本作で真白を演じたCoccoをはじめ、岩井作品にはミュージシャンが俳優として出演することも多い。

ただし、ミュージシャンに共通する何かを基準に起用しているわけではなく、それぞれの人物が持つしぐさや声色、人柄といった「役者以前の人としての情報」を見ながら、役やセリフを合わせていくという。

「そこにうまくピタッとはまってくれれば、それほどトラブルなく終わる。あとは、こんなこともできるんだというプラスアルファを、どんどんもらっていけばいいと考えています。Coccoさんも本業は役者さんではありませんが、本当に素晴らしく演じてくれました」

自らが思い描いた通りの芝居よりも、役者から少し違ったものが出てきた時のほうが、かえってその人にしか演じられない人物になっていくことがあるという。

「微妙に想定していないものが出続けると、すごく新鮮で、“この人で良かった”という感じになります。意外と、少し違っているほうが、演じてもらっているこちらとしては楽しいです」

Coccoが生み出した真白も、岩井監督の想定を超えながら、ほかの誰にも代えられない存在になっていった。

  • (左から)Cocco、黒木華

    (左から)Cocco、黒木華

スマホが映像制作に与える影響「なかなか厄介」

本作には、SNSでの出会いやオンライン家庭教師、結婚式の代理出席、レンタルファミリーなど、当時はまだ目新しさのあったサービスが次々と登場する。10年後の現在では身近になったものも多いが、決して未来を予測して描いたわけではなかったという。

そうした中で岩井監督が映像作品を手がける中で感じたのは、スマートフォンが人々の生活を急激に変えていくことへの戸惑いだった。

「電話をするにしても、天気予報を見るにしても、ニュースを見るにしても、それまであったいろいろな人の行動様式や雰囲気が全部スマホに収れんされていきました」

画面を見つめるだけで多くの行動が完結するスマホは、映像を撮る側にとって画変わりしにくく「なかなか厄介なもの」だった。それでも、「そのような状況を飲み込んで、さらに面白くしていく。ちょうどその入り口にあった作品だったような気がします」と前向きに捉えているそうだ。