JR東海は16日、東海道新幹線で「営業車による検測」を全面的に実現するための新しい技術を開発したと発表した。これまで「ドクターイエロー」が担ってきたすべての検測機能を営業運転中の車両で代替できるようにする。2027年1月からの運用開始を予定している。
東海道新幹線では、軌道や架線などの設備を良好に保つため、「ドクターイエロー」による検測と社員による徒歩巡回を行ってきたが、専用車両の運用コストに加え、人員負担の大きさが課題とされていた。JR東海は安全性と効率化の両立を目的に、営業列車での検測技術を可能とする技術開発に取り組んできたという。今回、新たに軌道・架線の状態を把握し、電線類・電柱に対する支障物の自動検出を可能にする検測技術を開発したことで、「ドクターイエロー」が担ってきた検測機能すべてを営業列車で実施できる体制が整うことになる。
新技術は「軌道検測システム」「架線検測装置」「先頭車画像装置」の3つで構成される。「軌道検測システム」は、これまで「ドクターイエロー」が採用していた2台車方式を改良し、営業車でも搭載可能な1台車方式を新たに開発。角度センサと変位センサを組み合わせることで、レーザー光を使うことなく軌道の形状を正確に測定できるようにした。
「架線検測装置」は、「ドクターイエロー」の測定専用パンタグラフに搭載していた複数のセンサを廃止し、営業列車の集電用パンタグラフ付近に設置した3台のカメラで架線を撮影。画像解析により、トロリ線の異常や架線金具の状態をAIが自動判定する。
「先頭車画像装置」では、運転台に設置したカメラで沿線を撮影し、AIを用いて電線や電柱に対する支障物(樹木の接近や鳥の巣など)を自動で検知する国内初のしくみを導入。従来は社員が徒歩で線路沿いを巡回し、目視確認していた作業の一部を置き換えることが可能となり、保守の省力化と安全性の向上が期待されるとしている。
