草なぎ剛が主演を務めるカンテレ・フジテレビ系ドラマ『終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-』(毎週月曜22:00~ ※FODほかで配信)が、13日にスタートした。
妻の死をきっかけに“遺品整理人”となったシングルファーザーの主人公(草なぎ)が、遺品整理や生前整理を通じて、残された家族へのメッセージをひも解いていくヒューマンドラマ。一見するとわかりやすいキャラクター配置や物語運びでありながら、「主演・草なぎ剛」という存在によって実に奥行きのある、深いドラマへと昇華させていた。
わかりやすいようで、まだ何もわからない作品
最近のドラマは“わかりやすさ”と“わかりにくさ”の両極端だ。不倫や復讐といったテーマが潮流なのは、説明せずともすぐに物語へ没入してもらいたいという狙いや、予告やPRなどでキャッチーな場面を見せたいという意図があり、それが“わかりやすさ”につながっている。
一方で、あまりに単純化してしまうと“ありきたり”の烙印を押されてしまうのも事実であり、「どんな人がいてもいい」という“多様性”を映し出すという意味でも、キャラクターを一面的に描かず、あえて“わかりにくさ”を取り入れた作品も増えている。
それを踏まえての今作だが、わかりやすいようで、まだ何もわからない…そんな作品に仕上がっていた。
舞台となる遺品整理会社の面々は、明るい・暗いなど、輪郭のはっきりとしたキャラクター設定であったし、このドラマの縦軸となる御厨家の人々も、今時珍しいほどのモラハラをふるったり、社内で発生した自殺者を隠ぺいしたりするなど、あからさまな“悪”が配置され、“わかりやすさ”が目立った。
特に“わかりやすさ”が顕著だったのは、主人公と真琴(中村ゆり)の初対面のシーンだ。スローモーションを用いて不意に2人がもつれ倒れ込むというあのシーンは、古典といってもいい“ロマンス”を感じさせる演出。それはつまり、2人が今後、恋仲になることを明確に表現した演出といってよいだろう。
そんな“わかりやすさ”を複雑化させ、物語の深度も高めさせたのは、主人公の鳥飼樹を演じる草なぎ剛という存在だ。
ロマンスを感じさせる演出が不穏に感じる
先の真琴との初対面のシーンにおいて、他の演者があの演出を施されたのなら、明確な記号である“ロマンス”を意味しただろう。しかし、あのシーンにおいて単純な色恋を予感した人は少なかったはずだ。
むしろ、あのシーンのあの演出が、どんな意味を持つのか。ロマンスなのか、奇跡なのか、運命なのか…それはポジティブな印象だけではなく、2人が出会ってしまったことによる“何か”…不穏まで感じさせた。まさしく草なぎ剛のおかげであり、もしかすると制作側が意図した以上の深み、得体のしれない“何か”までも感じさせてしまったのだ。
振り返れば、草なぎ剛主演作の『戦争』シリーズや『任侠ヘルパー』もそうだった。草なぎ剛が演じていなければ、もっと単純なキャラクターショーであり、勧善懲悪のわかりやすいドラマになっていたに違いない。それを、草なぎ剛によってそうではないもっと深い“何か”を加えてくれたのだ。
その“何か”はわからないし、今作の“何か”もまだわからない。そしてそれは最後までわからないかもしれない。だからこそ、今作を含め彼の作品には吸引力があるのだろう。
そして第1話で随所に提示された“わかりやすさ”の数々も、今後主人公の樹と交わることによって、とんでもない“何か”が加わっていくことの伏線であるに違いない。初回はその助走といったところか。この先の物語がより楽しみだ。











