このITインフラニュースのまとめ
- NTT西日本とJR西日本が実証実験中の、“光ファイバセンシング技術を活用した線路モニタリング”の成果が「鉄道技術展」で公開された
- 線路に並行して敷設した通信用光ファイバを“振動センサー”として活用、約30kmもの距離をリアルタイムかつ高精度に監視
- 橋梁など敷設区間や気象条件への対応など課題も。2030年代前半の実用化めざす
鉄道会社にとって安全走行に不可欠なメンテナンスを、確実に効率良く実施することは大きな課題となっている。限られた時間で確実に目標をこなし、人手不足や増え続ける自然災害による被害に対応するため、最新技術を導入する動きが進んでいる。
NTT西日本とJR西日本と共同で検証を進めている、光ファイバセンシング技術を活用した線路のモニタリング技術も、そうした動きのひとつだ。両社は2025年度から実証実験を進めており、インテックス大阪で開催された「第2回 鉄道技術展・大阪2026」(会期:5月27〜29日)のJR西日本ブースにおいて、その成果を公開した。
光ファイバセンシング技術を鉄道分野で生かせるか
この取り組みは、鉄道の線路に並行して敷設されている通信用光ファイバを振動センサーとして活用し、広範囲に常時監視することで効率的な保守・監視体制を実現するというもの。NTTグループが開発した基礎研究をベースにしている。仕組みはシンプルで、既に敷設されている光ファイバに「光センシング測定器」を設置し、そこから入射した光が戻ってくる際の変化を解析し、列車が走行する位置や線路周辺の異物などをリアルタイムに検知するというもの。
きっかけはJR西日本の関係者が、2023年11月に開催された「NTT R&D フォーラム」において、世界初の通信用光ファイバを用いた振動センシング技術による豪雪地帯の道路除雪判断の実証実験を見た際に、通常の線路保守に応用できないかという案を思い付いたことだという。NTT西日本に相談したところ、2024年1月より共同で基礎研究を開始することになり、2024年度から2026年度にかけて、実証実験を継続実施することが決まった。
「鉄道技術展」で見えた、NTT西×JR西の実証実験の成果
今回、鉄道技術展で紹介されていたのは、2023年度にJR西日本東西線の約30kmにわたる路線において、1週間単位で測定を行った結果だ。
列車の停車位置と発車したタイミングなど、光ファイバが振動した箇所や時間が画像で表示され、それぞれの違いを解析することでどのような状況なのかが判別できるようになっている。列車の走行位置については、誤差1秒未満という高精度で検知可能ということも分かった。
驚いたのは、必要とする測定器を光ファイバの片側に1台設置するだけで、約30kmもの距離をリアルタイムに測定できるという点だ。もちろんカーブがある路線でも対応可能。光ファイバは既に敷設されているものを使用するが、JR西日本では多くの路線で線路と並走する位置に設置されたブロックの中に光ファイバを敷設済みで、実証実験の期間中だけ光ファイバの先に装置を設置でき、取り付けも容易だという。
取得データの表示は複数あり、ひとつは列車が走行する軌跡をダイヤのように可視化するというもの。もうひとつは、列車が走行中か駅に停車中かといった状態を、振動の幅や色分けで可視化するというもので、列車以外に人の進入や落石の検知にも応用できる。実証実験ではわざと人が線路を歩いて、その違いを検証した。
'30年代前半に実用化へ。新たな課題も
今回の実証実験はある程度の成果が出せたが、新たな課題も見えてきた。
例えば、橋梁や架空区間では振動条件が変わるため、そうした場所でのノイズを低減するようなアルゴリズムを開発する必要がある。また、路線が長くなると大容量のデータ処理を行うため、システムの高度化も求められる。
いずれにしても追加の検証が必要であり、両者は今後、約6カ月という長期間、JR西日本の和歌山線で現地測定を行うことを計画している。インフラとして設置する場合、長期間安定して運用できるかを確かめる必要があるためだ。さらに、線路は気温や気象などの影響を受けて変化することから、台風や暑さが厳しい時期に振動特性が変化するかといった分析も行う。
他にもいざ実装する場合には、装置がリアルタイムに検知したデータをどのように通知し、対応するかを考えなければならない。少ない人数で適切な対応ができるようUI(ユーザーインタフェース)も含めてシステムを設計する必要があるが、その点については実証実験の成功を受けて、検討を始める用意を進めているという。
この技術は2030年代前半の実用化をめざしており、今後も両社での共同検証を加速させていく予定だ。技術が確立されれば、JR西以外の鉄道会社にも技術を提供し、鉄道の安全を全体で高めていきたいとしている。








