鉄道総合技術研究所は、JR東日本および伊豆箱根鉄道と共同で、超電導き電システムを実際の営業線に設置し、営業運転を通じて電力供給を行う実証試験を実施したと発表した。1年以上にわたる運用の結果、安定した超電導状態で送電可能であることを確認したという。

  • 超電導による電力供給区間を走行する電車(駿豆線での長期運用)

    超電導による電力供給区間を走行する電車(駿豆線での長期運用)

超電導き電システムは、電気抵抗がほぼゼロとなる超電導ケーブルを活用し、送電ロスをきわめて小さく抑える次世代の鉄道電力供給技術。変電所の集約化や設備管理の効率化などが期待されている。

伊豆箱根鉄道駿豆線において、大仁駅構内に102mの超電導き電システムを設置し、2024年3月から営業列車への送電を継続してきた。これまでに約4万本の営業列車に電力を供給しており、季節を問わず始発から終電まで安定した電流で送電できたことを確認したほか、耐久性についても良好な結果を得たという。

JR東日本においても、中央本線に隣接する鉄道総研日野土木実験所に超電導き電システムを設置。今年3~4月にかけて中央本線下り線に接続し、都市圏鉄道として初という営業列車への大電流供給試験を実施した。その結果、複数列車が同時に加速する条件下で最大4,500アンペアの送電、回生ブレーキ時に最大2,889アンペアの回生電流が確認され、超電導ケーブル両端で電圧差がほとんど生じず安定稼働したことを確認できたという。

  • 1年以上にわたり安定した稼働状況が得られたという

    1年以上にわたり安定した稼働状況が得られたという

  • 超電導による電力供給区間を走行する電車(中央本線での大電流供給)

    超電導による電力供給区間を走行する電車(中央本線での大電流供給)

  • 超電導ケーブルの両端での電圧の差はほぼ生じず、システムが安定に稼働することを確認した

    超電導ケーブルの両端での電圧の差はほぼ生じず、システムが安定に稼働することを確認した

鉄道総研はこれらの実験結果により、超電導き電システムが都市圏の高密度運行路線でも安定した電力供給をできることを実証できたと判断した。一方で、「変電所の集約による設備管理の省力化などを実現するには、さらに長距離での送電が必要になる」とし、ケーブル接続技術や冷却性能、保守管理手法、経済性の向上に向けた研究を継続する方針を示している。