そして家族の物語に次ぐ、もう1つの楽しみは食事にまつわる感動的なエピソード。
恭子の工夫で律のニンジン嫌いが克服されたエピソードを皮切りに、小学生のころつらかった出来事から救ってくれたオムライス、「みさき」のハンバーグに秘められた想いなどのエピソードに涙腺を刺激させられた。
その他でも、記念日を祝う料理や元気づけるためのおもてなしなどが要所で描かれ、“おいしい=優しい、温かい、笑顔になれる”という世界観を徹底。開始早々に律と恭子が血のつながらない親子であることを明かしたからこそ、食事を通して描かれる“それでも変わらない愛情”に心を動かされた。
近年のグルメドラマは『孤独のグルメ』(テレビ東京系)のような料理と食事シーンに重きを置いた作品が以前より減り、人間ドラマがベースの作品が増えつつある。ちなみに昨年放送のグルメドラマで最も視聴者の支持を得たのは『しあわせは食べて寝て待て』(NHK総合)で間違いないだろう。
同作は持病で仕事や住まいを失った主人公が薬膳料理との出会いで前に歩き出す姿を描いた物語だが、『明日もきっと、おいしいご飯』も同系の静かな感動があった。余談だが『今夜、秘密のキッチンで』で高杉が演じるKeiは「薬膳にも精通したイタリアンシェフ」という設定であり、目指す方向性の類似を感じさせられる。
11年間の成長を思わせる今春の役柄
最後に話を高杉真宙に移すと、ネタバレを避けるべく詳細は避けるが、律は制作サイドからさまざまなものを背負わされた主人公であり、おのずと演じる側の負担は大きくなる。
しかし、高杉はどんなに忙しくても、つらい事実を知っても、無力さに打ちひしがれても、前に進もうとする律を「高杉真宙そのものではないか?」と思わせるほど自然体の演技でやり切った。
大学の勉強をしながら家族のために料理を作り、アルバイトで家計を助け、発覚した家族の問題に向き合う律は、昼ドラに限らず“2010年代ドラマ屈指の純粋無垢な主人公”と言っていいかもしれない。
その後、高杉は禁断の恋に戸惑う青年、殺人事件の黒幕、残念なエリートサラリーマン、過酷な環境で疲弊する救命医、家事でズボラ女子を支える後輩社員、技術至上主義の天才外科医などの多彩な役柄を演じて評価を高めてきた。
そして今春演じるKeiはまるで成長した律のような役柄であり、だからこそ11年間にわたる高杉真宙という俳優の成長に重ね合わせたくなる。
家族で囲む食卓の幸せに気づかせ、生きづらさを抱える大人と未来ある子どもにエールを贈るような作品だけに、ゴールデンウィークでの一気見に勧めておきたい。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。
