アサヒビールは主力ブランド「アサヒスーパードライ」で、“冷え”を軸とした新たなブランド戦略を発表した。1987年の発売以来、辛口という新たな価値を築いてきた同ブランドが、なぜ今、温度に着目するのだろうか。

取材会にはビールマーケティング部次長の木村宏之氏とスーパードライ ブランドマネージャーの堀謙太氏が登壇。飲食店から家庭まで、あらゆるシーンで冷たさを徹底的に追求し、辛口の魅力を最大限に引き出す戦略について説明した。

9割の消費者は、ビールに“冷え”を求めている

木村氏は冒頭、まずスーパードライの歩みを振り返った。

「1987年以前の日本のビール市場では、重く苦い味わいのビールが主流で、それがビールのおいしさだという認識が一般的でした。その流れを変えたのが、1987年に“辛口”という価値を掲げて発売されたスーパードライです。以来、日本のビール市場に辛口の価値を提案してきました。2025年からは、辛口のおいしさをさらに引き立てる要素として、“冷え”に着目した取り組みをスタートしています」

  • スーパードライは、日本で初めて「辛口」の言葉を採用したビール

    スーパードライは、日本で初めて「辛口」の言葉を採用したビール

アサヒビールが実施した調査によると、消費者がビールに期待する価値として、冷えが重視されていることが分かったという。

「自宅、外飲みを問わず、約9割のお客様がビールを飲む際に冷えを重視していると回答しています。たしかに、ぬるいビールよりも、キンキンに冷えたビールの方がおいしいですよね。ビールカテゴリーにおいて、冷えは単なる温度ではなく、味を構成する極めて本質的な価値の一つだと考えています」(木村氏)

  • ビールマーケティング部次長の木村宏之氏

    ビールマーケティング部次長の木村宏之氏

アサヒビールを冷凍庫で3分冷やすとキレがより際立つ

なぜ、冷えがスーパードライをおいしくするのだろうか。そのポイントは大きく2つある。1つは、温度が下がることで炭酸ガスが液中に溶け込みやすくなり、喉で感じる炭酸の刺激が強まる。その結果、飲みごたえが一気に向上するのだ。2つ目は、温度が下がることで苦味を感じにくくなり、後味のすっきり感が増す。これにより、キレの良さがより際立つ。

「つまり、スーパードライの辛口を構成する飲みごたえとキレという2つの特徴は、冷えによって、より一層引き立てられるのです」(木村氏)

アサヒビールでは、家庭でスーパードライを楽しむ際は、まず冷蔵庫で十分に冷やし、飲む約3分前に冷凍庫へ入れることで、キンキンに冷えた状態で味わうことを提案している。

しかし、家庭でビールを飲む際、「今が飲み頃なのか」を判断するのは意外と難しい。そこで、パッケージには、適温になるとロゴやアイコンの色が変わる仕組みを採用した。

  • 景品として提供しているタンブラー「キンキンタンブラー」も、冷やすと青いラインが出る仕様になっている

    景品として提供しているタンブラー「キンキンタンブラー」も、冷やすと青いラインが出る仕様になっている

堀氏は、この取り組みは機能性を高めるだけでなく、飲む前の期待感を高める狙いもあると説明する。

「ビールを楽しむ体験は、プルタブを開ける前から始まっています。しっかり冷やし、色が変わるのを待つ時間も楽しんでいただきたいです。その高揚感が、飲んだ瞬間のおいしさをさらに引き立てると考えています」

  • ビールを冷やすことで泡がきめ細かくなる。堀氏が実際に注いだ様子。

    ビールを冷やすことで泡がきめ細かくなる。堀氏が実際に注いだ様子。

飲食店でのビール体験が若者の心を惹きつける

アサヒビールでは、家庭向け施策に加え、飲食店で提供する「スーパードライ エクストラコールド 」も強化している。

  • 飲食店に設置された「スーパードライ エクストラコールド」。自動的にビールが抽出される

    飲食店に設置された「スーパードライ エクストラコールド」。自動的にビールが抽出される

「スーパードライ エクストラコールドはジョッキやグラスを冷やし、ビールを4℃未満で提供する独自開発の専用ディスペンサーです。2010年の登場以来、多くのお客様に支持されていますが、今後は専用サーバーの管理やグラスの洗浄、注ぎ方まで徹底することで、より高い品質で提供していきます」(堀氏)

堀氏は、飲食店で味わう特別な体験が家庭での飲用にもつながり、ブランド全体の価値向上につながると説明した。また、氷点下で提供されるビールの見た目のインパクトは、SNSを通じて若い世代への訴求にも効果的だという。

「若い世代は効率を重視する一方で、本物の体験には高い価値を感じています。キンキンに冷えたスーパードライがのどを駆け抜ける感覚は、デジタルでは再現できないリアルならではの体験です。その価値を伝えていきたいと考えています」