今作は、古沢氏が原点に立ち返って書いたという触れ込みだが、最初に思ったのが、古沢氏が映画で初めてオリジナル脚本を務めた『キサラギ』に雰囲気が似ていること。『キサラギ』は、自殺したマイナーアイドル・如月ミキの一周忌にファンサイトを通じて集まった5人の男が、ミキの死因について断片的な情報を持ち寄って解き明かそうとする密室推理劇だが、構造がよく似ている。ただし、『ラムネモンキー』では、そのセンスがかなり熟成されている。
スピルバーグ監督の『未知との遭遇』や、沢口靖子主演映画『竹取物語』のオマージュを取り入れているのもそうだが、中学生時代の主人公たちの公民館での映画公開時に姿を見せた不良たちに、主人公たちが“ビー・バップ(・ハイスクール)……”と絶句するシーンをはじめ、「ガンダーラ珈琲」の店名(※夏目雅子、堺正章出演のドラマ『西遊記』でゴダイゴが歌うエンディングテーマ「ガンダーラ」)など、本当に細かい芸が『キサラギ』当時より、ふんだんに入っている。
さらに、あらゆる場所に、散りばめられた謎と伏線。『キサラギ』のような順番に情報が出てきて混乱させていく手法ではなく、「あ、これ回収されそう」「これ、どう回収するんだ?」「真実はどっちだ?」といった伏線たちが、ドラマのストーリーに溶け込んだ状態で、夜空に散らばった星たちのように提示されている。それらがどんなストーリーで線をつなげて星座としての形になっていくのか、非常に気になる。
決定的なのが、古沢氏の本領発揮である言葉選びのセンスだ。今作では、ガンダムネタで話し相手を置き去りにしてしまったり、知らない・興味がないのに熱く長く語ってしまうことを「ガンハラ」=「ガンダム・ハラスメント」と命名。これが視聴者のハートを直撃した。
放送後、SNSではこの言葉がバズっている。「ガンハラwww」「俺もやってるわ」「確かにあれはハラスメント」などなど。このスタートダッシュは強い。SNSで盛り上がれるネタがあるドラマは、リアルタイム視聴&SNSという楽しみ方がもう一般的だからだ。
一方で、伏線の多さ。これは、何度か見返してやっと全体像が見えてくるものである。リアタイと周回、その両方を初回で一気に手に入れた。これは面目躍如どころの話ではなく、初回にしてすでに偉業と言えるかもしれない。
週の真ん中に見たい「ただただ“楽しい”ドラマ」
古沢氏は向田邦子賞を受賞した時、「ジャンルにとらわれないものを書いていきたい」と語っていた。翻って今作は、マチルダの失踪事件もUFOも映画の成功も失敗も、どの記憶が正しいか、そしてそれをサスペンスで見せるのかコメディで見せるのか、80年代サブカルあるあるで見せていくのか、この段階ではまだ判断がつかない。どんな作品になるのかさえ、まったく分からない。
でもそれでいいのだと思う。「ただ、週の真ん中の水曜日、疲れた夜に何かを見て楽しみたい」。そんな層に刺さる、ただただ「楽しい」というジャンル。古沢氏はそもそもこの「楽しい」を作るのがとても上手い。スタッフ陣もおそらくそれを狙っているのだろう。
そして、最後に。襟を正して言うが、このように、古沢良太の魅力について語る筆者自身も、それを押し付ける(?)、「コサハラ」=「古沢良太ハラスメント」な原稿を書いているのかもしれない。それぐらい、初回だけで、さまざまなことを語りたくなるドラマ。第2回がたまらなく待ち遠しい。







