今冬ドラマで話題性の高い主演女優と言えば、「『未来のムスコ』(TBS系)の志田未来」と言っていいのではないか。
志田は『14歳の母』(日本テレビ系、2006年)からちょうど20年後となる同作で主人公の母親役を演じて称賛を得ている。さらに続く春ドラマの『エラー』(ABCテレビ・テレビ朝日系)でも畑芽育とダブル主演を務めるなど、32歳にして本当の全盛期が訪れているのかもしれない。
そんな志田の出演作で『14歳の母』と並ぶ「転機になった作品」としてあげたいのが『わたしたちの教科書』(2007年 ※FODで配信中)。当時14歳ながら作品のコンセプトを象徴する難役を好演して早くも名優という印象を得た。
同作は脚本の坂元裕二が向田邦子賞を受賞した知る人ぞ知る名作であるほか、トリビア的なトピックスも多い作品であり、その魅力をドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。
学園ドラマとリーガルドラマの両取り
舞台はどこにでもある普通の中学校。実質的な主人公は、いじめ問題に取り組む弁護士・積木珠子(菅野美穂)と臨時教員として赴任してきた加地耕平(伊藤淳史)の2人で、藍沢明日香(志田未来)の転落事故をきっかけにいじめなどの問題が浮き彫りになっていく。
その後、明日香は死亡し、珠子はある理由から真相究明に挑んでいくのだが、すべてを投げ打ってでも突き進む姿を菅野が熱演。学校側のトップである雨木真澄(風吹ジュン)副校長や教師たちに翻弄されながらも向き合おうとする耕平とともにどんな結末を迎えるのか。いじめ問題を扱った学園ドラマでありながら、ミステリーやサスペンスの要素も濃く、エンタメ性の高い作品となっていた。
明日香の死にはどんな背景があったのか。いじめは本当にあったのか。学校という外部の人間には見えづらい密室で起きた事件だけに、証拠保全、証言者の確保、生徒へのアンケート調査、隠蔽疑惑、さらなるショッキングな事件、覚悟の告発などスリリングなシーンの連続に引きつけられる。
それまで学園ドラマのいじめは“いじめっ子”と“いじめられっ子”という個人間の問題として描かれることが多かったが、当作は「学校全体の問題として描く」というスタンス。さらに職員室内のいじめやメディアによるいじめなど、組織によるいじめの構造が総合的に描かれている。さらに脚本の坂元がミステリーやサスペンスを交え、人間の業をあぶり出すようなセリフを散りばめることで視聴者を魅了した。
もう1つ注目すべきは、坂元の手がけた大胆な2部構成。第1話~第7話の第1部は学校、第8~12話の第2部は法廷と舞台を変えることで、学園ドラマからリーガルドラマに一変させて視聴者を驚かせた。
その終盤における最重要人物は、明日香と親友だった朋美(谷村美月)。2人の知られざる人柄と関係性が明らかになるクライマックスに涙を誘われる。はたして「学校のいじめ問題」というテーマで坂元が描きたかったのは何なのか。令和の今なお同じ問題が発生しているだけに、坂元には「令和版の続編を書いてほしい」と思ってしまう。
