漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さん夫婦をモデルに、柳井のぶ(今田美桜)&嵩(北村匠海)夫婦が『アンパンマン』にたどり着くまでを描く連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の最終回が26日に放送され、半年間にわたる物語が完結した。最後は2人の何気ない日常が描かれたが、最終回に込めた思いや裏話を制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーに聞いた。

  • 連続テレビ小説『あんぱん』最終回の場面写真

    連続テレビ小説『あんぱん』最終回の場面写真

“命についての物語”が凝縮された居間でのシーンは一発撮り

倉崎氏に最終回に込めた思いを聞くと、「これまで“逆転しない正義”を体現したアンパンマンを生み出すまでの物語を描いてきましたが、のぶと嵩の物語でもあり、そこを丁寧に描きたいという思いがあったので、チームとしても特に最終回ののぶと嵩の柳井家の居間での長いシーンに思いを込めました」と語る。

『あんぱん』として最後の撮影となった居間でのシーンでは、のぶの残りの命が長くないと知った嵩が、のぶから「アンパンマンのマーチ」を歌ってほしいと言われ、最終版の歌詞に加え、最初に嵩が書いた歌詞「そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ いのちが終わるとしても」も歌い涙。そしてのぶが「命は受け継がれていく」「うちの残りの命、嵩さんにあげるきね」などと語り、嵩は「わかった」と受け止めた。

約8分半の同シーンは一発撮りだったそうで、撮影したものをほぼそのまま使用したという。

「とにかくあの2人のシーンをそのまま世に出したいと思い、ほぼカットせずに使いました。北村さんが『すべてのシーンの中であのシーンが一番よかったかもしれない』とおっしゃっていましたが、我々もグッとくるものがありましたし、本当に2人らしいシーンになったと思います」

また、このシーンで『あんぱん』は命についての物語でもあるのだと改めて感じたと倉崎氏は語る。

「生きることへの終わりが見えていて、悲しみもありますが、すごく温かいシーンになったなと。与えられた命をどう生きるのかというのが凝縮されていて、やはり『あんぱん』は『なんのために生まれて なにをして生きるのか』というのを軸に、全員が自分の命や人生について考える物語だったんだなと改めて思いました。視聴者の皆さんにもいろんなものを受け取っていただけたらうれしいです」

1年間のぶ&嵩を演じた今田美桜&北村匠海の意見も大切に

ドラマのラストは、2人で一本道を歩きながら、「嵩さんはうちのアンパンマンや」など会話し、手をつなぐというシーン。そこからアンパンマンの形をした雲が浮かぶ空が映され、林田理沙アナウンサーの「アンパンマンは今日もどこかの空を飛んでいます」というナレーションに続き、のぶと嵩の「ほいたらね」という言葉で締めくくられた。

物語の結末について、脚本を手掛けた中園ミホ氏は「100通りぐらいの終わり方を考えていた中で、皆さんの意見も参考にしながら最終回を書きました」と話していたが、倉崎氏も「中園さん、プロデューサー陣、演出陣だけでなく、今田さんと北村さんの意見も聞きながら作り上げていきました。1年間のぶと嵩を演じ続け、現場でシーンを積み重ねてきた2人だからこそわかることもあると思っていたので」と明かす。

いろいろな選択肢があった中で、2人の日常を描くというラストに。

「史実では暢さんは70代半ばで亡くなり、その先、たかしさんは94歳まで生きられたので、そのあたりまで描くという選択肢もありましたが、最終的にはのぶの死は描かず、何気ない2人の日常で終われたらというところに行き着きました」

終わりを描くのではなく、2人の魂がアンパンマンを通じて今も生きていると感じるようなシーンとなったが、倉崎氏は「アンパンマンが今の時代でも子供たちや家族に愛されていて、地続きでつながっていますし、2人の魂というかメッセージが現代にも生き続けているんだなと思います」と説明する。

北村匠海、ラストシーンで涙が出そうに「僕ららしいシーンになったなと」

このラストシーンでは、実際の放送で声は流れていないが、2人は昼御飯についてトークし、コロッケの話などをしていたという。これは北村と今田のアドリブで、2人が築き上げてきたのぶ&嵩夫婦の関係性が「映像にもにじみ出ていたと思います」と倉崎氏は語る。

同シーンについて北村は「非常に僕ららしいシーンになったなと。2人の日常がいつまでも続いてほしいという願いを噛みしめながら一本道を歩いていくというシーンで、その他愛のなさに涙が出そうになりました」と語っていたが、倉崎氏も「本当に2人らしいシーンに。現場でも『今日何食べる?』みたいな食の話をたくさんされていたので、のぶと嵩でもあり、今田美桜と北村匠海でもある関係性が出ていたなと思います」と話した。

ラスト4分弱では、RADWIMPSによる主題歌「賜物」が初お披露目のオーケストラバージョンで流れるというサプライズも。「命を生きよう 君と生きよう」という最後の歌詞が響き、どちらも命について描いた『あんぱん』と「賜物」が見事に重なる最後となった。

倉崎氏は「『賜物』と物語がリンクして、最後の歌詞と『あんぱん』のメッセージ性がものすごくハマったなと。(野田)洋次郎さんは、先を見据え、深いところまで考えて曲に向き合ってくださっていたんだなと改めて思いました」と語った。

(C)NHK