映画『男たちの大和/YAMATO』『デスノート』シリーズなどで注目を集める。主な主演作にドラマ『セクシーボイスアンドロボ』『銭ゲバ』、NHK大河ドラマ『平清盛』、映画『デトロイト・メタル・シティ』『聖の青春』『ロストケア』など。『聖の青春』では第40回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、第59回ブルーリボン賞主演男優賞などを受賞した。2026年には映画『ナギダイアリー』、Netflix『俺のこと、なんか言ってた?』への出演も控える。
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