ウィーザーが語る新たな黄金期 近年屈指の快作『The Gold Album』はいかに生まれたか

ウィーザー(Weezer)の通算16作目となるニューアルバム『Weezer (The Gold Album)』が、ファン歓喜の充実作として大きな評判を集めている。7作目のセルフタイトル作となる今作は、彼ららしいポップネスとギター・サウンドを軸にしながら、バンドとして年齢を重ねること、自らが築いてきたレガシーとどう向き合うかまでを描いた一枚だ。2027年2月には東京2公演、京都、大阪、愛知を巡る単独来日ツアーも決定。リヴァース・クオモ、パトリック・ウィルソン、ブライアン・ベル、スコット・シュライナーの4人が、”史上最もヴァイオレントなウィーザー”を目指した新作の舞台裏を語る。

これまでよりオープンな「新しい空気」

8月21日にリリースされたウィーザーの『The Gold Album』。その中盤で、リヴァース・クオモはステージ上で頭をよぎる思いを、ふと覗かせるかのような瞬間がある。リード曲「C.E.O.」のスポークンワードによるヴァースで、彼はこう語る。〈また90年代風の曲を鳴らしてる/何か新しいことをやれたらいいのに/でも誰もそんなものは聴きたがらない/みんなが欲しいのは定番曲だけ/まあ、責められないよな/初期の作品には特別な何かがあるから。その背後で鳴るギターには、かつての名曲「Undone (The Sweater Song)」を思わせるところがあり、そこまで含めてジョークの一部のようにも聞こえる。だが、実際にはまったく冗談ではない。

リヴァースはこう説明する。「これまでも聞かれたことがあるんだ。たとえば『Beverly Hills』では、どのくらい冗談半分で歌っているのか、とか、〈なんでこいつら、俺の彼女をディスってるんだ?(Whats with these homies dissing my girl?)〉と言うときはどうなのか、とかね。でも、僕自身はまったく冗談半分のつもりじゃない。その瞬間の僕の頭の中を読めたとしたら、本当にそのままの考えが流れていたはずだよ」

「C.E.O.」のコーラスでは〈C.E.O.のお出ましだ〉と歌われるが、ここはもともと〈俺がC.E.O.だ〉だった。どちらのバージョンでもリヴァースが歌っているのは、いわば「Weezer, Inc.」という商業組織のトップに自分がなってしまったことへの居心地の悪さだ。「アーティストでいることとはどうにも相容れない役割を担うようになっていることを嘆いていたんだ」とリヴァースは言う。「みんな曲そのものは気に入ってくれたけど、あの一節だけは誰にも評判がよくなかった。最終的には、それを自分の外側に置くことにしたんだ──パーティーをしらけさせる自分の一部分を、外に切り離したような感じだね」。その過程では、ドラマーのパトリック・ウィルソンが代案として〈俺はC-3POだ〉を提案し、リヴァースもかなり惹かれたという。「あれは本当に気に入ってたんだ」と彼は付け加える。

ギースとの仕事でも知られるケニー・ブルーム(旧名Kenny Beats)とクラス・オールンドが共同プロデュースした『The Gold Album』は、全体として見れば、実のところリヴァースがさまざまなレベルで、これまでのようにすべてをコントロールしようとする姿勢を手放した作品だ。その結果、今世紀に入ってからのウィーザー作品のなかでも屈指のアルバムに仕上がっている。他のメンバーによるソングライティング面での貢献も豊富で、バンド史上初めてパトリックが1stシングル「Shine Again」を作曲したほか、メンバー同士の共作も異例なほど多い。「僕らはいま、これまでよりオープンに、コラボレーションしていこうという新しい空気の中にいるんだと思う」とパトリックは語る。

リヴァースが自分のやり方を変えようと考え始めたのは昨年、バンドが今後公開予定の、現時点では極秘にされている映画を撮影していたときだった。「基本的には、コメディの即興企画みたいなものだった」と彼は言う。「あの期間にこいつらと一緒に仕事をしていたときほど楽しかったことは、これまで一度もなかった。即興で芝居をしたり、ふざけ合ったりしていたんだけど、ものすごく楽しかったんだ。それが終わったときに、『レコード作りもこれくらい楽しくできたらいいのにな。これくらいみんなで作っている感覚があって、お互いのエネルギーに反応し合いながら、その場で一緒に何かを生み出していけたら』と思った。だから今回のレコード制作には、こいつらと同じくらい楽しむことを目標に臨みたかったんだ」

原点回帰の獰猛なギターサウンド

パトリックは、クリックトラックを使わずに自分のドラムパートを録音することを強く主張し、それを実現させた。2026年ではほとんど耳にしないようなアプローチだ。「今の音楽は、プログラミングされて、過剰にコンプレッションがかかったものがあまりにも多い。そういう音を聴くと、僕は一瞬で興味を失ってしまう」と彼は言う。「クリックトラックに合わせずに演奏すると、独特のタイトさが生まれるんだ。ジェームス・ブラウンの録音には、クオンタイズされた音楽にはない種類のタイトさがある。もちろん、天才ドラマーのクライド・スタブルフィールド(Clyde Stubblefield)と自分を比べるつもりはないけど──呼吸していて、揺れ動いているのに、それでも全員がものすごく一体になっているんだ」。

パトリックは、『The Gold Album』のサウンドはバンドによる最初の2作のちょうど中間に位置すると考えている。「『Blue Album』の素晴らしいところは、どこにも無駄がないこと。『Pinkerton』はとにかく大仰で、ひたすら爆発的。一方で『Blue Album』は、すごく研ぎ澄まされている。今回の作品は、その2つの理想的な中間地点になっていると思う」

ベーシストのスコット・シュライナーは、そうした変化をすべて歓迎した。制作がどこか事務的で、メンバー同士の関わりも薄く感じられた近年のアルバムと比べれば、なおさらだった。「この作品以前には、バンドの誰とも顔を合わせないまま作ったアルバムがいくつかあった」とスコットは言う。「プロデューサーがオレンジ・カウンティのどこかまで出向いて、パット(パトリック)が録音する。リヴァースはすでに仮のボーカルとギターを録り終えている。ブライアン(・ベル)にはブライアンの時間枠が割り当てられていて、僕は1時に行って、1時から4時までベースを弾けばいい──ひどいときには、スタジオに入った時点でその曲を一度も聴いたことすらなかった。今回は信じられないくらい違ったよ」

クリックを使わないアプローチによって、「本当に久しぶりに、音楽の中にちゃんと生命を感じられた」と彼は付け加える。「パットはたぶん、ずっとそうしたかったんだと思う。それに、これはバンドの中にいながら少し距離を置いて見てきた僕の印象にすぎないけど、リヴァースが歩み寄って、中間地点まで来て、人の話を聞くようになったんだと思う。この2人がうまくやって、一緒に仕事をしているとき、バンドは本当に生き生きするんだ」

リヴァースが最初にスウェーデン人プロデューサーのクラス・オールンドに連絡を取ったのは、ゴーストとの仕事に感銘を受けたからだった。オールンドはちょうどブルームとShow Me the Bodyのレコードを作り終えたところだったため、再び2人でチームを組んでプロデュースすることを提案した。自身のソングクラフトへの細やかな目配りと、リヴァースがブルームについて評する「獰猛で、生々しいエネルギー」を組み合わせようというわけだ。「ケニーは、教養のある不良みたいな雰囲気を持ち込んできた」とスコットは言う。「身長が6フィート7インチ(約201センチ)もある、デカくてがっしりした男だ。見た目からしてかなり威圧感がある──僕はそこが好きなんだ。彼は強烈な存在で、それを裏づける知識も持っているし、大のウィーザー・ファンでもある。本人の言葉を借りれば、”史上最もヴァイオレントなウィーザーのレコード”を作りたかったんだ」

ブルームはギター・サウンドを、デザート・ロックのような重く濁った方向へと押し進めた。そこで秘密兵器となったのが、1940年代製の小さなギブソンのアンプだった。「20世紀半ばのSearsのカタログで買えそうな見た目なんだ」とリヴァースは言う。今回のアルバムには、いつも以上に聴きどころのあるギター・ソロやフィルをふんだんに詰め込んだ。「でも、ボリュームを最大まで上げると、とんでもなく凶暴な音がする。実際、『Blue Album』を作る前、リック・オケイセックと仕事を始める以前の僕らのギター・サウンドにかなり近いんだ。ホームに帰ってきたような感覚だった」

リヴァースは、2014年にベスト・コーストのベサニー・コセンティーノとデュエットした「Go Away」が、今になってヴァイラル・ヒットしていることに刺激を受け、今作の2ndシングルとなる「We Might As Well Be Strangers」をウェンズデイ(Wednesday)のカーリー・ハーツマンとのコラボレーションにしたと明かしている。ブルームはスタジオ初日からリヴァースにウェンズデイの音楽を聴かせていたため、ハーツマンは自然な人選だった。スコットはデュエットになる前のバージョンをとても気に入っていたため、当初はゲスト・ボーカルを加えることに抵抗があったという。「ファミリーの外から誰かが入ってきて歌い始めると、”僕はこのままリヴァースの世界に浸っていたいのに”って思うんだ」。だが、最終的には考えを変えた。「曲がまったく別の命を持つようになった。今では本当に美しい曲だと思うよ」

アルバムのオープニングを飾る「Say Yes」も、制作の過程で大きく姿を変えた曲のひとつだ。印象的な一節〈僕が生きられるのは、この奇妙な人生ただ一度だけ〉もその中に登場する。「もともとは『School Sucks』というタイトルで、中学生の息子に向けて書いていたんだ」とリヴァースは言う。「〈わかるよ。宿題なんて最悪だし、先生も最悪だし、何もかも本当に最悪だよな。そんなに気にするなよ〉って伝えたかった。でも、誰も僕が〈学校なんて最悪だ(school sucks)〉って歌うのを聴きたがらなかった」。それでも、この曲が根本的に息子へ向けたものであることは変わらない。「僕らは子どもたちにものすごいプレッシャーをかけて、退屈な勉強をやらせるために不安を煽っているんだ」

ツアーの展望、4人でいることの喜び

バンドは9月に「Weezer: The Gathering」ツアーをスタートさせる。同じ月には『Pinkerton』が30周年を迎えるが、ステージ上でも、それ以外でも、特にそれを祝うことは考えていないようだ。「特別な予定があるとは聞いてないな」とリヴァースは言う。これまで同作について時期ごとに評価を変えてきた彼だが、今でも『Pinkerton』を気に入っていることは強調する。「君が最後に僕のどの発言を聞いたのかはわからないけど、今はいいアルバムだと思ってるよ」。一方、ギタリストのブライアン・ベルは2001年の『Green Album』が30周年を迎えたときに、それを祝うことのほうに興味があるようだ。

バンドはすでにツアーの演出やステージ・セットについて話し合いを始めており、毎晩『The Gold Album』から4、5曲を披露する予定だという。「僕ら4人全員が一緒に動いていて、みんな気分もよくて、ツアーに出ることを楽しみにしているなんて、想像できる?」とスコットは言う。「どんなバンドでも、いつもそんなふうだと思う? 全員が同じタイミングで楽しみにしているって、実はかなり大きなことなんだ。僕がこのバンドにいるようになってから、4人がこれほど自然に、前向きな気持ちでひとつになれているのは、今がいちばんかもしれない」

パトリックも同意する。「僕らと同じ時代に登場したバンドで、今の僕らみたいにクリエイティブな面で勢いに乗っているバンドって、ほかにいるかな? 滞っていた”気”が、ようやく流れ始めたような感覚なんだ」

リヴァースは、もっとシンプルにこう表現する。「こいつらと一緒に過ごして、ふざけ合うのが本当に好きなんだ。若い頃って、そういう時間があることを当たり前に思ってしまうんだろうね。今は、彼らの存在を本当に大切に思ってる」

ブライアンはインタビューに臨むにあたって、アルバム・タイトルに込めた考えをあらかじめ書き留めてきていた。「”ゴールド”は、必ずしも普通そこから連想するような意味じゃない。ヒットを出すことや、お金、金ピカになることを表しているわけじゃないんだ」と、彼はメモを読みながら言う。「むしろ『Stay gold』という言葉に近い。映画『アウトサイダー』でポニーボーイが口にする言葉で、要するに”物事に驚き、心を動かされる感覚を失わずにいること”という意味なんだ。このアルバムは、バンドとしてその感覚を取り戻すことについての作品なんだ」

From Rolling Stone US.

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ウィーザー

『Weezer (The Gold Album)』

発売中

詳細:https://wmj.lnk.to/Weezer_Gold

WEEZER | ウィーザー 世界中で愛され続けるロック・アイコン、ウィーザー!16作目のスタジオ・アルバム「ウィーザー (ゴールド・アルバム)」と共に待望の単独来日決定!

ウィーザー来日公演

2027年2月12日(金)・2月13日(土)東京ガーデンシアター

2027年2月15日(月)ロームシアター京都 メインホール

2027年2月16日(火)大阪・Zepp Osaka Bayside

2027年2月18日(木)愛知・COMTEC PORTBASE

特設サイト:https://www.creativeman.co.jp/artist/2027/02weezer/