帝国データバンクは4月30日、2026年5月以降における飲食料品の値上げ動向と展望・見通しを発表した。

2026年の値上げ、5981品目

主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした2026年の値上げは、1~9月までの累計で6290品目となった。年間の値上げ品目予定が1万品目を超えていた前年同時期(2025年4月調査時、1万4409品目)に比べ、2026年4月調査時では予定を含め、前年比6割減ペースでの推移となった。

4月調査時における2026年の値上げをみると、1回当たり平均値上げ率は15%と、前年通年(15%)と同程度の水準で推移した。食品分野別では、マヨネーズ類やドレッシング類などの「調味料」(2053品目)が最も多く、冷凍食品やパックごはん、缶詰、即席めんなどの「加工食品」(1993品目)、焼酎・ワインなどの「酒類・飲料」(1074品目)が続いた。「菓子」(593品目)では、前年に引き続きチョコレート菓子のほか、一部米菓製品でも値上げがみられた。5月以降の推移では、6月(906品目)・7月(952品目)ともに単月当たり1千品目を下回っているほか、8月以降でも前年水準を下回った。

  • 月別値上げ品目数の推移(2024年以降)

    月別値上げ品目数の推移(2024年以降)

  • 値上げ要因の推移(品目数ベース)

    値上げ要因の推移(品目数ベース)

値上げ要因では、特に原材料などモノ由来の値上げが多くを占めた。「原材料高」の影響を受けた値上げは99.6%となり、集計を開始した2023年以降で最も高い水準だった。「包装・資材」(69.9%)は前月を上回ったほか、4月調査時の水準としては前年(60.2%)も大幅に上回り、年間では2023年以降で最高ペースでの推移となった。従前から続いた資材高の影響を受けた値上げが中心だったものの、中東情勢の悪化に伴う包装資材費の高騰による値上げが出始めた。

このほか、「物流費」(73.6%)、「エネルギー」(59.5%)、「人件費」(49.4%)でも、前月調査時からは低下した。2026年内における「人件費」由来の値上げは、最も高い割合を占めた2月時点(66.2%)から低下傾向が続き、全体の半数を下回って年内としては最小だった。原材料や資材高によるコスト上昇を価格に転嫁する動きが続く一方、賃上げなど労務費由来の値上げが相対的に弱含みつつある。

2026年5月単月の飲食料品値上げは計70品目にとどまり、値上げ1回あたりの平均値上げ率は月平均13%前後にとどまった。単月の値上げ品目数が100品目を下回るのは、今年1月以来、4カ月ぶり。食品分野別では、チョコレート菓子など「菓子」が最も多い38品目だった。

「ナフサ供給難」 食品で値上げラッシュ再燃の可能性

2026年の値上げは、政府による輸入小麦の売り渡し価格引き上げや、1ドル160円にせまる円安水準の長期化が輸入食料のコスト高を招いたほか、2025年から続く物流・人件費など「粘着的」な値上げ要因がありながらも、当初は緩やかな発生ペースにとどまるとみられていた。ただし、米国とイスラエルによるイランへの攻撃で急激に高まった中東地域の地政学的リスク、ホルムズ海峡の混乱が、飲食料品の値上げ動向にとって避けられないリスクとして表面化しつつある。なかでも、食品包装フィルムをはじめ、石油由来の樹脂素材でコスト上昇圧力が顕著となっており、食品包装・資材分野では強力な値上げ圧力がみられる。

同社が4月上旬に実施したアンケート調査(中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響、アンケート対象:約1700社)で、原油高がどれほど続けば主力事業縮小につながるか聞いたところ、回答のあった食品企業(飲食料品・飼料製造57社)では24.6%の企業で「3カ月未満(が限度)」と回答した。「3カ月以上~6カ月未満」(31.6%)と合わせると、半数超の企業が「持って半年」(10月まで)との認識を示していた。中小食品メーカーでは、「PP(ポリプロピレン)・PE(ポリエチレン)原料の包材メーカーからは猶予期間なしの大幅な値上げの要請が相次いでいる」との声もあり、大手メーカーでも業務用食品で生産停止を余儀なくされるなど生産活動への影響も出始めている。

現状では、食品フィルムやラベルインクなど、素材・中間材での値上げが主となっているものの、飲食料品でも中東情勢の悪化を要因とした値上げが出始めている。ナフサ供給不足や大幅な価格水準の高止まりが続いた場合は、時間差を伴いながら包装資材コストが新たな負担要因として顕在化するため、今後の動向は極めて不透明感が強い。ただ、ホルムズ海峡の事実上の封鎖が早期に解除された場合でも、石化製品における物流混乱は長期にわたって影響を及ぼすとの見立ては多く、食用油をはじめとする世界的な食糧需給のひっ迫や、原油高に連動した原材料や輸送コスト増の影響、今夏以降に上昇が見込まれる電気・ガス(エネルギーコスト)など、各方面で複合的なコスト上昇圧力が予想される。

こうした情勢を背景に、同社は、飲食料品では早ければ今夏中、遅くとも秋ごろにかけて広範囲な値上げラッシュ再燃の可能性が高いとみている。

  • 食品分野別の推移(品目数ベース)

    食品分野別の推移(品目数ベース)

  • (参考)食品企業 原油高による主力事業の縮小時期

    (参考)食品企業 原油高による主力事業の縮小時期