LANAが示した、弱さを隠さないカリスマの条件──人を救うのは、強さだけじゃない

LANAのライブには、彼女のファッションやメイクをまねた多くの女性ファンが詰めかける。あらゆる情報があふれ、選択肢が無数に存在する一方で、自分に必要なものを見失いがちな時代。そして、先行き不透明でSNSに揺さぶられ、息苦しさを感じやすい現代において、そこには単なる憧れだけでなく、「LANAみたいなファッションをして、LANAみたいなメイクをして、LANAみたいなマインドでいれば大丈夫」と思わせる、セーフスペースのような安心感がある。

【ライブ写真】「LANA LIVE TOUR 2026 ”DIAMONDS IN THE SKY” FINAL」

2026年8月5日。LANAにとって初となる国立代々木競技場 第一体育館公演の2日目として「LANA LIVE TOUR 2026 ”DIAMONDS IN THE SKY” FINAL」が開催された。会場を見渡すと、10代から20代前半の女性だけでなく、男性ファンや子ども連れの家族の姿も目立つ。以前よりも客層が広がっていることがうかがえた。強気で力強い一面を見せつつも、弱さや葛藤も隠さずにさらけ出す姿勢は、LANAと同世代である10代から20代前半のファンだけでなく、幅広い層に強い共感を呼んでいることを実感する光景だ。

「DIAMONDS IN THE SKY」というコンセプトに沿って、4月30日から6月13日まで全国のZeppなどを巡った公演に続き、ステージセットには飛行機が組み込まれ、オーディエンスはLANA AIRの乗客だ。ライブ前には「最高の空の旅をお楽しみください」という搭乗手続きのアナウンスが流れ、ステージへの期待を高める。暗転すると、「LANA!」というたくさんの歓声が上がり、スマホがステージに向けられる。

ステージから伸びた花道の先にあるセンターステージにピンクの衣装を着たLANAが登場。代表曲「No.5」からライブをスタートさせた。何度も繰り返される「お金で買えるものじゃ足りない 星より輝くものください」というライン。ヒップホップシーン史上最年少で日本武道館ワンマンを実現し、アリーナツアーも行ったLANAの自信が歌われる。タイトルにもなった「No.5」は、〈お気に入りつけてるCOCO No.5〉というラインに表れるように、彼女の華やかさや自己肯定を象徴するものだ。そして同時に、〈お金で買えるものじゃ足りない 星より輝くものください〉と、物質的な価値では測れない、本当に大切なものを求める思いも描かれている。さらに、自分を映し出す鏡に向かって、自分にとって本当に大切なものは何なのかを問いかける。強さと弱さが自然と共存する、LANAの本質が詰まった楽曲を、大勢のオーディエンスがともに歌った大勢のオーディエンスが歌った。続いて「Makuhari」。国内最大級のヒップホップフェスティバル「POP YOURS」による初のオリジナル楽曲だ。曲が終わると会場の至るところから「LANA!」という絶叫にも近い歓声が上がった。オーディエンスはLANAの一挙手一投足から目を離さない。まさにLANAは令和のカリスマだ。

Photo by Masato Yokoyama

「華」の曲中、LANAの後方にたくさんのダンサーとホーン隊が登場。大所帯を引き連れて踊るLANAに喝采が上がる。「Street Princess」ではダンサーが飛行機の整備士に扮し、LANAはピンクのスーツケースを手にする。キュートさとストリート感が融合した、LANAならではのエンターテインメントが繰り広げられていく。

「みんな元気?」と友達のような温度感でオーディエンスに話しかけるLANA。「ツアーファイナルが来ちゃったね。喉乾いた~!」と、1万人を前にしてもあくまでも自然体だ。以前のインタビューでLANAはファンのことを「最強の味方」と称していた。「エネルギーを与え合っている関係性。私は完璧な人間ではないので、等身大でみんなとフィールして良いものを作り上げていっている」と。自らの弱さや傷に共振してくれるファンが集まったライブという空間は、LANAにとってもセーフスペースなのだろう。「(ツアーが)今日で終わっちゃうなんてマジでかったりい!」と叫び、「KATTARINA」へ。「おまえら、嫌いなヤツにかったりいって言ってやれよ! 我慢するんじゃねえよ!」。自分と同じように葛藤を抱えるLANAによるパワフルなメッセージ。ファンにとってもLANAは最強の味方だ。

Photo by Masato Yokoyama

「みんな大切な家族や恋人はいる? 大切な人はいついなくなっちゃうかわからないよね」と前置きして、令和8年熊本地震を受け、「自分は何のためにお金を稼いでいるんだろう?」と考えた末、ツアー収益の一部を被災地に寄付すると伝えた。「見てくれているかわからないけど、みんなに頑張ってほしいから歌います」と言って、中村あゆみの「翼の折れたエンジェル」をカバー。多くの人の痛みに寄り添うような圧倒的な歌声を届けた。

Photo by Masato Yokoyama

グランジーな「Like a Flower」でストリートプリンセスとしての出自を見せつけ、ライブ当日にリリースされたドラマ『一次元の挿し木』の主題歌「Truth in the dark」を披露。シンガーとして新たなフェーズに入ったことを印象づけ、兄・LEXとの「明るい部屋」で「待ち合わせはここ代々木!」と歌い、大歓声を巻き起こしElle Teresaとの「こんな日は」で本編を締めくくった。

アンコールを待つ間、オーディエンスが次々とビジョンに映し出されていったのだが、自分が映ったときの喜びようが尋常ではない。誰一人照れることなく、LANAのライブの一部になれたことが嬉しくてたまらないといった様子で、全身で喜びをあらわにしていた。LANAとファンの強い結びつきを象徴する一幕だった。

アンコール1曲目の、「TURN IT UP」を歌った後、LANAが「ただいま!」と言うと、たくさんの「おかえり!」が上がり、LANAは「かわいい」と口にして微笑んだ。引き続き友達かのように「みんな好きな人いる? 別れた人?」と話しかける。「付き合ってても別れても今日を迎えられたから、Its okay?」と言って、「it's okay」へ。誰かと一緒でも不安を抱え、一人で孤独を感じても、LANAなら同じ気持ちで寄り添ってくれる──そんな安心感が漂った。LANAが「みんなLANAの代わりに歌ってくれる?」と言って客席にマイクを向けるとオーディエンスは「Shawty wassup 言う君 I dont want no 新しい恋は」から始まる、切ない恋心が詰まったパートをシンガロングした。

心底嬉しそうに「みんな歌が上手なんだね」と”最強の味方”をほめたたえた後、「来年も再来年もいっぱい楽しいことしようね。LANAが一番大好きで、みんなが一番大好きな曲で終わるね」と言って、「L7 Blues」へ。同志であるLANAが、高らかに「止まれない てか止まる気ないわ」と宣言し、セルフラブとタフなアティチュードを歌に乗せる姿にオーディエンスは大きなエネルギーをもらったことだろう。傷も痛みもヘイトも燃料に変え、迷いや脆さを抱えたまま逞しく駆け上がっていくLANA。そんな姿は、揺らぎの多い今の時代が求める表現者の姿そのものだ。

Photo by Masato Yokoyama