そして、全話を通して注目してもらいたいのが、喫茶店マスター役の小林薫、樹里の父親役である坂東彌十郎などの大御所俳優である。

もしFOD加入で全話見られたり、録画もしている人ならぜひ、見直してほしい。この作品は、緻密なところまでこだわった豪華なセットの前で撮影されている。その背景の美しさの中に、小林や坂東らが紛れているシーンが時折、見られる。もしくは、物語が進行している隅に、彼らが存在していることがある。

この時の彼らを注視してほしい。その場や展開を壊さない程度の存在感を放ちつつ、そこに立ち姿で見せる芝居、視線で語る芝居、気づかないほどの小さな表情芝居で、物語のメイン軸を、豪華セットとともに、どっしりと支えているのが分かる。ベテラン、大御所、演技派ゆえの高度な技であり、空気の作り方ももちろん、さりげない芝居の中に、脚本に描かれていない複雑な背景や人間臭さを、大量の情報とともに送り出している。

主演の菅田将暉にしてもそうだ。『夏の夜の夢』のパック役が作品の良しあしを決定づけるように、久部という人物も、どう演じるかで作品の感じられ方が変わる難役である。本作は、単なる連続ドラマとしての楽しみだけでなく、俳優陣の芝居でも見応えがある。カロリーが高く、「暑苦しい」との評もあるが、ここはあえて、その重厚性を味わってほしい。

『夏の夜の夢』では、パックの誤りからの混乱、その果てに魔法が解かれ、本来の“秩序”が回復した。混乱は“和解の段取り”であり、結果的に「本当の愛」が組み直された。久部は“舞台の魔法”で人を巻き込み秩序回復へ導くパック的媒介であると同時に、理想が支配欲に反転し得るマクベス的危うさもはらんでいる。久部と「八分坂」の人々が、最終的にどんな“目覚め方”で次の幕へ進むのか。その合図を待つ時間さえ、もう物語のうちだ。

  • (C)フジテレビ