鹿児島と沖縄の間に位置するトカラ列島の近海で、2025年6月から活発化した群発地震活動。海洋研究開発機構(JAMSTEC)などでつくる研究チームは、海底通信光ケーブルを用いた地震観測を行い、陸上よりも感度の高い観測結果が出たと4月17日に公表した。島しょ域の海底地震や火山活動を監視することで、地域の安全に役立てられる可能性も示唆している。
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海底通信ケーブルを用いたDAS観測に基づく、トカラ列島域の地震震源分布。◯の大きさでマグニチュードを、色で深さを表しており、使用した海底通信ケーブルは赤線で示している。画像6枚目で示された、きわめて浅い活動の発生域は黄色の◯で示している 出所:JAMSTEC
JAMSTEC 地震火山研究部門の荒木 英一郎上席研究員らと、NTTアクセスサービスシステム研究所による共同研究の成果。詳細は米カリフォルニア州パサデナで開催された、米国地震学会(Seismological Society of America)の「SSA 2026 Annual Meeting」において日本時間4月18日に発表されている。
研究成果のポイント
- トカラ列島で活発化した群発地震活動域に敷設されている、海底光通信ケーブルでDAS観測を実施
- 陸上観測網を使った観測と比べて10倍以上の数の地震を観測
- これまで観測できていなかった、海底下の非常に浅い場所で発生していると考えられる活動の観測に成功
2025年6月から活発化した、トカラ列島域における群発地震活動においては、これまでに震度1以上の地震が2,400回近く発生。7月2日にはモーメントマグニチュード(Mw)5.7の地震が発生し、一時は近隣の島の住民が島外避難を余儀なくされる事態にまで発展した。しかし、この群発地震活動の震源域は海域にあり、観測網が島に限られるため、活動の原因や推移の把握が難しかった。
そこで研究チームは、島間の通信のために敷設されている海底光ファイバケーブルに、分布型光ファイバセンシングを適用。光ファイバの振動を歪分布として観測する、光ファイバセンシング技術のひとつであるDAS(Distributed Acoustic Sensing:分布型音響センシング)観測によって、海底下の活動の詳細な把握を試みた。
具体的には、悪石島と宝島を結ぶ海底通信用光ファイバケーブルに、DASなどの分布型光ファイバセンシング観測装置を接続。2025年9月16日から2026年1月13日にかけて観測を実施した。
その結果、観測開始時にはおおよそ1分に1イベント程度の、非常にひんぱんな地震活動が見られたとしており、観測期間に得られたDASデータから地震の震源を決定したところ、15,000個以上の地震が決定され、その多くは地殻内の浅い地震であることも分かったという。
観測期間中は、諏訪之瀬島・宝島近傍の活動も捉えられているが、多くの地震は悪石島南西側で発生しており、時折活動が活発化しながら継続的に発生していることも判明した。
DASで観測された地震のマグニチュードから、この観測ではマグニチュード0.25以上の地震を網羅的に観測できており、これらの観測された地震のうち、島しょの観測網によって気象庁で決定された地震は434個だったという。JAMSTECでは「海底ケーブルを使ったDAS観測によって非常に感度の高い地震観測が行えた」と説明している。
今回観測された活動の中には、限られた地域、かつ海底下の非常に浅い場所で発生していると考えられる活動も見つかっている。JAMSTECは、これらの活動は他の多数の地震活動とは異なった過程で発生している可能性があると見ていて、海底火山活動や海底下の熱水活動などとの関連について、今後検討することが必要と考えている。
この観測結果について、JAMSTECは「海底通信用光ケーブルを用いたDAS等の分布型光ファイバセンシングは、トカラ列島域をはじめとした島しょ域での海底地震・火山活動のモニタリングに非常に有効」と指摘。
将来、連続的な活動モニタリングを行うことによって、島しょ域各地域の地震活動の詳細な把握ができ、地域の安全のために役立てられるとも考えているとのこと。




