商船三井ミュージアム「ふねしる」(以下、ふねしる)にて、開業1周年を記念した特別展『せんいんになろう展』が9月30日(水)まで開催されている。この特別展では、船の運航やエンジン管理を担う「海のプロフェッショナル」を育成する広島商船高等専門学校(以下、広島商船高専)商船学科4年生の学生らが企画・製作した展示やゲームを通じ、船の仕組みや船員の仕事を楽しく学ぶことができる。今回は、特別展が始まる前日の7月9日に「ふねしる」を訪れ、上田和季館長と広島商船高専の岸拓真准教授に話を伺った。

主体は学生たち。船の仕組みや船員の仕事を楽しく学べるコンテンツがずらり

開業1周年を迎えた「ふねしる」は、日本の暮らしを支える海運の役割や船員の仕事を楽しく学べる体験型の船のミュージアムとして、確固たる地位を築きつつある。あまりにも海運や船員の実態が知られていない現状を変えようと、日本では珍しい船のミュージアム「ふねしる」開業を提案した上田館長は、「来場する子どもたちが楽しんでくれていて、リピーターも多い」と、1年経った手応えを語ってくれた。週末には家族連れで賑わい、310度を囲むLEDスクリーンの操船シミュレータや、風の力で水素を作って運ぶ未来の船「ウインドハンター」体験、描いた船の絵が壁面を動くインタラクティブアート「船をえがこう!」が特に人気だという。

  • 「ふねしる」上田 和季館長

    「ふねしる」上田 和季館長

そんな「ふねしる」には他にも体験型コンテンツが豊富に用意されているが、足りていない要素があると上田館長は指摘した。それが「船員になる方法」。「スペースにも限りがあり、常設展ではカバーできない」と明かす。そこで、広島商船高専、弓削商船高等専門学校(以下、弓削商船高専)、大島商船高等専門学校(以下、大島商船高専)とコラボレーションし、開業1周年を記念した特別展『せんいんになろう展』が開かれることになった。3つの商船高専としても認知度を向上させる機会となり、双方にとってメリットは大きい。

  • 学生がデザインしたポスター

    学生がデザインしたポスター

展示やゲームの企画・製作は、幹事校である広島商船高専の商船学科4年生の学生らが担当したが、3年ほど前から同校と商船三井グループとの間でさまざまな取り組みを実施してきたことが背景にある。岸准教授は「どうすれば入学する後輩たちの人数が増えるのか、広報的な視点で考えてもらった」と、推進するアントレプレナーシップ教育(※)の一環としての意義を強調した。

(※)自ら社会課題を見つけ、課題解決に向かってチャレンジしたり、他者との協働により解決策を探求したりすることができる知識・能力・態度を身に付ける教育のこと。

  • 広島商船高専 岸 拓真准教授

    広島商船高専 岸 拓真准教授

特別展の準備は4月から始まったそうだが、その主体となったのは学生たち。「私たち大人はチェックしただけ」と、岸准教授が教えてくれた。例えば、実習に密着した映像も、企画から撮影、編集までを学生が手がけた。画面上に表示されるテロップには専門用語を使わずに平易な言葉を用いるなど、わかりやすく伝える工夫が光る。

  • 実習に密着した映像

    実習に密着した映像

また、安全に関するグッズを集めるゲーム「広島丸が緊急事態!サバイバルゲームを通じて船の安全を学ぼう」も、学生がプログラミングをして開発した。日頃からデジタルトランスフォーメーションに目を向け、先進的な学びの習得にも力を入れているのが活きた格好だ。

  • ゲーム「広島丸が緊急事態!サバイバルゲームを通じて船の安全を学ぼう」

    ゲーム「広島丸が緊急事態!サバイバルゲームを通じて船の安全を学ぼう」

他、実際に学校で使用されているアイテムに触れることで船を身近に感じられる展示や、広島丸の塗り絵など、学生たちが“お客さま目線”に立って知恵を絞ったコンテンツがずらりと並ぶ。

  • (左から)ヘルメット、ロープ、各種油

    (左から)ヘルメット、ロープ、各種油

  • (左から)救命浮環、救命胴衣

    (左から)救命浮環、救命胴衣

  • 船が安全に通れる場所を確認するための「海図」と、海図に線を書いたり角度を測ったりする「井上式三角定規」

    船が安全に通れる場所を確認するための「海図」と、海図に線を書いたり角度を測ったりする「井上式三角定規」

  • (左から)船を岸に停めるためのロープ「係留索」、甲板を掃除するときに使う「ヤシの実」

    (左から)船を岸に停めるためのロープ「係留索」、甲板を掃除するときに使う「ヤシの実」

  • 広島丸の塗り絵

    広島丸の塗り絵

「開催期間中、来場者の反応を受け、さらにブラッシュアップしていく」(岸准教授)とのことなので、何度来ても楽しめそうだ。

「幼稚園児や小学校低学年などの小さな子どもたちにもわかりやすい展示にしてほしい」とオーダーしたと話す上田館長が、それが見事に体現されたコンテンツの数々に満足気な表情を浮かべると、岸准教授は「最も大切にしたのは、コミュニケーション。チームワークを発揮して、全員が意欲的に一生懸命に取り組んでくれた」と学生たちをねぎらった。

展示やゲーム、出前授業を通し、船や船員の知られざる世界に浸ってみて

  • 特別展『せんいんになろう展』は9月30日まで開催

    特別展『せんいんになろう展』は9月30日まで開催

8月1日から16日までの土日祝日には、広島商船高専・弓削商船高専・大島商船高専の先生による出前授業「夏休み自由研究講座」も行われる。11日、15日、16日の出前授業で講師を務める岸准教授は「今回の特別展をきっかけに、各商船高専のオープンスクールや学園祭にも足を運んでほしい」と呼びかけた。そして、上田館長は「船や船員に興味を持つ子どもたちが一人でも増えるよう、次の1年は今回の特別展のようなコラボイベントも積極的に作っていきたい」と力を込めた。

広島商船高専の学生たちが“未来の後輩”に向けて企画・製作した展示やゲームに触れて、船や船員の知られざる世界に浸ってみてほしい。

イベント名:せんいんになろう展

  • 開催期間:2026年7月10日(金)から9月30日(水)まで
  • 料金:無料(ふねしる入館券が別途必要)

※期間中休館日:7月16日(木)、9月3日(木)・10日(木)・17日(木)・24日(木)

出前授業「夏休み自由研究講座」

8月1日(土)・2日(日)11:00、14:00

  • 担当:大島商船高専 千葉元 教授
  • テーマ:「ふねの昔・今・未来」(帆で動く船:帆船をテーマにした授業)

8月8日(土)・9日(日)11:00、14:00

  • 担当:弓削商船高専 山崎慎也 准教授
  • テーマ:「海図を開いて出航だ!~航海士さんと船の冒険~」(海の地図「海図」の読み方を学べる授業)

8月11日(火・祝)・15日(土)・16日(日)11:00、13:30、15:00

  • 担当:広島商船高専 岸拓真 准教授
  • テーマ:「おふねは何人いたら動くかな?」(ボードゲームを通じて、大きな船を動かすために必要な船員の仕事や役割を考える授業)

各出前授業共通の参加方法

  • 定員:1回あたり10名程度
  • 参加方法:事前予約は不要。各回開始30分前より整理券を配布(定員に達し次第、受付終了)
  • 料金:無料(ふねしる入館料別途必要)
  • 対象:どなたでも参加可能(未就学児は、保護者と一緒に参加必須)

施設情報:商船三井ミュージアム「ふねしる」

  • 住所:〒559-0034 大阪府大阪市住之江区南港北2丁目1−10ATC(アジア太平洋トレードセンター)ITM棟2階
  • 休館日:毎週木曜日(夏休み中7/21~8/31を除く)、年末年始
  • 開館時間:展示/日~水曜日:10:00~18:00、最終入館17:30、金・土曜日:10:00~18:30、最終入館18:00、カフェ/展示の開館時間と同じ(ラストオーダーは閉館の15分前)、ショップ/展示の開館時間と同じ
  • 入館券:当日購入(個人)平日/高校生以上800円、小中学生400円、未就学児無料、休日/高校生以上900円、小中学生450円、未就学児無料他、詳細は公式サイトを参照のこと