ウソでしょ……と呟いたあと、絶句した。あの「山田うどん」に、行列ができていたのである。

埼玉県民にとって、山田うどんは身近な存在だ。ソウルフードと言ってもいい。だからこそ、信じがたかった。超失礼ながら、「山田うどんは並んで食べるものじゃない」という認識だったからだ。

山田うどんで一体何が起きているのか。その真相を探るべく、比較的空いてそうな店舗で実際に食べてみた!

  • 山田うどんの「超得セット」。うどん、丼、ミニサイズのパンチ(もつ煮)が付いて、通常1380円が1050円と超お得だ

■山田うどんで「超得セット」を食べてみた!

埼玉県所沢市に本社を置く「山田うどん」、正式名称は「ファミリー食堂 山田うどん食堂」。関東一円に展開する巨大チェーンで、1935年創業の製麺所にルーツを持つという。すごく長い歴史を持っているんだな〜。

コンセプトは「うまい!安い!早い!腹いっぱい!」。うどんのみならず、そば、ラーメン、定食、そして名物の「パンチ(もつ煮込み)」など、多種多様なメニューをリーズナブルに提供している。

埼玉に住んでいたときは、トレードマークである“赤ヤジロベー”の看板をそこかしこで見かけたものだ。が、個人的にはほとんど利用したことがない。過去に一回あったかどうか……。「行こうと思えばいつでも行ける」という安心感や、「他にも美味しそうな店はたくさんあるし」という油断があったのだろう。周りから「山田うどん、ウマいよ」という話も聞いたことがなかったし、ぶっちゃけ、行く理由がなかったのである。

だが、あんな行列を見せつけられてしまったら、また話は変わってくる。実はめちゃくちゃ美味しいメニューがあって、知らない間にバズっていたのか。それとも芸能人やYouTuberが取り上げて、一時的にブームになっているのか。その真相、探ろうじゃないの!

この日はゴールデンウィーク真っ只中。土日祝限定の「超得セット」が注文できるらしい(平日は「日替わりセット」があるようだ)。かき揚げ丼がメインの「超得山田セット」と……

カレーがメインの「超得かかしセット」の2パターン。いずれも麺はうどんかそば、それぞれ温&冷を選べるようだ。通常1380円の内容だが、セット価格ということで260円もお得に食べられるとのことである。いいね〜。

ふむ。かき揚げ丼か、カレーか……。これは悩ましい。こういうクラシック系のカレー、好きなんだよな〜。だけど、かき揚げ丼は山田うどんの名物のひとつらしい。不動の人気No.1メニューとも言われているし、「山田うどん=かき揚げ丼」という声も少なくないようだ。よし、今回はかき揚げ丼にしよう。麺はやっぱり「たぬきうどん」かしら。

で、注文して数分……

  • 山田うどんの「超得セット」。うどん、丼、ミニサイズのパンチ(もつ煮)が付いて、通常1380円が1050円と超お得だ

到着〜! はっ、早ェ! 店内は満席に近いのに、わずか数分で提供してくれるのか。しかも、実物は思った以上にボリューミー。うどんと丼、どちらもしっかり1人前ずつだし、山田うどんの看板メニューのひとつだという「パンチ(もつ煮)」のミニサイズまで付いてきている。

まずはたぬきうどんからいただきましょう。ズズズッ……。

  • 【写真】「コシこそ命」なうどん界で逆を行く柔らかめの麺。ツルツルと歯ざわりよく、ややもっちりで、つゆもちゃんとウマい!

……ほう! ウマいぞ! 思っていたより全然ウマい! 昨今のうどん界は「コシこそ命」みたいな風潮があるが、山田のうどんはその逆を行く、やや柔らかい感じの麺。もちろん、伸びているわけでは全然ない。ツルツルと歯ざわりもよく、ややもっちりした感じもあって、全体的に優しい印象。実家で食べるうどんのような安心感に満ちている。

で、つゆもちゃんとウマい! クリアな出汁の風味と醤油のコクとのバランスがよく、ついつい飲みまくってしまう。天かすの油が溶け出し、後半になるにつれて旨味が増していくイメージだ。

「サービスエリアで出てくるうどん」みたいなのを想像していたけど、全然違うわ……反省。さすが90年もの歴史を誇る老舗、麺にもスープにもちゃんと哲学が宿っている。

続いて「かき揚げ丼」も行ってみよう。普通、かき揚げ丼と聞けば、サクサクの天ぷらがご飯に乗っている姿を想像するだろう。が、山田うどんは違う。“卵とじ”仕様になっているのである。これは嬉しい誤算……!

実際に食べてみると……

ちょっ待っ……あれっ? 何これ。めっっっっっっっちゃウマいんだが……? 笑ってしまうくらい、ウマい。 甘めのタレを吸ってクタクタになったかき揚げと卵の一体感が素晴らしいし、何よりこの味付けが絶品! 出汁の風味や甘み、塩っぱさの加減が絶妙で、めちゃくちゃ癖になりそうな味わいだ。

具材も野菜ばかりではなく、イカや干しエビなんかも入っているようだ。贅沢感もあり、ジャンク感もある。さすが人気No.1メニュー、完成度がめちゃくちゃ高い!

もちろん、「ミニパンチ」も忘れてはならない。パンチとは、山田うどんにおける「もつ煮込み」の呼称。昭和の時代に「なにかパンチの効いた名前を」ということで、社内公募で決まったらしい。めっちゃストレート。

ひと口いただいてみると……

うわっ、これもウマい! 濃厚な旨みとコクが凝縮されていて、めちゃくちゃ美味しい! じっくりと煮込まれた柔らかなもつ。そしてメンマやこんにゃくの食感。一般的なもつ煮込みと比べ、具材がやや独特だが、奇を衒わない王道の味噌煮込みになっており、かき揚げ丼に負けじとかなりクオリティが高い。これはご飯が進むわ。うどんにもよく合う!

その後も夢中で箸を動かし続け、気づけばあっという間に完食。気づけば腹がはち切れんばかりにパンパン! コンセプトの「うまい!安い!早い!腹いっぱい!」に偽りなし。

ちなみに後日調査したところによると、どうやら冒頭で紹介した山田うどんの行列店は、すぐ隣にあるアウトレットモールからの流入もあって、あんな異常な列を成していたようだ。きっとモール内のフードコートとかもパンパンだっただろうからね。

ただし、「山田うどんは並んで食べるものじゃない」という認識自体はどうやら誤りだったようだ。過去の自分をどやしつけたい。少なくとも「かき揚げ丼」と「パンチ」は並んでも食べたいレベルである。まさか山田うどんにこんなメニューが隠れていたとは……。

おそらく、ほかにもまだまだ伏兵が潜んでいるに違いない。これからは足繁く通い、もう少し極めてみたい。そう思わせてくれる懐の深さが、山田うどんにはあった。ホント、今までごめんなさい!