――出演者の一覧を見ると、相方のケンさんをはじめとする吉本新喜劇の座員の方も出演されていますが、普段はほかの劇団に所属している方が多くを占めている印象です。キャスティングについても、芝居を軸に考えられたのでしょうか。

ケンは、東京で何年もお芝居をやっていましたし、小山ゆう先生の漫画が原作の『お〜い!竜馬』という舞台でも岡田以蔵をやっていて、「ケンさんの以蔵はすごいよね」と高く評価された実績があります。新喜劇で一緒にやっていても、締めるところを締める力があるなと、目の前で見させてもらっていたので、(岡田以蔵役をケンにするキャスティングは)自信満々でした。

ほかのキャストに関しても、吉本のタレントさんや新喜劇のメンバーに出演してもらうこともできたのですが、役として別人になれる人たちで行きたかった。殺陣(たて)も「練習を頑張ってください」ではなくて、「最初からうまい人だけを集めてください」とお願いして、劇団のトップの方や、大衆演劇の方など、別の事務所からも呼んでいます。

お芝居もそうですけど、稽古のときから役者さんたちは「芸人さん、ここまでやるんや」という思いもあるでしょうし、僕らも毎日舞台に立っているので、「いやいや、そこで役者さんには負けへんで」という芸人根性でやっています。だから、相乗効果がありますし、いい意味でピリピリしています。

20年以上のキャリアを持つ役者が涙「この作品は毎年やってほしい」

――ケンさんはほかの舞台にも出演されていますし、アキさんは東映京都撮影所での経験もある。そうしたキャリアを知らずに、お二人の芝居を見て、驚く人も多いのではないでしょうか。

そうですね。東京で外部の劇団に出させていただいていたときも、周りは役者さんばかりでした。僕は東映にいたことを最初は言っていなかったんですけど、現場に行って、いきなり殺陣をした。東映の厳しい世界でやってきた根性があるから、そこは出してやろうと思っていたら、「え、アキさん、殺陣やってはったんですか?」と驚かれて。そこで初めて「実は、太秦で揉まれてまして」と言いました。

今回の舞台でも、僕や相方をはじめとする芸人たちが、本気モードのスイッチを入れてやっていますし、周りの方々もそこには負けていられないという気持ちでやってる。劇団のトップの方も、大衆演劇のトップの方もいますし、刺激し合う関係を作ることができています。

――そんな布陣で、アキさんの長年の構想を形にする。どんな舞台かますます気になります。

『時が来た』を始めて、感動したことがあって。前回公演で、打ち上げで初めてちゃんと話した役者さんが何人かいたんです。僕らは劇場の合間に稽古へ行って、夜のスケジュールも調整してもらって、めちゃくちゃ迷惑をかけていたので、みんなとゆっくり話す時間が全然なくて。

それで、打ち上げのときに「アキさんとしゃべりたくてしゃべりたくて」「僕もしゃべりたかったです」と言い合いながら話したんですけど、役者を20年以上やっている方から、「これって本当にアキさんが考えたんですか?」と聞かれて、「実は、30年前からずっとやりたくて」と話したら、「台本を読んだときから涙が止まらなくて。稽古場に行ったら、さらに皆さんのポテンシャルがすごくて、ずっと涙が出そうになっていました。この作品は毎年やってほしいです」と言ってくださったんです。

僕は1回の公演で終わりだと思っていたのですが、その方から「これは毎年、今年は誰がこの役をやるんやろう、今年は誰が主役をやるんやろう、となるくらいの作品ですよ」と言われたときに、(自分の中に長年構想としてあったものが)そんな作品になっていたんだ、と思いました。僕自身はそういう角度で見たことがなかったので、20年以上やっている役者さんにそう言っていただいて、そんなふうに捉えられていたんだという新しい発見がありました。

■プロフィール
アキ
1969年8月22日生まれ。大阪府岸和田市出身。1992年、ケンとお笑いコンビ・水玉れっぷう隊を結成。2014年、吉本新喜劇に入団。2023年、吉本新喜劇の座長に就任する。2022年から2024年に「吉本新喜劇座員総選挙」で3年連続1位を獲得し、2025年には殿堂入りを果たした。