金の価格が史上初めて1グラム2万円を突破しました。2023年8月に1万円を超えてから、約2年で2倍にまで上昇しています。そんなニュースを耳にして、「あのとき投資しておけば……」と思った人は多いのではないでしょうか。とはいえ、「そもそも金への投資ってどうやるの?」と疑問に思う人も少なくないでしょう。そこで今回は、投資初心者でも始めやすい金の投資方法や、知っておきたい注意点をわかりやすく解説します。
金が最高値! その理由は?
金の1グラムの店頭小売価格が史上初めて2万円の大台を超え、現在も更新し続けています。なぜそれほどまでに金の価格が上がっているのか、その背景をみてみましょう。
金は埋蔵量が限られており、希少価値が保たれるため、安全資産とされています。そのため投資家の不安心理が高まると「有事の金」として買われやすくなります。
現在の金価格上昇の背景には、ウクライナや中東情勢の緊迫化などの地政学的リスクの高まりや米国経済の減速に対する警戒などが考えられます。また、米国の利下げによって、高金利だったドルの魅力が薄れたことや円安の影響も、実物資産である金に資金が流れる要因となっています。
このように「世界経済の不安」と「通貨価値の低下」は金の需要を高める大きな要因となります。
金投資の基礎知識
金投資を始める前に、金の値動きの特徴や、注意点を確認しておきましょう。
金の値動きの特徴
先述したように、金は「有事の金」とも呼ばれ、戦争やテロなどで世界情勢が不安定になると買われやすくなります。さらに、物価が上昇して通貨の価値が下がると、金の価格は上がる傾向があります。これは、金が紙幣のように価値が目減りしにくい「実物資産」であるためです。このように、金はインフレに強く、資産を守る手段として注目されています。
- 世界情勢が不安定になると金価格が上昇する。
- インフレが進むと金価格が上昇する。
金投資の注意点
金への投資は、株や預貯金などとは異なり、配当や利息を生みません。そのため、保有しているだけでは1円も利益は得られません。金投資は、売却での値上がり益のみを期待する投資になります。
為替変動リスクも考慮する必要があります。金の取引は米ドルで行われるため、日本円で投資する場合は為替の影響を受けます。円高では国内の金価格は下がり、円安では国内の金価格は上がります。
- 配当金や利息がない。
- 為替変動リスクがある。
金に投資するには?
金に投資する方法は大きく分けて二つあります。金の現物を購入する方法と、金の価格に連動する金融商品を購入する方法です。それぞれの代表的な方法をメリット・デメリットも示しながらご紹介します。
■金地金・金貨
金地金(インゴット、バー)や地金型金貨(コイン)など、実際の金を購入して保有する方法です。田中貴金属や三菱マテリアルなどの店頭で購入できるほか、ネットでも購入できます。
<メリット>
- 現物ならではの安心感がある。
- 金そのものに価値があるので発行体が破綻しても無価値にならない。
<デメリット>
- まとまった資金が必要。地金の中で最も少額の10分の1オンスのコインでも7万円以上する(2025年10月10日時点)
- 盗難のリスクがある。
■純金積立
まとまった資金がなくても、純金積立なら少額から現物の金に投資ができます。毎月一定額を積立購入する方法で、月1,000円程度から始められます。一定の量に達すると地金や金貨にすることもできます。
<メリット>
- 少額から始められる。
- 盗難のリスクがない(販売会社が保管)
<デメリット>
- 毎月の積立額に対して購入手数料や保管料がかかる場合がある。
- 配当金や利息がない。
■金ETF
金ETFとは、金の価格に連動するように運用されるETF(証券取引所に上場している投資信託)のことです。金を保有するわけではなく、金に連動する金融商品を購入する方法です。ETFは株と同じように時価で売買注文ができるため、価格が短期で変動しやすいという特徴があります。手数料は一般的な投資信託よりも安い傾向があります。
<メリット>
- 売買が簡単にできる。
- 保管の手間、盗難の心配がない。
<デメリット>
- 手数料(信託報酬)がかかる。
- 配当金や利息がない。
- 自動積立ができない。
■金関連・投資信託
金鉱企業の株式や金ETFなどに投資する投資信託です。金そのものに投資すると言うよりは、間接的に金に投資するため、価格変動の要因が金価格以外にもあることに留意する必要があります。
<メリット>
- 少額から投資ができる。
- 配当などの収益も期待できる。
- 自動積立ができる。
<デメリット>
- 手数料(信託報酬)がかかる。
- 金価格と連動しないことがある。
初心者におすすめの金投資
金への投資として、いきなりインゴット(ゴールドバー)を購入するのはハードルが高すぎます。初心者は少額から投資ができる「純金積立」や「金ETF」、「金関連・投資信託」が気軽に始められるのでおすすめです。
純金積立なら月1,000円程度で始められ、常に一定金額を定期的に購入する「ドルコスト平均法」によって、平均購入単価を抑えることが期待できます。ある程度積み立てたら、金の現物を手に入れられるのもいいですね。
手軽に金投資をしたいなら、スマートフォンからも売買できる「金ETF」、「金関連・投資信託」がいいでしょう。NISAでも購入できるので、税制メリットも受けられます。
※銘柄によっては、NISAの対象とならないものもあります。
税金についても知っておこう!
金を売却して利益が出た場合、税金がかかることがあります。
金の現物・純金積立のケース
金を売却して得た利益は、「譲渡所得」として課税対象となります。現物の取引で得た利益は総合課税となり、給与所得やその他の所得と合算され、所得税が計算されます。ただし譲渡所得は5年以上の保有で所得金額が1/2になる軽減や、50万円の特別控除もあるので、少額なら税金がかからないこともあります。
金ETF・投資信託のケース
原則は、「株式等の譲渡所得」として、20.315%の税金がかかります。NISA口座を利用すれば非課税にできます。
金に投資する意味は?
金は、株式や債券、預貯金のように配当や利息を生まないため、保有しているだけで資産が増えることはありません。とはいえ、株式のように短期的な値上がり益を狙う投資対象でもなく、むしろ長期的に資産の価値を守る目的で保有されるケースが多いのが特徴です。
長期にわたり一定の価値が担保されている金は、長期的な資産形成を行いたい人や、資産全体のリスクを抑えたい人にとって、いざというときの「守りの資産」となります。
分散投資を意識して、株式や債券、預貯金などの資産の一部に金を組み入れることで、インフレや円安への備えになるだけでなく、金という実物資産の安定した価値を活かして、株式や債券、ドル資産とは異なるリスク分散が可能になります。
長く安心して持てる資産として、金をポートフォリオに組み入れたいものの、現在の金価格をみると、躊躇してしまう気持ちもあるでしょう。少額からの積立で、少しずつ増やしていく方法なら気軽に始められます。金はそのものが魅力的なので気分も上がりますね。

