梶浦由記、12年ぶり「FictionJunction YUUKA」再演も、ツアー大宮公演レポート

梶浦由記の全国ツアー<Yuki Kajiura LIVE vol.#22~precious piece~>が2026年8月8日(土)、9日(日)、大宮ソニックシティにて開催。ゲストボーカルとして、声優・歌手の南里侑香が「YUUKA」として出演して2014年以来12年ぶりの「FictionJunction YUUKA」の再演が実現するなど、大いに盛り上がった8日(土)の模様をレポートする。

数々の人気アニメや映画の音楽を手掛ける音楽プロデューサーの梶浦由記。先日8月1日には、ソロプロジェクト・FictionJunctionとしてドイツ・マンハイムで行われたアニメコンベンション「AnimagiC」内で行われた<SACRA MUSIC FES. × AnimagiC 2026>に出演するなど、世界中に熱狂的なファンを持つ梶浦ワールドを体感すべく、この日も多くのファンが集結して、チケットはソールドアウトとなった。

開演時間になり場内が暗転すると、ステージの左右からKAORI、YURIKO KAIDA、 Joelle、LINO LEIA、EMIKO、そしてゲストのYUUKAが二手に分かれて、拍手に迎えられて登場した。半円形になり向かい合うと、YUUKAが歌い出し全員でハーモニーをつける。アカペラによる「silent moon」だ。月明かりのようなスポットを受けながら、水面に映る月を思わせる静かで清廉な歌声が空気を震わせる。盛大な拍手に一礼して6人がステージを後にすると、「overture」が流れ梶浦由記(Pf,Cho)と共にFRONT BAND MEMBERSの是永巧一 (Gt)、佐藤強一 (Dr)、髙橋”Jr.”知治 (Ba)、今野均 (Vn)、赤木りえ (Fl)、中島オバヲ (Per)がステージに上がる(ステージ袖には大平佳男 (Manipulator)がスタンバイ)。軽快なギターのカッティングから始まったのは、インスト曲「Crush」。しなやかな演奏で観客を迎え入れると、ステージ上段に赤木が立ち、堂々たるフルートソロを聴かせた。真っ赤に染まったステージにKAORI、YURIKO KAIDA、 Joelle、LINO LEIAが加わった「Pandora hearts expanded」から、梶浦が静かにピアノを奏で、KAORIがメインボーカルを務める「everytime you kissed me」へと、アニメ『PandoraHearts』の曲が続く。タイトなリズムに支えられて、ピアノ、バイオリン、ボーカルが三位一体となる序盤から、グッと舞台上に引き寄せられた。

Photo by Shinsuke Irihi

MCでは梶浦が、「ようこそお越しくださいました! どうぞ最後までごゆるりと、ご堪能ください。1曲目、アカペラでびっくりしましたか? この素晴らしい歌を歌ってくれた豪華な方々をご紹介したいと思います。このライブでは歌い手のみなさんは、誰かが主役ということではなく、全員が素晴らしい主役ですので、全員をボーカルとしてご紹介をします」と、ボーカリストをそれぞれ紹介した。続いて、この秋から放送が始まるアニメ『魔法騎士レイアース』の音楽を担当していることを告げると、「まだ放送前なんですけど、特別にやっていいですか?って聞かれたら”いいよ”って言っていただけたので」と、作品のBGMテーマ「レイアースのテーマ」が披露された。豪快なドラムを中心に、5人の歌声が重なり壮大な景色を見せる力強い楽曲だ。続いてアプリゲーム『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』より、LINO LEIAがメインボーカルを務める「lighthouse」へ。KAORIのハーモニーから、YURIKO KAIDA、EMIKOの声が加わると、客席では立ち上がりコブシを挙げるファンの姿があちこちに見られ、熱い演奏で会場の温度が一気に上昇した。

イントロで太くリズミカルなベースライン、ドラムのキックが鳴り出すと、ステージ上段にはゲストボーカルのYUUKAが登場して、FictionJunction YUUKAとして発表された「I'm here」を歌い出した。階段を降りステージでKAORI、YURIKO KAIDAと並び歌うと、バンドのグルーヴがさらに観客を興奮させる。落ちサビでスポットを受けて歌うYUUKAに視線が注がれた。梶浦のピアノから今野のバイオリンへと続き「焔の扉」へ。緊迫した演奏に乗せて歌うYUUKAにKAORI、YURIKO KAIDAの声が寄り添う。バイオリンの音色が牽引する勇壮なサウンドが感情を揺さぶり、赤と青に分かれたライティングが情熱と冷静の間を表現していた。

曲が終わると、梶浦が「今回のツアーではFictionJunction YUUKAとしてYUUKAさんをゲストに迎えてお届けしています」と改めて紹介。また、ツアーではステージ上にいる大勢のメンバーの人となりを紹介するために、日替わりでメンバーに「お題」を出しているとのこと。当日が令和8年8月8日”プチプチプチの日”ということで、梶浦自身がプチプチを潰し始めると止まらなくなるように、「これを始めたら時間を忘れて止まらなくなるもの」というお題をYUUKAに投げかけると、答えは「お友だちとお茶をする時間と夜中のドラマ鑑賞」。しばしドラマにまつわるトークが続いた。

Photo by Shinsuke Irihi

梶浦のピアノとYUUKAの歌のみで披露されたのは「六月は君の永遠」。静まり返った場内に、透き通るピアノと歌が広がっていく。ブレスの音、鍵盤に触れるタッチも生々しく、珠玉の1曲で酔わせた。その流れを引き継いだ「暁の車」(『機動戦士ガンダムSEED』挿入歌)ではピアノとボーカルで始まり、バンドのリズムで激しさを増す。KAORIが加わり低いハーモニーをつけて、哀愁漂う世界観を表現した。

YUUKA と入れ替わりで5人のボーカリストがステージに上がったMCでは、先ほどの続きで他のメンバーにも「お題」について質問を続行した。「寝ること」(LINO LEIA)、「お絵描きと”Call of Duty”をはじめとするゲーム」(EMIKO)、「料理などの家事」(KAORI)、「毎日違う動画を追いかける」(YURIKO KAIDA)、「鳥さんと遊んでいる時間」(Joelle)と、それぞれ個性溢れる回答。さらにバンドメンバーの回答は、「宅録」(髙橋)、「靴磨き」(佐藤)、「パーカッションについて考える」(中島)、「麻雀」(今野)、「アレンジ、音作り」(是永)、「読書」(赤木)、「Wikipediaを見ること」(大平)と、梶浦が代わりに紹介。梶浦自身は、「私はわりと何か始めるとのめり込む方なんですよ。だから私の話は語り始めると長くなって割愛します」と観客を笑わせた。

ライブは、8月28日に公開される『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』主題歌となる新曲「彼方」の披露で再開。疾走感溢れる爽やかなメロディが、5人の歌声で大空に駆けるようなサウンドスケープを描き出した。続けて、同映画からもう1曲演奏。劇中のBGMはあまりタイトルをつけずに「M1、M2、M3……っていう風に作っていく」とのことで、「まだタイトルがついてない”M6”でお届けしたいと思います」と紹介して「ワルプルギスの廻天」の劇伴バトル曲を披露。激しい演奏とスキャットが緊迫感を演出した。そのまま『魔法少女まどか☆マギカ』より、インストナンバー「Numquam vincar」が飛び出した。バンドはスリリングなアンサンブルでキメを連発、是永がエキサイティングなギターソロでカオティックな世界へと導いていく。圧倒的なド迫力の演奏を終えると、ドッと大歓声が沸き起こった。

EMIKOがステージ上段に姿を現して、ジャングルビートに乗せた「black rose」が始まると、客席は総立ちに。バイオリンのメインリフ、パーカッションが興奮を煽り、EMIKOがシャウトすると歓声が上がって大盛り上がりに。TVアニメ「鬼滅の刃 竈門炭治郎 立志編」エンディングテーマとしてLiSAが歌いヒットした「from the edge」では、躍動する演奏と歌に合わせてステージと客席が煌々とした灯りで照らされて駆け抜けた。

Photo by Shinsuke Irihi

「メロディにあるポイント、子音の組み合わせた架空の言語、”造語”で歌っている曲が何曲もあります。造語にしておくと、悲しいシーンに流れると不思議と悲しい曲に聴こえたり、怒ってるシーンで流れると怒りの曲に聴こえたりしてくるところがすごくいい。もし造語の曲が流れたら、この曲の意味は自分が決めていいんだと思って、架空の意味とか物語を乗っけてください。それも面白かったりします」との梶浦のMCを挟み、インダストリアルな音像が響き渡って「stone cold」へと突入すると、再び客席は総立ちに。5人のボーカリストたちは腕を振り上げステージを縦横無尽に行き交いながら、観客を煽る。ユーロビート要素も感じさせる16ビートで白熱したステージは、ノイジーなギターのイントロが鳴り「ウォ~!」と歓声が上がった「zodiacal sign」でさらに過熱。MCの言葉通り、聴く者の想像力を喚起しつつ体が疼く1曲に、客席は「Hey!Hey!」と声を上げる。パーカッションからフルートへのソロリレー、さらにドラムソロも飛び出してとてつもない盛り上がりで本編を締めくくった。

Photo by Shinsuke Irihi

アンコールでは、アルバム『PARADE』の幻想的な「prologue」から、「Parade」へ。KAORI、YURIKO KAIDA、Joelle、EMIKOが伸びやかな歌声で曲を紡いでいく。さらにKAORI、YURIKO KAIDA、Joelleが澄んだハーモニーから歌い出した「longing」で、畳みかけるリズムに乗せてエモーショナルに歌声を放ち、観客たちをドラマティックに楽曲の世界へと引き込んだ。

2日前の8月6日が誕生日だった梶浦は、この日リハーサル後にみんなにお祝いしてもらったエピソードを明かすと、「SNSでも、お誕生日おめでとうございますというメッセージをいただきました。お誕生日おめでとうって、”あなたが生まれてきたことにおめでとう”って言ってくれてるってことですよ。こんなにありがたくてうれしいことないなと思って。今日ここに来てくださった1人1人のあなたと、お祝いしてくれたメンバー、スタッフ全員が今日ここにいてくれないとこのライブはできなかったし、私も音楽をできなかったと考えると、誕生日に頂いたメッセージをそのまま返したいです。生まれてきてくれて本当にありがとう。あなたがここにいてくれることが私の喜びです。ここにきてくださって、生まれてきてくれて本当にありがとうございます」と感謝を伝え、万雷の拍手がステージに送られた。「そんなあなたに、最後の曲をみんなで演奏させていただいていきたいと思います。全員で、たった一人のあなたにお届けしたいのはこの曲です。聴いてください」との言葉から、YUUKAも加わり全員で「sing a song」へ。ゆっくりとやさしく、心温まる歌唱が、会場中の人々を包み込んだ。

梶浦がメンバーを改めて紹介した後、「たった一人のあなたが、今日の大切なメンバーの1人で、そして今日も音楽を一緒に作ってくださった大切な仲間です。ありがとうございました!」と観客に伝えると、それを見たステージ上のメンバーたちの合図で「そして、梶浦由記!」と会場中が声を合わせて梶浦を称えた。最後は梶浦がオフマイクで「ありがとうございました!」と感謝を伝えて、出演者一同で客席に向かい深々と一礼。盛大な手拍子に送り出されステージを後にして、2時間半にわたり音楽の感動を分かち合ったライブは終演となった。

Photo by Shinsuke Irihi

<Yuki Kajiura LIVE vol.#22~precious piece~>

2026年8月8日(土)大宮ソニックシティ

出演:梶浦由記(Pf,Cho)

ボーカル:KAORI、YURIKO KAIDA、 Joelle、LINO LEIA、EMIKO

ゲストボーカル:YUUKA(南里侑香)

BAND:是永巧一 (Gt)佐藤強一 (Dr)髙橋”Jr.”知治 (Ba)今野均 (Vn)赤木りえ (Fl)中島オバヲ (Per)大平佳男 (Manipulator)

〈8日セットリスト〉

1. silent moon

2. Crush

3. Pandora hearts expanded

4. everytime you kissed me

5. レイアーステーマ

6. lighthouse

7. I'm here

8. 焔の扉

9. 六月は君の永遠

10. 暁の車

11. 彼方

12. ワルプルギスの廻天(M6)

13. Numquam vincar

14. black rose

15. from the edge

16. stone cold

17. zodiacal sign

EN1. Parade

EN2. longing

EN3. sing a song