相模鉄道の新型車両13000系が3月30日にデビューする。これに先立ち、3月9日に報道公開と試乗会、記者説明会が行われた。相鉄グループが2014年から取り組む「デザインブランドアッププロジェクト」の第2フェーズとして、当初から掲げている「安全×安心×エレガント」のコンセプトに「未来」を加えた車両となる。

  • <!-- Original start --></picture></span>相模鉄道の新型車両13000系。3月9日の試乗会では、報道関係者らを乗せて横浜駅まで走行した<!-- Original end -->

    相模鉄道の新型車両13000系。3月9日の試乗会では、報道関係者らを乗せて横浜駅まで走行した

記者説明会は横浜市内で行われ、冒頭で相模鉄道代表取締役社長の千原広司氏が登壇。「本日お披露目しました13000系は、2014年に始動しました『相鉄デザインブランドアッププロジェクト』の第2フェーズを担う車両でございます」と挨拶した。続いて運輸車両部車両課長の村松健太郎氏が登壇し、13000系を導入する経緯や車両仕様などの説明を行った。

相鉄線専用の13000系、地下化の課題解決も

13000系は、総合車両製作所「sustina」をベースにしたステンレス車両(前頭部のみ鋼製ブロック製)。外観はレーザー溶接による継ぎ目のない車体に、相鉄オリジナルカラー「YOKOHAMA NAVYBLUE」を施した。JR線に直通する12000系、東急東横線・目黒線に直通する20000系・21000系とは異なり、13000系は相鉄線内のみ運行する。

13000系の位置づけとしては、老朽化してきた8000系・9000系を代替する車両とされる。とくに8000系は、鶴ケ峰駅付近の連続立体交差化に伴う地下鉄仕様に対応していないとのことで、13000系の導入により、その課題を解決する。相鉄線内はすでに地下区間が存在しているものの、国の基準で地下区間と定められる長さのトンネルがあるのは現時点で新横浜~羽沢横浜国大間のみ。将来的には西谷~二俣川間も地下区間に加わることになる。9000系はリニューアル工事の際、全車両に貫通扉を設置したほか、屋根材を地下鉄対応の部材に変更した。

  • 新型車両13000系は8両編成。デビュー後は相鉄線内のみ運行する

前面形状は、水を切り拓いて進む海の生き物をイメージした造形や、切れ長の形状をした前照灯「未来を見つめる目」が特徴的。ボルトやネジを目立たせず、周囲の風景が車体へ写り込む美しさを追求したという。全体的に光沢のある外観だが、相鉄ロゴマーク付近のセンターパネルに、ネイビーのマット色を初めて採用。周囲の光沢が抑えられ、ロゴマークの銀色の輝きが強調されている。一方、12000系、20000系、21000系で採用していたフロントグリルに関して、13000系では下部にほんの少し残る程度となる。

前照灯はクリスタルカットしたアクリルを用い、内部に線路をイメージした錆色のアクセントを配置。目尻に「13000 SERIES MIRAI」と記したコンセプトエンブレムを取り付けた。これにより、ボルトを隠すとともに、デザインとしての工夫も両立させている。記者説明会の会場に開発過程のサンプルも展示された。なお、「MIRAI(未来)」は13000系の愛称ではなく、あくまでデザインコンセプトのひとつだという。

  • <!-- Original start --></picture></span>前照灯の横に「13000 SERIES MIRAI」のコンセプトエンブレムを掲げている(報道公開にて編集部撮影)<!-- Original end -->

    前照灯の横に「13000 SERIES MIRAI」のコンセプトエンブレムを掲げている(報道公開にて編集部撮影)

  • <!-- Original start --></picture></span>「YOKOHAMA NAVYBLUE」のカラーサンプル<!-- Original end -->

    「YOKOHAMA NAVYBLUE」のカラーサンプル

  • <!-- Original start --></picture></span>3Dプリンターで出力された前面サンプルと、マットカラーのセンターパネル<!-- Original end -->

    3Dプリンターで出力された前面サンプルと、マットカラーのセンターパネル

  • <!-- Original start --></picture></span>前照灯のアクリルパーツや錆色のサンプル<!-- Original end -->

    前照灯のアクリルパーツや錆色のサンプル

走行機器は12000系と原則共通とし、設計費とメンテナンス関連費のコストダウンを図った。車内も12000系と共通しており、グレーをベースにした色調で金属・ガラスを多用。シンプルながらも開放感のある内装となっている。楕円形の吊り手や、バリアフリー対応のフリースペースとユニバーサルデザインシート、昼夜で調光可能なLED照明も引き続き採用。昔からの相鉄らしさを象徴する鏡も設置した。

12000系から性能を高めた点として、空気清浄機に「ナノイーX」を採用したことと、車内防犯カメラのフレームレートを向上させたことが挙げられる。ホームドアの仕様に合わせるため、乗降ドアの位置も統一した。これにともない、先頭車両の車体長が12000系より長くなったことで、先頭車両の座席数が1両あたり6席(1編成で12席)増加。将来的にワンマン運転も検討しているとのことで、その準備として運転士の乗降確認用車内ITVモニタ、客室非常はしご、客室・司令間の通話機能も搭載された。既存車両と比較して、1両あたりの走行に必要な電力使用量を最大39%抑制し、年間約33.3トンのCO2排出を削減。これにより環境負荷を低減する。

  • <!-- Original start --></picture></span>新型車両13000系の車内(試乗会にて編集部撮影)<!-- Original end -->

    新型車両13000系の車内(試乗会にて編集部撮影)

13000系は、「これまでの100年を礎に、これからの100年を創る」というキーワードの下、2014年に始動した「デザインブランドアッププロジェクト」の第2フェーズを担う車両であり、プロジェクトのコンセプトに「未来」を追加した。村松課長と、アートディレクター・グッドデザインカンパニー代表の水野学氏がプロジェクトの解説を行った。

「デザインブランドアッププロジェクト」の第1フェーズでは、「安全×安心×エレガント」をコンセプトに設定。水野氏によれば、ここでいう「エレガント」には、生活に近い品の良さと豊かさを表現する意図が込められているという。このコンセプトにもとづき、駅舎にキーマテリアルとして鉄、レンガ、ガラスを取り入れ、車両に「YOKOHAMA NAVYBLUE」の外観とグレートーンの内装を導入。乗務員・駅係員の制服も「安全×安心×エレガント」と横浜らしさを両立させたデザインに変更した。その他、広告・イベントも含めた細部に至るまで、利用者に豊かさを感じられるようなプロジェクトをめざしているという。

  • <!-- Original start --></picture></span>生成AIでデザイン案を生成し、最適なものを選んでは修正する。それを繰り返す<!-- Original end -->

    生成AIでデザイン案を生成し、最適なものを選んでは修正する。それを繰り返す

  • <!-- Original start --></picture></span>完成した13000系のデザイン<!-- Original end -->

    完成した13000系のデザイン

「未来」というコンセプトを13000系でデザインするにあたり、企画段階で水野氏が描いたスケッチと、さまざまな海の生き物の造形をAIでデザイン化。多くの生成結果からコンセプトに合うものを選び、車両製作上の制約を加味して修正を行ったという。生成AIを用いた車両デザインは相鉄で初とのこと。これを繰り返して方向性を絞り、最終形へと至った。製作は相鉄、水野氏、総合車両製作所に、デザイナーの吉田真也氏を迎えたチームで行われた。

13000系は3月30日のデビュー後、しばらく1編成のみの運行となる。今後の導入予定については沿線人口や旧型車両の代替などを踏まえ、検討していくとのこと。現段階でワンマン化も視野に入れているものの、車両・地上の設備を作る段階からとなり、詳細は未定とされた。

13000系は相鉄グループのブランドアップや園芸博輸送にも

13000系以外も含めた相鉄グループの取組みについて、相鉄ホールディングスの林浩之氏(経営戦略室 第三統括担当課長)が説明した。「デザインブランドアッププロジェクト」の第1フェーズでは、相鉄・JR直通線と相鉄・東急直通線の開業、沿線6大開発プロジェクトをはじめとするハード面の整備がおもに進められた。筆者としても、JR線・東急線内で見かけるネイビーブルーの電車は、ひときわ異彩を放っているように思う。

  • <!-- Original start --></picture></span>(写真左から)「そうにゃん」、村松課長、千原社長、水野氏、林課長<!-- Original end -->

    (写真左から)「そうにゃん」、村松課長、千原社長、水野氏、林課長

第2フェーズは「安全×安心×エレガント」に「未来」を加え、第1フェーズで整えたハードを生かし、ソフト面の整備を進めていく。13000系のデビューに加え、駅前および高架下の空間を地域住民との協創の場として展開し、ブランドの新しい象徴として「みんなが主役になる沿線づくり」をめざす。実際に、沿線6大開発プロジェクトのうち、天王町~星川間高架下の「星天qlay」、ゆめが丘駅周辺の「WELL-BEING TOWN ゆめが丘」は、独創性とウェルビーイングへの貢献が評価され、2025年度グッドデザイン賞を受賞した。

相鉄グループは自社線に対する認知度・好意度の調査も実施。2025年度の調査結果では、沿線内外ともに認知度・好意度は上昇(2018年比)していた。地元からの信頼を強く得ている一方、沿線外の利用者に対して認知を広げるという課題がある。これに関して、再開発とサービス改善に加え、地域密着の強みを生かした連携や魅力発信も強化していくとのことだった。

  • <!-- Original start --></picture></span>「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」は次のフェーズへ<!-- Original end -->

    「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」は次のフェーズへ

  • <!-- Original start --></picture></span>首都圏在住者(新宿駅から鉄道で1時間以内の範囲のエリアに住む16歳以上。サンプル数3,500)を対象に行った認知度・好意度調査の結果<!-- Original end -->

    首都圏在住者(新宿駅から鉄道で1時間以内の範囲のエリアに住む16歳以上。サンプル数3,500)を対象に行った認知度・好意度調査の結果

  • <!-- Original start --></picture></span>相鉄グループも国際園芸博覧会に出展し、13000系の実車を展示する<!-- Original end -->

    相鉄グループも国際園芸博覧会に出展し、13000系の実車を展示する

2027年の3月19日から9月26日まで、旧上瀬谷通信施設跡地で国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)が開催される予定。三ツ境駅と瀬谷駅が会場への最寄り駅となるため、相鉄線が園芸博への鉄道アクセスを担い、13000系も多くの来場者を会場へ運ぶと予想される。加えて、会場内の「Kids Village」にて、相鉄グループは「SOTETSU PARK」を出展し、ここに13000系の実車を展示予定。林課長も13000系に対し、「相鉄線沿線から快適に(お客様を)お運びし、沿線と世界をつなぐ未来の玄関口になる役目を期待しています」と述べた。なお、国際園芸博覧会終了後の展示車両については、レガシーとしての活用を検討しているとのこと。

「未来」へ進む人を13000系で応援する新商品

新型車両13000系のデビューに合わせた新商品・サービスも2種類紹介された。ひとつは3月9日から受付開始した「相鉄13000系フォトウェディングプラン」。相鉄の駅係員が発案し、誕生した企画で、結婚する2人の新たな門出に際し、「未来」がコンセプトの13000系を使用したロケーションフォトウェディングで祝福する。かしわ台駅隣接の相模鉄道車両センターで撮影を行い、たとえば13000系を背景にしての撮影や、運転台を含む車内での撮影など、一般利用では撮影できないような特別な写真を残すことができる。

年末年始を除く土日祝日のみ撮影可能で、発売額は49万5,000円。「横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ」で販売し、プランに撮影データ100カット(DVD-Rに収録)やドレス・タキシード、着付けとヘアメイク(新婦のみ)、2人のアテンドも含まれる。写真アルバム、ダイジェスト映像、ウェルカムボードなどのオプション(1万9,800円~)も設定できる。ただし、13000系の運用とメンテナンスの都合により、撮影可能日に制限が設ける可能性もある。

  • <!-- Original start --></picture></span>13000系でフォトウェディングのプランを販売<!-- Original end -->

    13000系でフォトウェディングのプランを販売

  • <!-- Original start --></picture></span>相鉄ランドセル(13000系)も発売する<!-- Original end -->

    相鉄ランドセル(13000系)も発売する

  • <!-- Original start --></picture></span>13000系の前面をデザインした<!-- Original end -->

    13000系の前面をデザインした

もうひとつは小学生用の「相鉄ランドセル(13000系)」。「今年入学する方々に、13000系ランドセルを背負って未来に羽ばたいていただく」(村松課長)というコンセプトの下、横浜高島屋とのコラボで販売する。かぶせ(蓋)の表面に13000系のデザインを落とし込み、裏側に設計図をプリント。ファスナーの引き手は吊り手をイメージしたという。価格は7万9,200円。3月26~30日開催の「2027 タカシマヤランドセルフェスティバル」で登場を予定している。

3月20日の「相鉄13000系おひろめ会」(事前申込制、受付終了済み)を経て、3月30日から営業運転を開始する新型車両13000系。デザインを重視しつつ、既存車両と変わらない快適性や、コストダウン・メンテナンス性にも考慮した車両となっている。外観のインパクトが強い分、鉄道ファンに限らず、沿線でひときわ注目を浴びる存在になるだろう。