帝国データバンクは2026年5月29日、2026年6月以降における飲食料品の値上げ動向と展望・見通しについて分析を行った「食品主要195社」価格改定動向調査(2026年6月)を発表した。本調査は各社発表に基づき、年内に複数回値上げを行った品目はそれぞれ別品目としてカウント、値上げ率は発表時における最大値を採用し、価格据え置き・内容量減による実質値上げも対象に含めて分析された。
飲食料品値上げは6月に1078品目、年内1万品目突破へ
国内の主要食品メーカーによる2026年6月の価格改定は1078品目にのぼり、1回あたりの平均改定率は月平均14%となった。1カ月の値上げ数が1千品目を超える規模となるのは2026年4月以来2カ月ぶりのことだ。前年同月の1940品目との比較では約半分にとどまるものの、直前の5月が84品目であったため、前月比では13倍と急増している。今回の動き背景には、緊迫する中東情勢を受けてプラスチック容器や包装フィルムの材料であるナフサが高騰し、そのコストを製品価格へと転嫁する動きが出始めたことがある。
この2026年6月の改定をカテゴリー別でみると、最も多かったのが香辛料やふりかけなどを網羅する「調味料」で450品目を占めた。次いで納豆や缶詰、インスタント麺などが該当する「加工食品」が304品目となっている。
また、2026年1月から10月までの実施・予定分を合わせた年内の累計値上げ数は9361品目に達した。このペースが続けば2026年6月中にも、本調査をスタートした2022年から5年連続となる年間1万品目突破が確実視される。前年同時期である2025年5月末時点の1万6224品目と比較すると前年比4割減のペースで推移しているものの、今夏以降の予定数は大きく膨らんでいる状況だ。特に7月は2269品目と4月以来3カ月ぶりに単月で2千品目を超え、2025年12月以来7カ月ぶりに前年実績を上回る見込みだ。さらに8月が849品目、9月が580品目となっており、どちらの月も単月で1千品目を超える可能性があるという。
食品分野別の動向と値上げ要因の変化
2026年通年の判明分を品目ジャンル別に分類すると、冷凍食品やパックご飯、缶詰などの「加工食品」が3029品目で最多となった。これにマヨネーズやドレッシングといった「調味料」が2537品目、ペットボトル商品やビール、焼酎、ワインを含む「酒類・飲料」が1494品目で続いている。また「パン」は978品目となっており、2025年に引き続いて食パンや菓子パンカテゴリーで足並みを揃えた価格改定が行われる。
改定をもたらした背景を分析すると、「原材料高」を理由とするケースが97.7%を占めて依然として最大シェアとなっているものの、2026年3月以降は割合が徐々に低下している。一方で、トレーや容器といったナフサ由来の資材高騰が響き、「包装・資材」が73.7%に上った。5月末時点のデータとしては初めて7割台に乗る高水準だ。これら中東情勢に起因する資材費やコストの増加分を転嫁した「中東情勢」は22.7%を占めている。
このほかの要因では、原油高の影響を受けた「物流費」が74.1%に達し、2026年の中で最も高い数値を記録した。さらに「人件費」は54.7%へ上昇をみせたものの、一方で「エネルギー(ユーティリティコスト)」は53.0%へ低下している。緊迫化する国際情勢に伴う資材費や輸送費の上昇を価格に乗せる動きが強まる一方で、賃上げをはじめとする労働コスト由来の改定圧力は相対的に落ち着いている傾向が窺える。
2026年の見通し:ナフサ供給難による値上げラッシュ再燃
2026年の価格動向を振り返ると、政府による輸入小麦の売り渡し価格引き上げや、1ドル160円に迫る深刻な円安の長期化に加え、2025年からの持ち越しとなる物流費・人件費といった構造的なコスト上昇圧力が根強く存在していた。しかし、長引く家計の負担増によって消費者の購買意欲が減退しており、これ以上の値上げは販売数量の減少に直結するという危機感がメーカー側に広がった。結果として大規模な価格引き上げを見送ったり、価格を変えずに内容量を減らす実質値上げで凌いだりする企業が多く、年内の改定スピードは穏やかに推移すると予想されていた。
ところが、米国とイスラエルによるイランへの攻撃を契機に中東の地政学的リスクが急激に跳ね上がり、ホルムズ海峡の混乱が日本国内のサプライチェーンを直撃した。石油から作られる樹脂素材の供給不足やコスト増が深刻化しており、食品業界でもパッケージ用のインクやフィルム、プラスチックトレーなどの大幅値上げや深刻な品薄状態が発生し、先行きが見えない状態が続いている。そのため、各企業は安定供給を最優先に掲げ、パッケージデザインの変更や一部商品の販売休止、アイテム数の絞り込みといった対策に追われ始めた。同時に、包装資材やエネルギー、配送にかかる費用の上昇分を店頭価格へ反映させる動きも表面化している。実際に、中東情勢の悪化に由来するコスト上昇を理由とした値上げは、年内約9000品目のうち5月末時点で2割を超えており、今後はこの割合がさらに拡大する公算が大きい。
このような緊迫した背景から、飲食料品は今年の夏以降、再び広範囲にわたる値上げラッシュに見舞われると予測される。年間の累計値上げ数は5年連続で1万品目の大台を突破する見込みで、これまでで最も少なかった2024年の1万2520品目を上回る可能性も出てきている状況だ。

