出光興産、T2、いすゞ自動車の3社は、トラック輸送における次世代バイオディーゼル燃料の普及に向けた連携を開始する。いすゞ「ギガ」を用いたT2の自動運転トラックによる長距離運行で、「出光リニューアブルディーゼル」(IRD)の利用を始めるという。どんな取り組みなのか、3社のオンライン説明会を取材した。

  • 出光興産、T2、いすゞ自動車の自動運転トラック

    同じ自動車業界にありながら、分野の違う3社がカーボンニュートラルで手を組んだ

リニューアブルディーゼルとは

国が掲げる2050年のカーボンニュートラル実現という目標に向けて、トラック輸送分野ではライフサイクル全体でCO2排出の削減を進めていく必要があり、次世代バイオディーゼル燃料に期待が寄せられている。

とはいえ、次世代バイオディーゼル燃料の給油スポットは数が十分ではなく、通常の燃料と比べると価格は高め。さらに、トラックの性能や耐久性への影響、故障時の修理・サービス対応が明確になっていない。

今回の発表は、こうした課題を解決するための第一歩だ。いすゞの大型トラック「ギガ」をベースにしたT2の自動運転トラックを運行する中で、「出光リニューアブルディーゼル」(IRD)を利用し、給油オペレーションの有効性などを検証していくという。

  • T2の自動運転トラック

さらに、ここを起点にして、給油スポットの拡大に向けた検討を進めるなど、IRDを含む次世代バイオディーゼル燃料の普及につながる環境整備に取り組んでいく。

リニューアブルディーゼルとは、廃食油や植物油など再生可能な資源から製造されるバイオ燃料だ。軽油の代わりとして、トラックやバス、建設機械、発電機、船舶などの燃料に利用されている。燃焼時にはCO2を排出するものの、原料となる植物が成長過程でCO2を吸収するため、CO2排出量が実質ゼロとみなされるカーボンニュートラルな燃料だ。

自動運転とカーボンニュートラル燃料の相性は?

出光が開発したIRDは独自の規格で品質を担保しており、植物由来の廃食油を原料とすることで、廃棄物の再利用と資源の有効活用による循環型社会を実現している。

特筆すべきは、軽油から燃料を転換するときに、車両やエンジンを交換したり、設備を新設したりする必要がないこと。導入コストが抑えられるため、スムーズな移行が可能だ。

出光興産ではこれまで、IRDを建設現場で使用する建設機械や発電機向けの燃料として供給してきたほか、乗客を乗せた旅客バスの燃料として使用する実証実験も関係各社とともに行っている。

そのIRDを使って自動運転トラックを走らせるT2は、2027年度以降にドライバー不要のレベル4自動運転トラックによる幹線輸送の開始を目指すスタートアップで、すでにレベル2(高度運転支援)による商用運行を開始している。

  • T2の自動運転トラック

    T2の自動運転トラック

T2は今年、レベル4自動運転を見据えて、高速道路における無人運転と一般道での有人運転を切り替える拠点「トランスゲート」を神奈川県と兵庫県に開設。国内の物流事業者として初の試みだ。2026年7月には国土交通省の「自動運転トラック実装支援事業」に採択されるなど、国内の自動運転トラック推進に欠かせないメンバーになっている。

  • T2のトランスゲート綾瀬(神奈川県)

    トランスゲート綾瀬(神奈川県)

  • T2のトランスゲート綾瀬(神奈川県)

    トランスゲート綾瀬(神奈川県)

今回の取り組みでT2は、関東~関西間の高速道路において、大手運送会社向けなどに提供しているレベル2自動運転トラックの商用運行でIRDを試験利用するという。

また出光興産では、可搬式燃料タンクを活用することで、IRDを利用しやすい環境づくりを目指す。T2はトランスゲートにこの可搬式燃料タンクを設置していく。

T2によれば、自動運転トラックと次世代バイオディーゼル燃料は親和性が高いとのこと。ドライバーがいないので、燃料の違いによる加速感の差は気にならないし、手動運転より加減速や車線変更が穏やかになるあたりが理由かもしれない。

いすゞが出光・T2と組んだ理由

T2が使うのがいすゞ自動車の大型トラックだ。いすゞは軽油利用時と同等のオペレーションで修理・メンテナンスサービスを提供する。

プレゼンテーションを行ったいすゞ自動車 CN技術統括部 部長の足立隆幸氏は、「安心」×「斬新」で顧客と社会の課題を解決する商用モビリティソリューションカンパニーとして、脱炭素社会の実現に貢献していくことは責務のひとつであり、今回の取り組みに参画したと説明。

「CO2排出量削減の選択肢はいくつかありますが、それぞれに一長一短があります。カーボンニュートラル化を進めるためには、マルチパスウェイの考え方が必要であり、リニューアブルディーゼルは即効性のある現実解だと考えております」(以下、カッコ内は足立さん)

足立氏はリニューアブルディーゼルのメリットとして、電動化が困難な用途や地域でもCO2排出量の削減が可能なこと、航続距離や使い勝手がディーゼル車と同等であること、既存の車両を使えるので即効性があることの3点を挙げた。

「いすゞ自動車では、ディーゼルエンジンの高効率化は継続して行いつつ、リニューアブルディーゼルの実用化、普及加速に向けた活動へ積極的に参画し、その有用性について発信していきたいと考えております」

なお、IRDについては、T2所有の車両の品質影響を評価し、軽油と同じ修理やメンテナンス対応で問題がないことを確認しているという。

今回の説明会で感心したのは、バッテリーEV(電気自動車)を自社開発し、自動運転についても独自の研究開発を進めているいすゞが、石油会社や自動運転スタートアップと対等に組むことで、カーボンニュートラルを実現していこうとしていることだ。

それだけ物流分野の課題が広範囲にわたっており、ひとつの会社だけでは解決が難しいということなのかもしれないが、適材適所でパートナーと組むという柔軟な思想が理解できたし、社会課題の解決を第一に考える姿勢に共感した。