
浪岡真太郎(Vo, Gt)、大島真帆(Vo)、Cateen(Pf)、矢野慎太郎(Gt)、大原拓真(Ba)、平井辰典(Dr)からなる6人組バンド、Penthouse。シティ・ソウルをベースに、R&Bやジャズなどを織り交ぜ、洗練されたJ-POPへと昇華させている。3月には初の日本武道館公演を開催し、ソールドアウトを記録した。日本語と英語を自由自在に乗せた多彩な音楽性と、浪岡のハスキーで力強い歌声と、大島のソウルフルで豊かな歌声が織りなす男女ツインボーカルの妙がたっぷりと詰まった3rdアルバム『Neon Garden』はいかにして生まれたのか? 浪岡と大島と大原に聞いた。
―Penthouseのアルバムというと、毎回アルバム自体の構想があるというよりは、1曲1曲強い曲を収めていくという印象がありますが、『Neon Garden』はどうだったんでしょう?
浪岡:アルバムを通して曲を聴くという聴き方をしている人は減っていると思うので、今回も同じ意識で作りました。リソースは有限なので、アルバムというものにそこまでこだわらないようにはしています。
大原:強いて挙げるなら、アルバムでしかできない取り組みは引き続きやっていますね。例えば「Drop It Down」みたいな曲はシングルカットして聴いてもらうのは難しいかもしれないけれど、僕らとしてはとてもかっこいい曲だと思っていますし、Penthouseを通じてこういう音楽を知ってもらえたら嬉しいという気持ちがあります。
―「Drop It Down」は全編英語詞のどファンクですよね。
大島:そうですね。そこからPenthouseに入ってくれる人も少なからずいらっしゃると信じてはいますね。
浪岡:元々僕らがいたサークルでこういうファンクの人気は強くて、みんな一度は取り組んできたようなタイプの楽曲ですね。こういう曲をやりたいという気持ちはありつつも、Penthouseはみんなに聴いてもらえる曲を作るというテーマがあるので、アルバムならやってもいいかなという。
大島:アルバム曲をどれにするかを決める会議では、満場一致で「この曲はアルバムでやるしかないよね」という結論になりました。
―お二人のファンクシンガーとしての本領が発揮されている曲でもありますよね。
大島:学生時代は浪岡がメインでこういう曲を歌っていて、私がコーラスで参加することが多かったんですが、今回のツインボーカルでぶつかり合う感じは、Penthouseならではだなと思いながら伸び伸びと歌わせてもらいましたね。
Photo by Takuya Maeda
ポップの間口を広げる4つの新曲
―「Drop It Down」を含めて新曲が4曲入っています。リード曲の「恋する神様」は、ブライトでとてもキャッチーなJ-POPです。この曲をリード曲にしたのは?
大原:リード曲はキャッチーな曲がいいなと思いましたし、みんなも「この曲が良い」って言ってた気がする。
大島:他にも候補はあったけど、大原さんが「恋する神様」をゴリ押ししてて。大原さんのゴリ押しは結構当たるので、ベットしようということになりました。
大原:デモの時点から浪岡がこれまで作ってきたメロディの中でも特にキャッチーで歌いやすい曲だと思ったし、圧倒的に入ってきた感覚があったんですよね。これまでも「恋に落ちたら」や「Taxi to the Moon」をゴリ押ししたら、評判の良い曲になったので今回もゴリ押ししました(笑)。
浪岡:「恋する神様」はスラップベースを入れてみたり、シンセサイザーを入れてみたんですが、そうやってどういうものが受け入れられやすいかを試していってますね。
―Cateenさんのピアノがとても華やかですよね。
浪岡:あの歯切れの良さとかキラキラした感じは角野のピアノでないと出せないですよね。割とデモ通りに弾いてくれたんですが、「ピアノの打ち込みがだいぶ良くなってきましたね」と褒められました(笑)。
大島:世界のCateenさんに(笑)。確かにCateenのフレーズが耳に残る曲ですよね。

右から2人目がCateen
― 大原さんはスラップベースを弾かれたという。
大原:僕は昔からスラップがめちゃめちゃ苦手で遠ざけてきたんですが、ここ2~3年は、さすがにやらないと、と思って取り組んできたんです。「恋する神様」のデモを聴いて「ついにずっとスラップを弾く曲が来てしまった」と思ったんですが、そもそも「恋する神様」は若い人にも聴いてもらいたい曲ですし、最近のスラップの流行りの曲を聴いたりして、高校生のバンドマンの子とかが聴いてコピーしたくなるような、難しすぎないキャッチーなフレーズを意識して演奏しました。うちのバンドは来たものはやらないといけないので(笑)。
浪岡:スラップって今や誰でもやってるのでできないことはないだろうなと。メンバーみんなやればできるので(笑)。
―甘酸っぱい胸キュンな恋愛ソングですが、ここまで振り切った歌詞を書こうと思ったのは?
浪岡:そういう要素は大原さんが書いた歌詞ですよね。俺にはこういう歌詞は書けない。
大原:浪岡のデモの段階で「恋する神様」というワードが歌詞に入っていて、若いリスナーに刺さる曲として歌詞を書きました。浪岡に歌詞を提案して「ちょっと方向性が違います」と言われることもあるので「通るのかな?」と半信半疑で提出したんですよね。浪岡も若いリスナーに聴いてもらえる曲にしたいっていうビジョンがあったので、OKしてくれて嬉しかったです。こういう路線には、Penthouseはまだチャレンジできていなかった。
浪岡:僕がイメージしていた方向性の歌詞でしたね。
大原:ずっと浪岡と壁打ちしてきたことで、浪岡の「このテーマでここまではさすがに振り切りたくない」っていう、どこまでなら踏み込めるかという勘どころはわかってきているので、上手い塩梅で書けたかなと思います。
―ボーダーラインを守りつつ、胸キュンな歌詞を書く上でモチーフにしたものはあったんですか?
大原:女子高生のSNSを見て、みんながどんな感覚で日々を過ごしているのかを探りました。
浪岡:キモいです(笑)。
大原:歌詞を書くために必要でした(笑)。女子高生が観ているような恋愛リアリティ番組を観たり、喫茶店で歌詞を書いている時に周りにいる女子高生が持ってるアイテムとかを見たり、昔観たドラマの女子高生の雰囲気を思い出したりしながら、そういうメンタリティに自分を持っていきました。あと、「16Type」や「GPT」や「ハンディファン」っていう若い世代が親しみやすいトレンドのワードを入れて聴きやすくしていきましたね。ここでいう「16type」はMBTIもそうなんですが、どちらかといえばラブタイプ16診断をイメージしています。うちのサポートでコーラスをやっているおかのやともかさんが若者の流行りに敏感な方で、「今これが流行ってますよ」って教えてくれるんです。
―歌唱の際に意識したことはありましたか?
浪岡:普段は日本語詞の曲をあまりはきはきと歌わないタイプなんですが、この曲は歯切れよく歌った方がいいと思いましたね。
大島:私はひたすら、浪岡のメロディのオクターブ上でなぞりにいくみたいなアプローチなので、「影から支えますぜ」っていう気持ちで、いかに浪岡の発音やニュアンスに合わせるかっていう勝負をしました。「自分をあまり出さないように」って浪岡に結構言われたので(笑)。
浪岡:そうすると真帆さんになっちゃうからね。大衆に根差したものにしたかったので、明るめの声で一段階キャッチーになるよう意識しました。
大島:自分のニュアンスを出しすぎないように奮闘しましたね。
―こちらも新曲の「Balloon」は全編英語詞でチルな雰囲気のバラード調の曲です。
浪岡:バラードはこれまで何曲かありましたが、こってりしたものが多くて、あっさりしたチルなラブソングはなかったので、そういう方向性で僕が好きなように書かせてもらった曲です。
―途中でブラスが入ってきたり、ゴスペルテイストも感じさせます。
浪岡:シングルだと1サビまでに完結させてパッと盛り上げるような曲が求められますが、後半にかけてだんだん盛り上げていくというアルバム曲ならではのアレンジですね。
大島:初めて聴いた時、シンプルに「めちゃくちゃいい曲だな」って思いました。普段邦楽を聴いてる人には届きづらい曲かもしれませんが、Penthouseとしてたくさんの人に届けたい曲だと思ったので、どう歌うのかかなり考えました。ツインボーカルの中で、自分の声が浮かないように、ニュアンスやトーンを浪岡と合わせつつ、それぞれの声の良さと違いを味わってもらえるよう意識したんですが、結果的にとてもうまくまとまって達成感があります。浪岡のディレクションが最初から思ったより優しくて。
浪岡:真帆さんの歌は最初から良かったので、すんなり進みましたね。
大島:とても好きな曲で、たくさん聴いてからレコーディングに臨んだのが良かったのかもしれない。
浪岡:他の曲は好きじゃないんですか?
大島:いやいや、そんなことない(笑)。この曲は過去イチぐらい好きな曲だったので、歌の解釈が最初から一致したんだと思います。
―ハモリがめちゃくちゃパワフルですよね。
大島:「ハモリでこれだけやっていいんだ」っていうところもこの曲の良さかなと思います。浪岡の声のおいしい部分と自分の声のおいしい部分を順番に味わってもらえる、飽きのこない曲だと思います。
大原:僕もめっちゃ好きな曲で、早くライブでやりたいですね。浪岡が言ったようにこれまでのPenthouseにはなかったこってりしてないバラードなので、シーンを選ばずに演奏できるだろうし、シーンを変える役割も果たしてくれそう。あと、ベースを弾いててすごく楽しいです。めちゃくちゃシンプルなんですが、ドラムとベースと鍵盤のタイム感で雰囲気を左右できる曲なので。

Photo by Takuya Maeda
ぶつかり合いから生まれる6人の音楽
―4曲ある新曲のうち、「シルエット」はスウィングジャズテイストの強い曲です。作詞は大島さんと大原さんですが、まず曲があったんでしょうか?
浪岡:そうですね。僕が歌うよりは女性が歌った方が映えるメロディだと思って真帆さんにメインで歌ってもらおうと思いました。そうしたら「歌詞を書く」と言い出して。
大島:そうなんですよ! せっかく自分がメインで歌わせてもらうのだったら歌詞を書きたいなと思いました。でも、細かいリズムとメロディに言葉を落とし込むのが予想以上に難しくて、何度も案を出しては戻される、ということを繰り返して、最終的には大原さんに細かくアドバイスしてもらいました。私が「このワードを入れたい」と出したアイデアに対して、「そのワードを活かすんだったらこういう風にまとめた方がいいよね」って言ってくれたり。二人三脚で何とか完成させられましたね。
大原:浪岡が「女性が歌った方が映えるメロディ」って言ってましたが、僕には出せない真帆のアイデアがあって、素直にいいなと思いました。でも、これまで僕と浪岡が培ってきたPenthouseの歌詞を踏まえると、ここは言いたいことがずれちゃってるなっていうところがあって、整理するのを手伝った感じですね。真帆も強気で「ここは絶対に変えたくないです」って言ってきたり。
大島:Penthouseをやってきてそういうことを言うのは初めてでしたね。大原さんの言ってることは正しくて、基本折れたんですが、「今宵ルーティンメイクをちょっと大胆に」っていうフレーズだけはどうしても入れたかったんです。このフレーズが生まれた時、自分の中で「来た!」っていう感覚があって。最初大原さんは「でもこのワードだとストーリーの辻褄が合わないから変えた方がいいんじゃない?」って優しく言ってくれたんですが、3~4回突っぱねるうちに「だから~!」みたいになってきて(笑)。
大原:最後は僕が戦意喪失して、このフレーズを生かす、ベストな形を目指しました。根負けしましたね(笑)。
大島:それで、このフレーズを活かす形で構築していく方向で考えていったんですが、私はどフィーリングな女なので、フィーリングを重視すると辻褄が合わなくなってしまう。大原さんが大変そうでした。
大原:レコーディングの前日の夜11時とか12時くらいまでずっとファミレスで作業してね。
大島:途中から2人とも頭が全然働かなくなって。
大原:「最後1行だけだからもう大丈夫だろう」と思ってファミレスを出たんですけど、レコーディング当日にまた調整する箇所が出てきて(笑)。
浪岡:2ヶ月前くらいにデモはあったわけじゃん。歌詞を書き始めたのがレコーディングの3週間前くらいだったから、取り掛かるのが遅いなと思った(笑)。
大島:確かにね(笑)。もっと早くできたっていう反省点はありますね。それは次回に生かしたいと思います。
大原:今振り返ればいい思い出です(笑)。
浪岡:僕としてはこの曲は、ドラムは結構シンプルですが、ベースでリズムを作る曲を作ってみたかったんですよね。ドラムの平井さんには文句言われたんですけど(笑)。
大原:ベースの話なのに俺より平井さんが文句言ってるっていう(笑)。
―それぞれの意見をぶつけ合って完成したことが伝わってきました。
大島:確かに。思い返してみると。
大原:この曲が一番ぶつかってるかもしれないね。
浪岡:攻めのアレンジではあったからね。
大島:確かにベースが肝になる珍しいアレンジですね。
大原:この曲も弾いてて楽しいんだよね。
浪岡:サビ前の転調が良いですよね。意外と誰もやってない転調で。
大原:確かに。おしゃれだよね。ホーンやフルートが入っていたり、聴きどころが多い曲だなって思います。ライブでやりたいことがいくつも浮かんでますね。

Photo by Takuya Maeda
武道館の先に描く景色
―3月に行われた初の日本武道館公演は、17人という大所帯での編成でしたが、あの経験を経て、12月のツアーはどんなツアーにしたいと思っていますか?
大原:武道館はこれまでの集大成となるライブだったんですが、年末のツアーについてはそういうものではなくなりますし、楽しいエンターテインメントを作るツアーになるとは思います。新曲もありますし、新しくやりたいことをいろいろ詰め込んでいきたいですね。
―大島さんは武道館はどんなライブになったと思っていますか?
大島:見せたかったものは120%見せられたステージだったと思っています。誰一人後悔を残すことなく、幸福感と達成感と満足感を得られたステージ。6人で始まったバンドですが、たくさんのスタッフさんと11人のサポートメンバーの方たちに支えられてここまで来れたなと。私たちの音楽に賛同してくれる方が増えて、一緒に歩んできてくれたからこそ達成できたライブだったなって思ってますね。
―浪岡さんは武道館を経て見えてきたビジョンはありましたか?
浪岡:達成感というよりは「ひとまず終わったな」という感じだったんですが、評判は良かったので嬉しかったですね。
大島:浪岡が一番いつも通りでしたね。
大原:俺と真帆はかなりかかってたけれど、フロントマンの浪岡がいつも通りだったのがこちらとしては助かったよね。
大島:ボーカルが2人とも前のめりになると結構危ないからね(笑)。
大原:まだまだ通過点という気持ちではありますね。もっと大きいところでやりたいですし。それこそ今回のアルバムの「Drop It Down」の話にも繋がりますが、ゴスペル隊やパーカッションや管楽器を入れたりする中で、ライブを観てくれた人がそういうパートが入る音楽の良さに気付いてくれたらいいですよね。もっと大きい会場でライブをやって、たくさんの人がいろいろな音楽を好きになるきっかけになれたらと思ってます。

Photo by Takuya Maeda

Penthouse 3rd Album
『Neon Garden』
ビクターエンタテインメント
発売中
配信:https://penthouse.lnk.to/NeonGarden
CD+Blu-ray/通常盤CD:https://victor-store.jp/artist/16258
M1. 恋する神様 *NEW
M2. 一二三
M3. Minute by Minute
M4. 青く在れ
M5. Balloon *NEW
M6. ナンセンス
M7. シルエット *NEW
M8. 隣の恋は青
M9. Planetary
M10. Drop It Down *NEW
