LITALICOが運営する発達支援ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」は2026年6月30日、発達障害のある子どもの熱中症リスクに関する情報を公開した。内容は、同サイトのコミュニティやコラムに寄せられた当事者家族の事例をもとにまとめたもの。
発達障害(ASD/自閉スペクトラム症やADHD/注意欠如多動症など)のある子どもは、感覚の偏りやこだわりといった特性から、水分補給や衣服の調節など一般的な熱中症対策が難しいケースがあるという。
発達障害のある子どもにみられる4つの熱中症リスク
LITALICO発達ナビに寄せられた保護者の事例から、見落とされがちな4つの熱中症リスクを紹介している。
1つ目は「喉の渇き」に気づけないケース。内受容感覚の鈍さから「喉が渇いた」と感じにくく、自発的な水分補給ができず、周囲が声をかけないと汗だくのまま過ごしてしまうことがあるという。
2つ目は、水分補給の拒否とこだわり。「水を嫌いジュースやスープしか飲まない」「決まったタイミングでしか飲まない」といったこだわりから、脱水症状や熱中症につながる事例が紹介された。
3つ目は、体調不良のサインを周囲に伝えない、または伝えられないケース。「お腹が痛い」「だるい」などの不調を訴えず、保護者が気づいた時には点滴が必要な状態まで悪化していた例もあったという。
4つ目は、真夏でも長袖やお気に入りの服しか着たがらないケース。感覚過敏やこだわりから季節に合わない服装を続け、体内に熱がこもるリスクがあるとしている。
小児科医・藤井明子先生が熱中症対策を解説
これらのリスクに対し、子どもたちの発達と健康に詳しいどんぐり発達クリニック院長・藤井明子氏より、専門的な見地から対策のアドバイスをいただきました。
身体からのサインへの気づきにくさ、感覚の過敏さ、過集中などの影響を考慮した対策を
発達障害のあるお子さんでは、一般的な熱中症対策だけでは十分でないことがあると感じます。ASDやADHDのお子さんの中には、「暑い」「のどが渇いた」「疲れた」といった身体からのサインに気づきにくい場合があります。また、水筒の水の味や温度にこだわりがあったり、帽子や冷却グッズを嫌がったりする感覚特性から、周囲が勧める対策を受け入れにくいこともあります。
さらに、好きな遊びや活動に集中すると、水分補給や休憩を後回しにしてしまうことも少なくありません。加えて、発達障害のお子さんでは自律神経機能の違いが指摘されており、体温調節や暑さへの適応に影響している可能性も報告されています。
そのため、「のどが渇いたら飲もう」ではなく、大人が時間を決めて水分補給を促したり、休憩のタイミングを具体的に示したりする工夫が大切です。お子さんの特性に合わせて環境を整えながら、周囲の大人が一緒に熱中症対策を考えていけるとよいでしょう。
保護者や周囲の大人ができるサポート・対策
対策において最も重要なのは、本人の自己申告(「大丈夫」「喉は渇いていない」など)だけに頼らず、大人が「仕組み」として先回りすることです。
水分の可視化とリマインダーなど
1時間ごとにタイマーを鳴らす、ボトルに目盛りをつけて視覚的に伝える、学校行っている間に水筒の水を飲み切るなど、ルール化して水分補給を促します。水を嫌がる場合は、かき氷(シロップなし)やゼリーなど、本人が受け入れやすい形態を工夫することが有効です。
服装へのアプローチ
長袖へのこだわりがある場合は無理に半袖にせず、本人が納得する肌触りの「接触冷感素材」や「通気性の高いメッシュ素材」の長袖を一緒に選ぶなど、安心感と涼しさを両立させます。また、クローゼットにあらかじめ「その季節に合った服」だけを入れておき、大人が選択肢を調整する工夫も効果的です。
客観的なサインの観察
自分で体調のことを伝えられないお子さんの場合には、「おでこの汗」「顔の赤み」「排尿の回数や色」など、客観的な指標を用いて周囲の大人が体調チェックをルーティン化します。
暑さに鈍感な特性や体温調節の難しさを周囲が正しく理解し、責めることなく「安全な仕組み」を作ってあげることで、子どもたちの命と健康を守ることに繋がります。
身近な大人の理解と無理のない対策が重要
LITALICO発達ナビは、今後も当事者家族の困りごとに寄り添い、専門家と連携しながら情報発信を続けるとしている。
また、本格的な夏を迎えるにあたり、一般的な対策だけでは見落とされがちな「特性による熱中症リスク」への理解を深め、それぞれの家庭に合った無理のない対策を見つけることが重要だとしている。
