日本テレビのドキュメンタリー番組『NNNドキュメント’26』で今年2月に放送された「ヴィタリーの伝言~ウクライナ侵攻4年間の記録~」が、優れた国際報道に贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」2025年度特別賞の受賞を受け、26日(25:25~ ※関東ローカル)に拡大版として再放送される。故郷が戦場となり、家族を連れて逃げた日々、そして自らにも届いた招集令状。戦争の長期化が一人の男性と家族から何を奪ったのかを、生々しい記録で映し出す。

  • 「ヴィタリーの伝言~ウクライナ侵攻4年間の記録~」

    「ヴィタリーの伝言~ウクライナ侵攻4年間の記録~」

同賞の特別賞を受賞したのは、日本テレビ報道局国際部の坂井英人記者。ウクライナの子どもたちを継続的に取材してきたことが評価され、坂井記者が新たに現地取材し、ディレクターを務めた本作が受賞特番として再編集される。今回の放送では、本編に加えて取材の舞台裏なども追加される。

番組は、日本メディアのコーディネーターを務めるヴィタリー・ジガルコとその家族が、ロシアによるウクライナ侵攻の4年間で味わった苦難を追ったドキュメンタリー。2022年2月24日、ロシア軍の侵攻によってヴィタリーのふるさと・マカリウは戦場となり、彼は家族を連れて決死の逃避行を余儀なくされる。その苦悩の日々を、自ら映像で記録していた。

戦争が長期化し、兵力不足が深刻化した侵攻3年目には、ついにヴィタリーのもとにも招集令状が届く。戦場へ赴くのか、それとも免除理由を見いだして家族のもとに残るのか。極限状態の中で突きつけられた問いに葛藤しながら、彼が下す決断が描かれていく。

物語の後半では、ヴィタリーと妻がコサック民謡を奏でる場面も収められる。バイオリンを弾き終えた妻は涙を流しながら、「かつて音楽で自分を表現できていた。でも戦争が始まりそれができなくなった」とカメラに語りかける。4年以上にわたり死と隣り合わせの日々が続く中で、人々が戦争によって何を奪われたのかを突きつける内容となっている。

坂井記者は受賞にあたり、「自分が取材しなければ多くの人が知らないままの、語られるべき物語が現地にきっとある。その思いでウクライナの取材を続けてきました」とコメント。「報道の意義とは、それなしには知られることのなかった誰かの物語、誰かの生きた証し、誰かの悲しみに形を与えられる事だと思います」と思いを明かした。

さらに、「私たちメディアがウクライナのニュースを報じることができなかった日でも、現地では空襲があり、誰かの命が奪われる。そんな日々がずっと続いています」と現地の現実に触れ、「平穏な日常が突然奪われ、戦争の中で生き続けるウクライナの人々の姿を描くことで、日本に住む私たちが現地に思いをはせ、忘れない支えに少しでもなればと願ってやみません」と呼びかけている。

取材後記では、ヴィタリー自身が記録していた映像に、着弾して破裂する砲弾の爆発音や、迫るドローンの不気味な飛来音といった“戦争の音”が刻まれていることにも言及。戦場に行くのか、家族のもとに残るのかという重い選択に苦しむヴィタリーの内面にもカメラを向け、「人々が懸命に生きた証を記録し残すことはメディアの使命でもあります」としている。

【編集部MEMO】
坂井英人記者は、ボーン・上田記念国際記者賞 特別賞を受賞を受け、「報道の意義は、知られることのなかった誰かの生きた証や悲しみに形を与えられる事だと信じ出稿を重ねてきました。所属会社の垣根を越えて後押ししてくださる上司、カメラや編集、記者の仲間達、愛する家族、そしてウクライナの大切な友人や取材を受けてくれた方々。私の仕事は彼らなしに達成し得ず今回の賞は彼らに捧げられるものだと考えています。常に真摯な姿勢を忘れず今後も一層の奮励努力を重ねて参ります」とコメントしている。