その坂元裕二は2010年代あたりから「最も熱狂的なファンの多い脚本家」と言われているが、振り返ると連ドラデビューは1989年の『同・級・生』(フジ系)。そして91年の『東京ラブストーリー』(フジ系)が大ヒットしたが、どちらも柴門ふみの漫画実写化だった。
その後、92年の『二十歳の約束』、96年の『翼をください』とフジ月9でオリジナルを手がけたあと休養。復帰後も04年の『愛し君へ』『ラストクリスマス』、06年の『西遊記』『トップキャスター』とフジ月9を手がけたものの、10年代のように「坂元の脚本が素晴らしい」などとフィーチャーされることはほとんどなかった。
しかし、07年の『わたしたちの教科書』で向田邦子賞を受賞したあと、08年の『猟奇的な彼女』(TBS系)、10年の『チェイス~国税査察官~』(NHK総合)とフジ以外での作品が増え、社会派の内容が目立ちはじめる。
そして10年の『Mother』(日本テレビ系)、11年の『それでも、生きてゆく』(フジ系)、13年の『Woman』(日テレ系)、18年の『anone』(日テレ系)と社会派作品を連発。これらの作品は『わたしたちの教科書』からはじまった一連の流れと言っていいのではないか。
「脚本家の最高名誉」と言われる向田邦子賞を受賞するまでの坂元は業界内で認められつつも、これといった受賞歴はなく、現在のような熱狂的なファンがいるわけではなかった。その意味で坂元裕二というカリスマ脚本家が誕生したきっかけの作品と言っていいのかもしれない。
最後に主なトリビアをあげると、志田未来が演じる明日香の小学生時代に小野花梨、明日香のクラスメイトで優等生の山西麻衣に伊藤沙莉、国語教師・熊沢茂市(佐藤二朗)の娘・熊沢桜に波瑠がキャスティングされた。いずれも現在は主演級女優だが、ブレイク前のみずみずしい演技を見せている。
また、若くして一線を退いた『仮面ライダーカブト』の水嶋ヒロと『ウルトラマンメビウス』の五十嵐隼士が最初にゴールデン・プライム帯でインパクトを残した作品としての価値も高い。
俳優の中で特筆すべきは佐藤二朗の演技。何度か佐藤に話を聞いた際、「最も思い出深く、手応えがあった作品」としてあげたのが『わたしたちの教科書』だった。特に第9話の演技は脚本家の遊川和彦に取材した際、「ドラマ史に残る名シーン」と語っていただけに一見の価値あり。
作品全体を見ても、菅野美穂、伊藤淳史、風吹ジュンらが本気でぶつかり合う“演技合戦”が見どころのドラマであり、業界内でも「熱い作品」として知られている。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。