自動運転EVバスの車内で、アバターが乗客を案内してくれる――NTT西日本、NTTビジネスソリューションズ、AVITAは5月25日、自動運転EVバス向けコミュニケーションサービス「バスあば」の開発に向けて業務提携したことを発表した。AIが応対するだけでなく、遠隔地のオペレーターがアバターを通じて接客することも可能だという。実際のデモの様子とともに紹介する。
なぜ今、自動運転EVバスが求められているのか
地方に旅行や出張に行くと、小型の電動バスが街を走る姿を見かけることがある。これは深刻化するドライバー不足への対策として導入が進む自動運転EVバスだ。
自動運転EVバスは全国各地で実証実験が行われており、NTT西日本も西日本エリアを中心に20以上の自治体で社会実装を目指し、2024~2025年度に30件以上の走行実証を実施している。
背景にあるのは地方交通を取り巻く厳しい状況だ。2010年から2021年までに全国で15,332kmの路線バスが廃止されたほか、2030年にはバス運転手が大幅に不足すると予測されている。
こうした課題を受け、政府も「デジタル田園都市国家構想」などを通じて自動運転バスの導入を後押ししており、全国100カ所での本格サービス開始を目標に掲げている。
国内では乗務員乗車型の自動運転走行がメインとなっており、現在完全無人運転では走行していない。
そこで課題となるのが、将来的な完全無人運転に対する利用者の不安だ。NTT西日本グループとAVITAは、アバターを介して乗客とコミュニケーションを取ることで「人に見守られている安心感」を提供する仕組みとして、「バスあば」を開発している。
自動運転EVバスはどのように走るのか
自動運転EVバスの車体は、フランスのNavya Mobility(ナビヤ)社製で、世界で32カ国、400カ所以上で走行実績がある車両だ。NTT西日本は、Navya Mobilityと2025年に資本業務提携を行っておりNTT西日本が約30%、マクニカが約70%出資している。
同提携は、日本市場と規制に合わせたNavyaの自動運転システム研究開発の促進と、NTT西日本の運行設計から運用支援までトータルでサービス展開する能力強化を目的で結ばれている。
車両は自動運転レベル4での無人運転に対応している。事前に作成した3Dマップと各種センサーを活用し、自車の位置を確認しながら走行することで自動運転走行を実現している。
同車両に搭載される「バスあば」には、AVITAのアバター技術が活用されている。アバターは自動運転EVバスの天井に近い部分に設置されたモニターに表示される。乗車した利用者は、モニターに表示されるアバターを通じて必要な情報を得たり、遠隔地のオペレーターと会話したりできる。
AIアバターが案内する「バスあば」
アバターは、AIとオペレーターを切り替えて利用できる。AIの場合は、自動応答で現在7カ国語に対応し、さまざまな質問に答えられるほか、自治体の広報や防災情報の発信、観光案内などにも活用できる。オペレーター対応では自動翻訳により約100言語に対応可能で、個別対応が必要な場合などに切り替えて利用する。
オペレーターは老若男女を問わない。自動で会話をアバターのキャラクターに合った声に変換して自然な会話が可能だ。
デモではアバターとさまざまな話題で会話することができた。最後にネタばらしとしてオペレーターの顔出しが行われ、AVITAの男性社員であることが暴露され見学者を驚かせていた。
NTT西日本とNTTビジネスソリューションズ、AVITAの3社業務提携の狙い
記者会見では、NTT西日本の事業開発部長 兼 フランスのNavya Mobility取締役 宮崎 一氏が登壇し業務提携の背景や自動運転EVの紹介、「バスあば」の説明などを行った。
なぜ自動運転バスにアバターが必要なのか
宮崎氏は今回の提携について、運転手の同乗しない“完全無人運転"に向けて安心してバスを利用できる環境の整備をいかに行うか、という課題が存在したことに言及。
その中で、「自動運転バス × アバター」の組み合わせが検討され、アバターを介した接客サービスを展開するAVITAに協力が打診され提携が進められてきた経緯を説明した。
今回の提携では、NTT西日本が自治体との企画運営の主導と地域特性を踏まえた持続可能な運行モデルの構築、NTTビジネスソリューションズが、自動運転EVバスの導入と運用に関する技術的支援、AVITAがアバターやAIを活用した車内コミュニケーションサービスの提供と実装支援を行う。
AVITAは代表取締役社長CEO 石黒浩氏が「アバターで人類を進化させる」をコンセプトに人口減少問題、労働力不足問題の解消をテーマに2021年に設立したスタートアップ企業だ。同社は、マツコロイドなどのロボット研究を25年以上行ってきた実績とアバターと生成AI関連の技術、その活用のノウハウに強みをもっており、アバターと生成AIを利用した接客サービス「AVACOM」などを提供、銀行やコンビニ、鉄道関連で既に利用されている。
実証実験で確認した地域ニーズ
宮崎氏は、AVITAの石黒氏と1年半ほど前よりと議論を始め、自動運転バスとアバターの組合わせを検討し、山口県周南市をはじめ、いくつかの町でバスを走らせて技術実証し、昨年はジャパンモビリティショーに共同で出展を行ってきたことを明らかにした。バスオペレーションと地域のニーズ、雇用創出など親和性の高さが証明されたことから提携にいたったことを語っている。
予約から乗車まで支える「バスきて」
NTTビジネスソリューションズは、自動運転EVバスの効率的な運行や、サービス品質向上を目的に自動運転バス×予約アプリ「バスきて」の開発も行っている。
アプリはバスの予約のほか、バス運行位置と予約場所のマッチによる個人への乗車予定バスの遅延情報配信などを行える。また、同アプリにより利用者の予約情報の分析から住民の移動パターンを解析し運行に役立てることができる他、オンライン決済機能でバス料金徴収、無人運行時の車いす乗車予約なども可能になるという。
「バスあば」が描く次世代モビリティの未来
宮崎氏は「バスあば」について、バスの案内役だけでなく、人とテクノロジーが共存する新たな移動体験を通して、多様な効果が期待できると述べた。
宮崎氏は、AVITAの接客技術を活用することで、観光案内による地域消費の拡大や集客強化、地域商業施設の広告配信、行政情報の発信高度化などが期待できると説明した。また、アバターオペレーターという新たな雇用創出に加え、広告収益や「推し活」コンテンツなどを通じた収益化も視野に入れているという。
宮崎氏は、最後に同社が自動運転事業の目的の一つである地域創生について「まず移動できる手段があるということが必須条件である」と自身の所感を述べた。交通手段がない街は、学生の定着も観光地へのアクセス、住民生活も困難となる。街というものを継続させていくには、交通手段として次世代モビリティ基盤を普及させる必要があると力説する。
宮崎氏は、自動運転EVバスが普及することで、交通以外の分野でも活用の幅が広がると説明した。将来的に24時間運行が可能になれば、朝晩は通勤・通学、昼間は遠隔医療や薬剤配送、文化体験の提供、深夜は小売や物流など、時間帯に応じた多様な用途が考えられるという。











