縦型動画コンテンツなどを手がけるQREATIONが、快進撃を続けている。ショートコント『本日も絶体絶命。』はSNS総再生数20億回を超え、昨年秋にはグローバル市場を視野に入れたIP開発と事業拡大を目的に10億円の資金調達を実施。上田晋也が監督を務める『うえだしんや界隈』をはじめ、ビッグネームを迎えたコンテンツを次々に発表している。

これまで配信してきたコンテンツが全てヒットと言える再生回数を叩き出し続ける背景には、『有吉の壁』などを手がける日本テレビ出身の演出家・橋本和明氏と、SNS総フォロワー数260万人を超える「伊吹とよへ」として活躍する伊吹氏という各メディアのトップクリエイターを取締役に迎え、そのノウハウを融合させた制作力があるという。

「クリエイターの才能を結集し、新しいメディア産業をつくる」というミッションを掲げる同社のこれまでの軌跡から将来の展望までを、こちらも日テレ出身の代表取締役・米永圭佑と、橋本和明氏に聞いた――。

  • (左から)QREATION取締役の橋本和明氏、代表取締役の米永圭佑氏

    (左から)QREATION取締役の橋本和明氏、代表取締役の米永圭佑氏

「この世代と一緒に作りたい」長年の悲願が実現

2022年11月に設立したQREATIONは当初、ドラマのSNS運用など、Z世代をターゲットとしたマーケティングのトータルプロデュースを主力に展開していたが、「会社を作ったときから、ゼロからコンテンツを作っていきたいという思いがありました」(米永氏)。そうした中で、自社IP第1号作品となったのが、24年7月に配信スタートした縦型ショートコント『本日も絶体絶命。』だ。

ハナコ、吉住、かが屋という一流のコント師らが出演する超ショート尺のコントが平日に毎朝配信されるこのコンテンツは、KDDIと共に開発。通勤・通学の時間に日々のルーティンとして視聴されることを目指した。

この3組を、橋本氏が『有吉の壁』のロケの合間に口説いていくと「“楽しそうですね”とは言ってくれたけど、本質はよく分かってなかったと思います」というが、長年培った信頼関係もあってオファーを快諾。

実は橋本氏自身も「SNSのコンテンツをやるのが初めてだったので、この3組を連れ出して全然再生しないコンテンツを作ってしまったら申し訳ないというプレッシャーがめちゃくちゃありました」と回想するが、配信がスタートすると瞬く間に人気となり、総再生数は20億回超(TikTok・YouTube・Instagram合計 ※26年1月現在、以下同)に。1動画の最高再生数は4,400万回を超え、「ホッとしたという感覚です」と安堵した。

『有吉の壁』もいわばショートコントの連続だが、それよりもテンポが速いのが『本日も絶体絶命。』。「コントって“振り”の文化なんですけど、これに関しては“オチ”から考えています。オチを頭にすることでその先にさらに展開を作らなければならず、その構造を考えることで毎日発見がありますし、脚本もVTRの直しもやるのが日課になっているんです」と、制作側も日々のルーティンになっているそうだ。

テレビでコントができる環境が減り、それぞれの芸人が自身のYouTubeで発信する状況がある中で、「この世代のコント師は本当に面白いから、一緒に作品を作りたいという思いが長年あったんです」と狙いを明かす橋本氏。

「やっぱり1人やコンビだけでやれることには限界もたくさんあると思うんです。いろんなスタッフを集めるのもそうだし、音楽など権利の問題もあるし、面白い小道具を作ろうと思うとかなり工数がかかる。それが、QREATIONという会社と組むことでスムーズになって、より見たことのないものが作れる。テレビだと50~100人規模になりますが、十数人のスタッフで芸人さんたちのやりたいコントが作れる時代に、QREATIONという会社はまさに存在意義があると思っています」(橋本氏)

  • 『本日も絶体絶命。』

    『本日も絶体絶命。』

“共創”でコンテンツを作っていく時代

QREATIONの強みは、そんな橋本氏のテレビで培ったノウハウと、同じく取締役に名を連ねる伊吹氏のSNSにおけるノウハウを融合させたコンテンツが制作できる点だ。

米永氏は「デジタルネイティブな世代が、どういうコンテンツ形態で何を面白がるのか。その変化の真芯を捉えられているのが伊吹です。テレビならきれいに画撮りして演出するけど、SNSではあえて雑に作ることもある。そして、SNSはどこまでいっても“主観のメディア”。同じ客観画でも“誰かのスマホ越しに見た画”のようにすると親近感が出て共感されやすいというのもあって、そうした発想が生きていると思います」と解説する。

橋本氏は、そこにテレビマンの強みを重ねる。

「大きい目的を決めるのが、テレビの得意とするところです。スマホで当たり前にコントが見られる時代ってどうなんだろう、縦で新しいバラエティが見られる時代ってどうなんだろうと大枠を考えて、そこにタレントさんなど才能のある人を巻き込んでいく。こうして、テレビが大局を描いてきた部分と、スマホの前の視聴者心理を読んで若者に届く技術を掛け合わせることができていると思います」(橋本氏)

ここで重要なのは、互いの得意・不得意を理解し、リスペクトし合うこと。

「お互いの力を借りながらコンテンツを作っていく“共創”の時代に入ったと、すごく感じます。音楽ジャンルはずっと前からそれをやってきたけど、映像コンテンツでは遅れていた部分があると思うんです。QREATIONでは伊吹との共創を大事しにしていますし、『THEゴールデンコンビ』(Prime Video)を制作する際には、Amazonのプロデューサーとの共創がヒットの鍵になりました。1人の発想には限界があるので、能力を補いながら作っていくことが、映像コンテンツでいかにやれるかを考えています」(橋本氏)

  • 伊吹氏

    伊吹氏