sumika、日本武道館で鳴らした『Unique』の答え「少数派のあなたを愛したい」

sumikaが7月24日、東京・日本武道館にて、『sumika Live Tour 2026「Unique」』のファイナル公演を行った。本公演は、4月4日の千葉・市川市文化会館から走り出し、全29公演が即完売したツアー『sumika Live Tour 2026「Unique」』の千秋楽であり、2日間にわたる武道館の最終日。会場は超満員、立ち見席を含む9000人の観客たちが詰めかけた。

【画像】sumika、日本武道館公演(全10枚)

開演時刻になると、注意アナウンスが途中でノイズに侵食されたような音声に歪んでいく。「Phoenix」のイントロが立ち上がると、ステージ前面の紗幕がはらりと落ちた。そこに見えるのはゲストメンバーだけで、片岡健太、荒井智之、小川貴之の姿はステージにない。すると、3人はアリーナの客席のなかから現れた。驚く観客たちの中をゆっくりと練り歩き、ひとりひとりと目を合わせ、言葉を交わしながらステージへ向かいライブがスタートした。

続く「Lovers」で、片岡は左右、中央へと視線を配り、フロアの熱をひとつずつ拾い上げていく。曲の途中、小川に五七五を振ると、小川は「武道館 会いたかった すごくね」と返す。ギターを提げた片岡が「飛ばしていくよ!」と繋いだ「伝言歌」で、ゲストメンバーを一人ずつ紹介し、それから客席のほうへ向けて、「あなたも含めて、sumikaです!」と叫んだ。

片岡健太

このツアーの名前について、片岡は語る。「『Unique』ってタイトルを思いついたとき、一番最初に想像したのは、客席のあなたのことでした。sumikaを好きだと言ってくれる人はいても、こうして実際に足を運ぶのは、その1割にも満たない。だから、多数派をノーマルとすれば、今日ここに来ているあなたは、全員アブノーマルなんです。それだと変態っぽくなってしまうので、『ユニーク』と名づけました。少数派のあなたを、愛していけたらいいなと思って」。

キーボードの音色から「ルサンチマンの揺籠」へ。小川もラップで加わり、二人の声が編み合わさる。「今日この日にしか咲かない花は、あなたのクラップでしか咲かない。咲かせてもらっていいですか?」。差し出された手拍子の上に「Flower」が咲く。Dメロを客席が声を合わせて歌い出すと、その音量に片岡のほうが驚いて、「これサビじゃないよ、Dメロだよ」と嬉しさ全開の顔だった。そのまま「春風」が武道館に大切に鳴らされた。

左から、荒井智之、小川貴之

ここで片岡が、一度ステージを離れる。前に出たのは小川だ。「ハイヤーグラウンド」を力一杯で歌うと、「俺たちで、忘れられない日を作ろうじゃないか。これはあなただけに言ってるんじゃない。スタッフにも、ゲストメンバーにも言ってる。ルールは簡単だ――心の底から楽しんで! ソーダのように」と繋ぎ、「ソーダ」を伸びやかな声で歌い上げた。

片岡が、小川に「よかったよ、最高のボーカリスト」と声をかけ、今度はしっとりいきたいと観客に着席を促すと、腰を下ろした武道館に「ナイトウォーカー」が沈み込む。アコースティックギターとキーボードが灯す「Blue」まで、フロアは聴き入った。

ステージには、片岡ひとりが残る。「これぞ、ユニーク。翌日のデートスポットを客席と一緒に決めるMCへ。週末金曜で終演も遅い、遠方から来た人は泊まって翌日遊んで帰る。そんな相談がいちばん多かったという導入から、隅田川花火大会、すみだ水族館、そしてメンバーの地元・川崎の河原でのキャッチボールまで、候補が次々に挙がっていく。ひとしきりやわらかなコミュニケーションを図ると、片岡はアコースティックギター一本で「ゴーストライター」を弾き語った。

じっと聴き入っていた観客たちの空気が反転するような重心の低いビートに、サックスが割って入る。「いいライブの定義は、この境界線が曖昧になること」。片岡がそう言い切って放たれた「VINCENT」で、オーオオーオーの合唱が渦を巻いた。畳みかける「運命」では、9000人の手がいっせいに左右へ振れる。「これでツアーファイナルになっちゃうの、ちょっと物足りないな」。小川は、「もっと近くで見たいな、お邪魔します」と、また客席へ。アリーナだけでなく1階席まで練り歩きながらの「ふっかつのじゅもん」へ。ゲストメンバーもステージ前方までせり出して、線という線をどんどん薄めていく。曲中に挟まれたソロの応酬も、それぞれの音の個性で会場を煽り立てた。「もっともっと、いけるはずだ」。限界の一歩先へ、全力で踏み込んでいく。

「ライブでしかできないことをやろう」と声を交わして「Starting Over」へ。それまでのカラフルな照明が引き、白いバックに光が満ちる。この夜くり返し口にしてきた「境界線が曖昧になる」が、照明ごと目の前に立ち上がっていく。そして本編の締めくくり、片岡は「心臓がバクバクしすぎて、倒れそうです。生きてるって感じるし、生きててよかったなって思ってます」と語り始めた。

生きててよかったと思えるのは、楽しさや嬉しさが想像を超えていくとき。その原材料は、たぶん反対側にある感情――悲しみや、寂しさなのではないか。片岡はそう切り出して、話を人と人との摩擦へと進めていく。悲しみの多くは人との摩擦から生まれ、その摩擦を減らす方向に技術は進んできた。2020年のコロナ以降は非接触のサービスが一気に広がり、人と接する機会は大きく減った。便利だし、助かる。そう認めたうえで、彼は声を少しだけ強くする。

「”1人で生きていかないと欠陥品になっちゃうよ”って言われる社会が、もう来てる気がして。俺は、それがすごく怖いなって思ってます」

生産性や効率の追いつかない場所で、それでも手を握っていたい相手がいる。それは、メンバーであり、ゲストメンバーであり、スタッフであり、そして今日ここに来たあなた。その人こそが、本当の悲しみを教えてくれる唯一の人だから、その手だけは離したくない、と語った。「ステージの上で、あなたに嘘をつかない。それだけは約束できる」「めんどくさい世の中を、一緒に生きていきたい。SNSでは言わない、ここまで足を運んだ『絶滅危惧種の、ユニークなあなた』にだけ伝えたい」。

そう想いを伝え、「Honto」へ。2月発売の11thシングルの表題曲であり、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』の主題歌として書き下ろされた、本ツアーの出発点だ。「大切な人だから、怒ったり悲しんだりするんでしょう。期待したい人がいる人生、最高じゃん」。その一言を置いて、3人はステージを後にした。

鳴りやまない拍手に応えて、アンコールへ。「Glitter」「願い」と続けたあと、荒井が「めちゃくちゃ楽しい、29本でした。これからも長いお付き合いを」と語った。小川は、ひとりで抱え込むことの多かった自分が、この29本を回るうちに気づいたこと――「音楽って、たぶん、人を感じる場所なんだと思う。人と生きると書いて、人生です。生きていきましょう」と強く語った。片岡は、「”長生きに意味なんてない”って言う人もいるけど、俺たちは楽しい人生だから、長生きしましょう。これは、あなたにも言ってるし、メンバーにも、ゲストメンバーにも、スタッフチームにも言ってます。長生きしよう。出会ったり別れたり、いっぱいあると思うけど、またこうやって交わって、生きててよかったなって思いましょう」。そして、最後「ファンファーレ」を披露する中、銀テープが宙を舞った。

エンドロールのムービーが流れると、次のツアー『sumika Live Tour 2027「Laurens Library」』(2027年1月〜4月、全国ホール&アリーナ)が、サプライズで告げられた。すでにこの秋には、各地のZeppを巡り、12月に東京ガーデンシアターへ辿り着く『sumika Live Tour 2026「Flügel Letter」』が控えている。そのうえで、さらに2027年の日付を重ねてみせること。この夜くり返された「生きていこう」という言葉に、そのまま応えるような意思表明ともいえる発表だった。続けていくこと、また会いにいくこと。楽しい人生だから、長生きしよう。そんな彼らの想いが強く伝わる、未来へと向かっていくツアーファイナルとなった。

Official HP:https://www.sumika-official.com/