DISH//、生きることを肯定し、それぞれの光を照らした、ホールツアーファイナル

DISH//にとって、音楽はいつだって”今”を映し出すものだ。自分たちの音や言葉をまとめあげた5thフルアルバム『TRIANGLE』を経て、3年ぶりに生み出されたフルアルバム『aRange』は、100曲以上のデモから”今届けたい曲”を厳選。DISH//ならではの多彩なアプローチとメンバーの歩みが滲むクリエイティブによって、リスナーそれぞれの人生と”ふつうのしあわせ”に光を当てる作品となった。

【画像】DISH//、LINE CUBE SHIBUYA公演(全8枚)

そんな『aRange』を携えて2年ぶりに開催された全国ホールツアー『DISH// HALL TOUR 2026 ”aRange”』は、単なる楽曲の再構築だけにとどまらなかった。同じ曲も、同じ日々も、見つめる角度が変われば違う表情を見せるのだと、聴き手の隣にそっと寄り添うような距離感で、DISH//は誠実に伝え抜いたのである。

本稿では、7月16日(木)にLINE CUBE SHIBUYAで行われた、ツアーファイナルの様子をお届けする。

どの公演であっても、開演直前BGMにもこだわっているDISH//。この日、彼らの意志を代弁したのは、6thフルアルバム『aRange』でラストに収められた「エール」だった。<君の人生を讃えよう>という力強いワードで、これから立ち上がっていく壮大なテーマを提示する。会場が暗転し、幻想的なSEにバトンが渡されると、いよいよショータイムの幕開けだ。

北村匠海(Vo./Gt.)の深いブレスを合図に、「すべての人々の朝に優しく寄り添いたい」をモットーに作られた「朝、月面も笑っている」へ。熱く柔らかな演奏が、自然体に場内を包みこんでいく。下手をすると、薄っぺらくなりかねない<生きてこそ残酷さと戦えるんだ>なんてリリックだって、今のDISH//にかかれば確かな実感が伴った言葉として昇華。ひとりの人間として、ひとりのアーティストとして、着実に進んできた軌跡を感じさせた。

ホーンが華やかな「いつだってHIGH!」へ導かれると、ムードはより一層ポジティブに。ステージに浮かぶ4つのスクリーンに、一人ひとりの顔がアップで切り取られる様は「俺たちがDISH//です」と謳うよう。なだれこんだ「Im FISH//」でも、彼らの勢いは止まらない。楽曲に新たな輪郭を与える『aRange』のエッセンスは、既発曲にも適用されていたのだろう。歌唱にも演奏にもニュアンスをたっぷりとつけて遊び、10年以上前にリリースされた曲を今のDISH//として鳴らす。現在と過去をシームレスに結び、「いつだってHIGH!」では<僕らの物語はイッサイガッサイ愛しいもんだぜ>と証明したのだ。

一呼吸置き、北村は「ファイナルなので、どうなったっていいという気持ちで来ました」と宣言。拍手が途切れるのを待って、アカペラで<泣いて泣いて>と紡ぐと、スラッシャー(DISH//ファンの呼称)が<最後に笑うんだ>と続き、転調が印象的なパンクロックチューン「泣くもんさ」が封切られた。黄昏時のような空間に、<泣いたっていいでしょ/我慢しなくていいでしょ>と優しいエールが響き渡る。「ファンタジーラブコール」では別れに潜む幸せを掬いあげ、「QQ」では抜群のグルーヴを創出。様々なジャンルをフットワーク軽く渡り歩きながら、生きていくうえで大切にしたいマインドをさりげなく手渡した。

「DISH//を好きである以上、今日ここに来ている以上、今日僕らを見ている以上、いつか必ず誰かにヒーローって呼ばれてほしい。そんな仲間たちだと思っています」と告げ、『aRange』のリードソングである「ヒーロー」へ。あえてスクリーンを活用しない演出は、「自分たちの音楽からすべてを感じ取ってくれ」と訴えるよう。白いスポットライトで一人ずつ照らしたり、逆光で半身だけ影にしたり、巧みに操られた照明は視覚的に”ヒーローの生き様”を投影する。<だからさあなたの番だ、救いたい誰かの手を握ってくれ>のフレーズには、「音楽をやっている以上は誰かを救いたい」という彼らの志がありありと宿っていた。

切実な望みを差し出しても、それぞれの生き方を尊重するのがDISH//のスタイル。君なりの生き方でいいと背中を押す「バースデー」、転んだって挫けたっていいと説く「躍りゃんせ」、輝かしい未来へ希望を馳せる「万々歳」と、スラッシャー一人ひとりが選んできた道を抱きしめていく。そうして真正面から感情を投げかけながらも、パフォーマンスだって妥協しない。フロント3人はヘッドセットを装着して、楽器を担ぎながら軽快なステップを披露。ダンスをメインとして始まったグループの背景と、自分たちで切り開いてきたロックバンドたるアイデンティティがピタリと融合している今のDISH//は、ひとつの成熟を迎えたと評するにふさわしい。同時にその佇まいは、自分の心に嘘をつかず進み続ければ、唯一無二の存在になれるのだと体現する。「NOT FLUNKY」で、叫んで飛んで跳ねて、「自分の生き方は自分で決めるのだ」と刻み付けた。

折り返しのMCになると、「いろんな出来事がこのツアー中にあった」と切り出す北村。そして「古くからの知り合いが亡くなってしまったり、人との出会いもたくさんあったりして、いろんな感情の変化があった。そのたびに、意味も景色も全部変わった曲かな」と零し、「死んじゃいないよ」を導いた。これまで外に向けて放たれてきた歌声は、一瞬にして自問自答するかのようなテンションへ沈みこみ、ライブの温度を内側へと引き寄せる。北村の死生観が色濃く表れたナンバーが、喜びも喪失も混ざりあわせながら、この夜の空気を深く塗り替えていった。なかでも<あなたの代わりにもっと生きるから>は鮮やかで、大事な人との約束のような重みを帯びていた。椅子に座りながら、しんみりと聴き入っていたオーディエンスも、「沈丁花」のイントロをキャッチすると、速やかにスタンドアップ。<いつもいつもありがとうね>の大合唱も巻き起こり、多幸感溢れる空気で会場を満たしたのだった。

いよいよライブも終盤戦へ。橘柊生(DJ/Key.)は今年の12月25日にDISH//が結成15周年を迎えることについて触れ、「それだけ続いている我々は、すごくハッピーだと思うんですけど」と、少しばかり強引に次の楽曲を示唆。大切な気持ちを真っすぐ歌にする「HAPPY」へ繋ぎ、ラストスパートに向けてギアを一段上げた。エネルギッシュな演奏、会場中を満たす<ただ>のレスポンス、晴れ晴れしたメンバーの顔つき、どれをとっても圧倒的にブライトだ。<ありがとうと><会いたいんだと><愛してると>と、世界中に届けたい感情をリレー形式でエモーショナルに歌い継ぐ様は、世界平和を成し遂げそうなほどにピースフルだった。

その後も、<生きなきゃダメだろ>と魂を奮い立たせる「プランA」、強い望みが世界へ繋がっていくさまを描く「JUMPer」と、生命力が漲った楽曲を投下。メンバーと共に掲げられる拳、跳ねあがる会場、沸きあがる歓声は、ライブが大熱狂の渦中にあることを物語る。間髪空けずに、<これから応応応応応援歌>と伸びやかに放ち、涙をテーマとした「エール」へ。1番と2番のサビでは、スクリーンに客席を映し「ここに映っている君のことを応援しているよ」と謳う一方で、ラスサビではDISH//に切り替え「君には俺たちがついている」とアピールする。「HAPPY」からの流れは、彼らなりの「一緒に生きていこう」というメッセージだったのだろう。熱のこもった音楽の威力は絶大で、「俺たちが、君が重ねてきた日々を丸ごと受けとめる」という説得力に満ちていた。

最後の1曲を前に、北村はアルバムやツアーを通して見つめてきたことを語っていく。『aRange』の制作中は人生を振り返る瞬間がたくさんあったこと、バンドの作品でありながら自分の生き様が表れた1枚になったこと、「過去の自分を笑ってあげられるようになれたら」と願いながらライブを重ねてきたこと。そして、「生きているっていうこの瞬間が一番大事だから。それだけで100点満点」と口にすると、切なくも温かな「diorama」が誘われた。それぞれの孤独を抱きしめながら編まれていく音の粒は、ここまで積み重ねてきた想いを静かに受けとめるように、祈りに似た朗らかな余韻をまとう。「どうか幸せになってくれ」と心からのエールを送り、本編は幕を下ろしたのだった。

アンコールへと転じると、メンバーはライブTに着替えて登場。本編で”生きること”を肯定した彼らは、その先にある”愛すること”へ自然に掘り下げていった。予兆なく「ごはん」のイントロが始まり、ふいに北村が<あのね>と切り出したって、完璧に<なに?>と打ち返せるのがスラッシャー。ほんわかした柔らかな空気が、アーティストとファンが一体となって醸造されていく。

シンプルなポップロックサウンドが清々しい新曲の「アイコトバ」、<愛したい!>のシンガロンが轟く「ファッション★スター」、すべてのエネルギーを放出する「愛の導火線」と、様々な切り口で有り余る愛を展開。ラストには場内一丸となるジャンプで会場を揺らし、華々しいフィナーレとなったのだった。

どの日程もツアー初日のような心持ちで作り上げられてきた『DISH// HALL TOUR 2026 ”aRange”』。その根底に流れていたのは、「どうか生きて、幸せになってくれ」という飾らない祈りだった。同じ楽曲であっても解釈や受け取りかたによって響きかたを変えるように、ありふれた日々もまた、少し視点を変えるだけで新しい景色へと姿を変える。

DISH//がこのツアーで鳴らした”aRange”とは、音楽だけでなく、人生そのものを軽やかに捉え直すアイコトバだったのかもしれない。

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