登場人物の丁寧な心理描写だけでなく、広末涼子と内田有紀という「90年代アイドル俳優の2トップが初共演」の華やかさもプラス。「夫を殺した妻たちは逃げ切れるか?」というサスペンスのシリアスさだけでなく、いい意味での見やすさを兼ね備えていた。

その90年代と言えば音楽番組が次々に終了し、ソロのアイドル歌手が売れづらくなったころであり、そこに現れたのがこの2人。すぐに主演女優となり、ともに歌もヒットしただけに、『ナオミとカナコ』は「約20年前後の時を経て共演した」という話題性と「しかも殺人の共犯役」という意外性があった。

また、直美は百貨店外商部のキャリアウーマン、加奈子は専業主婦という対照的な役柄であるところもポイントの1つ。異なる立場の生きづらさを描き、それを元トップアイドル女優が代弁するような演技はインパクト十分だった。

ちなみに内田は現在放送中の主演ドラマ『ラストノート』(フジ系、毎週木曜22:00~)で香料メーカーのキャリアウーマンを演じているが、そのポジションは『ナオミとカナコ』の直美に近いのかもしれない。

  • 『ナオミとカナコ』制作発表会見に登場した広末涼子と内田有紀=2016年1月7日

    『ナオミとカナコ』制作発表会見に登場した広末涼子と内田有紀=2016年1月7日

2人に続く重要人物である達郎を演じた佐藤隆太の存在感も出色。佐藤と言えば典型的な「いい人」「優男」での起用が多かっただけにDV男の役柄は新鮮であり、しかも達郎に似た不法滞在者の中国人・林竜輝との1人2役だった。

さらに、カタコトの日本語で怪しさ全開の中国人を演じた高畑淳子は笑いを、執念深く2人を追い詰める達郎の姉を演じた吉田羊は怖さを加えるなど、作品全体のバランスは上々。『ナオミとカナコ』は、広末、内田、佐藤、高畑、吉田の5人による濃厚な人間ドラマと言っていいだろう。

そして『ナオミとカナコ』を語る上で避けられないのが、賛否真っ二つに分かれた結末。“賛”は「このドラマらしい」「この終わり方が一番いい」などと納得の声が多かったが、“否”も「これもアリなのかもしれないけど……」「もう少し続きが見たい」などと思い入れの深さを感じさせるものが多かった。

昭和時代には「結末がいくつかの解釈に分かれることが名作の条件」という説があったように、安易なハッピーエンドで視聴者のご機嫌伺いをしなかったところにも好感が持てる作品だ。

日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。